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第18話:夏休みが始まるその前に…

あれから、私は存在魔法の練習を重ねていた。



一度引き離した魂の繋がりも安定し、今は前よりも圧倒的に強い力を使う事が出来る。



それに、自分で魂の結合の微調整もできるようになった。


これは、自分の核を認識したのが大きかったんだと思う。



相変わらず使える魔法は『魔素砲』と『魔素障壁』だけだけど、理論もいくつか組み立てて、そろそろ新しい技を開発しようかと検討中。





そして、今は学校に来ているところ。



明日は終業式で、もうすぐ夏休みに入るから、みんな気分が盛り上がってるみたい。



うちの中学は並よりちょっとレベルの高いところだけど、やっぱり学生は学生で、休みはどこかへ行こうという話がそこらかしこから聞こえてくる。




「じゃぁ、美穂。明日は駅前のコンビニ集合ね!」


「遅れちゃだめだよ~。」



「うん。わかった~。理恵ちゃんや杏ちゃんこそ、遅れないでね!」



「失礼ね。私を誰だと思ってるのよ!楽しい事は人一倍楽しむをモットーにしてる井原理恵とは私の事よ!」


「私も、理恵には負けず劣らずの楽しい事マニアだから、安心して!」



「うん。じゃぁ、また明日!」



「「またね~」」



そう言って出ていく二人を見送って、私は荷物をまとめる。



今日は午前中だけの授業で、午後からはお休み。


だから、お母さんのお墓参りに行くことになってるの。



で、校門の前までお父さんが迎えに来てくれるはずだから、式の前に帰り支度を済ませておこうというわけ。



机の中の物はここ数日で全部持ち帰ったし、かさばる物は残って無いから少ない荷物を纏めて小さなゴミを片づけて完了。


そして、式の用意を持って集会用のホールに行く。



その途中でもやっぱり、楽しそうな声があちこちから聞こえて、こっちも自然に顔がほころんでくる。


やっぱり、みんなが楽しそうにしていると、良い事がありそうでわくわくしちゃうのはしょうがないよね?




それで、廊下を歩いていると、ちょうど後ろから呼び止められた。


その声を聞いて、ちょっと嫌な気分になる…


せっかく楽しい気分になってたのに…




「神埼、今日の式が終わったら職員室に来い。」


「宮沢先生、こんにちは。今日は午後から父とお墓参りに行く予定なので、すいませんが行けません。」


「…俺に逆らうとでも?」


「そんなことは無いです。ただ、先約があるので…」



「…ちっ。」


舌打ちと共に無言で元来た道を戻りだす。


それを見て、内心では少しほっとした。



宮沢先生は、普段はとてもいい先生だと思う。


授業風景を見ても別にこれといった問題は無いし、生徒からの人気もまずまずな先生だ。



でも、事私に関してはなぜか目の敵にされている。



職員室に呼び出されるのは日常茶飯事で、週に2、3回は書類の整理やテストの採点、さまざまな雑用を任され、先生方があらかた帰るまで手伝わされる。


そして、他の先生がいなくなると、優しそうな仮面を外して誹謗中傷、酷い時は軽い暴力まで振るってくる。


今も、周りに生徒がいない状態を狙ったかのように表れて誘い出してきた。



でも、これからしばらくは会わずに済むと思うと、少し心に余裕ができている。




そして、廊下を歩いて会場に向かう。



ほどなくして式も終わり、下校の時間。



心の隅で危惧していた宮沢先生の襲来もなく、私はそくさくと校門に向かった。




「あ、お父さん!」



と、校門を出るとすぐ隣にお父さんの姿があった。


駆け寄って軽く見上げて確認すると、いつもの強面が少し和らいでいるように見える。



その姿はたくましく、私の不安なんか一瞬でかき消してくれる。



「美穂、これから直に向かおうと思うが、忘れ物は無いか?」



「うん。一通り全部持って帰ったし、特に忘れている物は無いよ。」



「応。ならば行こうか。」



そして、車の扉を開けてくれる。


お父さんの車は赤い4人乗りの車で、私は後部座席に乗る事が多い。


お父さんはちょっと体重があれだから、重心を合わせる目的もあるみたい。


まぁ、それくらいで傾くようなやわな車じゃないけど。



私が乗り込むとお父さんは運転席に座り、エンジンを吹かしてゆっくりと進みだす。


この辺で無茶な運転をしないのは、見た目とのギャップがあると思う。



走り出した車から、ふと学校の方に目を向けると、職員室の窓から見つめる目線に気付いた。


慌てて顔を戻すけど、ちょっと驚いてしまったと思う。



曇りガラスであちらからは全く見えないはずだし、こっちからもぼやけて見えるだけだけど、ちょっと宮沢先生の顔がすごい事になっていた気がするのは気のせいだろうか?




「どうした?」



「あ、ううん、何でもないの。ただ、1か月は見納めになるし、学校を見ておきたかっただけ。」



「? 登校日も有るだろうし、1か月全てが休みという訳でも無かろうに。」



「そ れ で も!こういうときは感傷に浸りたい物なのよ。」



「分かった分かった。ならば我も何も言うまい。」



「うん。ありがと。」



そして、車は学校から離れていき、私の心も少し落ち着きを取り戻した。


お父さんにはばれてないといいけど… まぁ、そうそうばれる心配もないよね?




もう一度横目で眺めた学校は、いつもの通り古ぼけた校舎とそこから去りゆく人たちの影が列をなして見えた。

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