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第13話:司書と少女と心の芽

「んたかたー、んたかたー」


僕は歩いています。


ここは図書館の中で、一般書庫なのです。


本の整理をしても荒れ様がひどいので、今日は巡回です。


図書館の職員の一部も駆り出しての厳戒態勢で挑みます。



「あ、おはよう。」


「おはようなのです。」



っと、昨日の女の子にあったのです。


どうやら今日も手伝ってくれるみたいで、昨日より身軽な服装で来ているのです。




「今日はどこの整理するの?」


「今日は整理じゃなくて巡回なのです。」


「巡回?」


「はいなのです。最近本の荒れ様がひどいので、間違って置いてる人に注意するよう呼びかけるです。」


「そう、わかった。じゃぁ、私も一緒に回るね。」


「よろしく頼むのです。午後からはまた整理を再開するので、よろしくなのです。」


「うん。」



ちょうどその時、反対側から男の人が歩いてくるのです。


手には本を持っているから、どうやら本を返すみたいです。


でも、あの本は…



「っと、そこの人、その本は隣の棚の下から2番目なのです。」


「あ、はい!すいません… って、子供?」


「図書館の司書をやっているのです。ブックーなのです。」


「司書って、君が?」


「マスターからの命令なのです。こう見えてもあなたよりは長生きなのです。」


「面白い冗談だね。」


「冗談じゃないのです。もう、良いから本を返しに行くのです。」


「はいはい、教えてくれてありがとね。」


「今度は間違えないように気をつけるのです。」




「わー、ブックー君って本当にこの図書館の事なら全部分かるんだね。」


「当然なのです。それが司書の仕事なのです。」


「じゃぁ、Eの207番個室の場所とか分かる?」


「Eに207番個室はないのです。」


「おぉ、よく分かるね。」


「はいなのです。でも、なんでいきなり個室の番号なんです?」


「ん、なんかね、信じてもらえないかもしれないけど、私一回そこに言った覚えがあるの。」


「行ったって、あそこはそんな簡単に行ける所じゃないのです。」


「ん?あそこって、Eの207番個室?」


「あ…、違うのです。って、えっと、違わなくて…」


「もしかして、ブックー君、Eの207番個室の場所知ってるの?」


「知らないのです!良いから巡回を続けるのです!!」


「あ、待ってよ~。」




と、僕たちは歩きだしたのです。


でも、僕の頭の中はちょっと混乱気味なのです。


言っちゃいけない事を言っちゃったのです。


これじゃぁ、マスターに怒られるのです。



「ブックー君、知ってるなら教えてほしいなぁ。」


「知らないのです。そんなことより巡回なのです。」


「でも、これじゃぁ気になって巡回に集中できないよ。」


「じゃぁ、僕だけで回るのです。来てくれてありがとうなのです。今日は楽しかったのです。それじゃぁ!」


「あ、待ってよ!」



急に走り出した僕を追いかけて、女の子が走ってきます。


本当は図書館の中は静かにしなきゃならないし、走っちゃだめなんですが、今回ばかりはしょうがないのです。


良い言い訳が思いつくまで逃げるのです。



「待ってよ!って、きゃぁ!」


「うをぉ!」



と、女の子が何かにぶつかって転んだようなのです。


これ幸いにと、僕は本棚の陰に隠れるのです。



「いたた… あ、ブックー君?」



と、女の子が周囲を見渡しますが、残念ながら見つけられないのです。


目を離したすきにステルスの魔法をかけて見えなくしたのです。


ただ、怪我をしていないかちょっと心配だったので、影から様子を見るのです。


と、その時、倒れていた男の人が起き上ったのです。


どうやら、あれにぶつかって転んだようなのです。


大人なら後は何とかしてくれるかと思い、立ち去ろうとすると…



「てめぇ、何しやがる!」



そうどなり声が聞こえて振り返れば、女の子が胸倉を掴まれて男の人に持ち上げられているのです。


これは、一種のピンチってやつなのです。



でも、ここで助けに入れば確実にまた見つかるのです。



「ちょ、苦し…」


「ただで済むと思うなよ餓鬼!」



そう言って男の人の手が振り上げられます。


ただ、振り下ろそうとしたときに女の子の方を見ていた顔が怒りから何やら薄気味悪い笑いに変わったのです。



「なぁ、嬢ちゃん、俺にぶつかったのを悪いと思ってるなら、面かせや!」


「え、私ちょっと用事が…」


「あぁ?なめてんのかてめぇ!?」


「きゃぁ!」



と、男が女の子をほおりだしたのです。


これは、ちょっと隠れていられる状況じゃないようなのです。


ということで、僕は物陰から飛び出したのです。



「おじさん、おいたはダメなのです。」



「あぁ? 何だガキか。」


「ガキじゃないのです。司書なのです。この図書館内での暴行はマナー違反なのです。よって、退場してもらうのです。」


「はっはっは。お前に何ができるんだ?それに、最初にぶつかったのはこいつだぞ?」


「事故と暴行は違うのです。」


「ほぉ、大人に歯向かうのか?」


「あなたより僕の方がよっぽど大人なのです。」


「減らず口を!!」



そう言って男の人が殴りかかってくるのです。


後ろで女の子が悲鳴を上げているのです。


全く、この程度で僕がやられるとでも思っているんでしょうか?



「レジスト」



「なっ!」



男のこぶしが僕の手前で何かに当たって受け止められたのです。


これは、僕の魔法で、万能シールド『レジスト』なのです。


この壁の前では打撃も魔法もほとんど無意味なのです。



「レジスト」



ついでに、女の子の方にもレジストを掛けておくのです。


これで、安心なのです。



「くそ、化け物が!!」



「生憎、その程度の暴言で傷つく繊細な心は持ち合わせていないのです。良いからさっさと逃げ帰るのです。」



「ふ、こっちには人質がいるのを忘れたか?」



そう言って、女の子の方にナイフを向けるのです。


でも、そんなことをしても怖くないのです。


もうすでに女の子は守っているのです。




「は!」


「ぐはぁ!」



と、女の子が魔法?を放ったのです。


それによって男は宙を舞い、本棚の角に頭を打って気絶したのです。


あれは、痛そうなのです…



「あれ?なのです?」



そういえば、今魔力を感じなかったのです。


それに、僕が張ったレジストを超えて攻撃したのです。


あれは、内側からでもそうそう抜けられるようなものじゃないのです。



「やった、出来た!」



と、女の子の方は勝手に喜んでいるのです。


でも、不思議です。


今のはまるで存在魔法なのです。


存在魔法は魔素魔法のことで、マスターや神しか使えない魔法のはずなのです。


それを、この女の子は使ったのですか?



「と、そうだ、ブックー君。あの部屋の事教えて!」



「…」



「やっぱり駄目?」



「…」



無意識でしょうが、上目遣いに見られて、僕の心がきゅっとなったのです。


これは、感情のかけらでしょうか?


人形として作られた僕には、いくつか欠けている感情があるのです。


でも、もしかしたらこの子はその感情の一つを思い出させてくれるかもしれないのです。



それに、さっきの魔法の事も気になるのです。


でも、だからと言ってすぐに教えられるようなことではないのです。


あそこは一般書庫じゃなくて、上級種族向けの書庫なのです。


人間をむやみに立ち入らせることはできないのです。



…でも、この子はその存在を知っていたのです。



ということは、もしかしたら何らかの方法で行ったことがあるのかもしれないのです。


なら、マスターに聞いてみるのです。


もしかしたら何か知ってるかもしれないのです。


でも、マスターは今忙しいのです。


だからお邪魔できないのです。


でも、…



「ブックー君、ダメなら良いよ。しつこく聞いた私が悪かったから、図書館のお仕事の手伝いをさせてくれる?」



「違うのです!別にダメじゃないのです。ただ、ちょっと迷っているのです。」



「迷ってる?」



「その前に、一つ聞きたいのです。あなたの使う魔法は存在魔法なのですか?」



「存在魔法?あぁ、今使ったのなら… ちょっとある人に口止めされてるから言えないの。って、これじゃぁ、ブックー君の秘密を聞く資格は無いか…。」



「その口止めされてる人は誰なのです?僕はここの司書なのです。だから、別に、話しても問題ないのです。それに、もしかしたらその人は僕のマスターなのかもしれないのです。」



「ブックー君のマスター?」



「マスターの名前は松崎大吾なのです。この『無限書庫』の管理人をしているのです。」



「え、松崎さんが君のマスターなの!?」



「はいなのです。ということは、Eの207番個室にはマスターに連れられて行ったのですか?」



「うん。正確には、そこで待ち合わせをしたんだけど。」



「なるほどなのです。あそこは上級種族向けの書庫なのです。だから、一般人は入れないし、存在も知らないのです。」



「ということは、私って意外とすごい所に行ってたの?」



「この世界の住人は普通は入れないのです。今入れるのはマスターだけなのです。」



「ほへぇ、驚きだよ。」



「こちらこそ、驚きなのです。まさか、マスターが一般人をそこに入れるなんて、奇跡なのです。」



「てことは、もしかしてブックー君って松崎さんの居場所分かる?」



「マスターに会いたいのですか?なら、連れて行っても良いのです。あ、でも今はダメなのです。昨日からお客さんが来ているので、その人が帰るまで待ってほしいのです。」



「うん。急いでないから良いよ。この魔法の事で色々聞きたかっただけだから。」



「そうなのですか?」



「うん。松崎さんから1回教えてもらったんだけど、後は自分で考えるように言われたの。でも、練習の成果を見てくれる人がいないと、どれくらいできるようになったのか分からないから。」



「それは、存在魔法なのですか?」



「存在魔法?私が使うのは魔素魔法だよ。」



「魔素魔法の事を存在魔法と呼ぶのです。」



「へぇ。じゃぁ、私が使ってたのって存在魔法だったんだ。」



「そうなのです。でも、一回教わっただけで存在魔法を使えるなんてすごいのです。それに、存在魔法を使える人間なんてほとんど存在しないはずなのに、良く使えたのです。」



「なんか、私の魂は魔力をたくさん消費する分、力が強いらしいの。」



「なるほどなのです。普通は人間の大きさの魂で魔素魔法は使えないのです。本来は取り込んだいくつかの魂を操作して使う魔法なのです。それを個人でやれるなんて、すごいのです。」



「そうかな?えへへ。。」



「関心なのです。それなら、僕が魔法の練習に付き合ってあげるのです。幸い、今日のノルマはそこまで多くないので、午後の整理が終われば時間があるのです。」



「ほんと!?ありがとう!!」



と、女の子が僕を抱き上げてくれるのです。


正直、女の子に抱かれるのは初めてだから、少し恥ずかしいのです。


でも、嫌じゃないのです。



「じゃぁ、よろしくお願いします。師匠!」


「任せるのです。立派な魔法使いに仕立て上げてあげるのです!」





それからは、図書館の巡回をしてから本の整理をし、練習場に向かったのです。


でも、あんまし時間はないから、ほどほどにやるのです。



4日分は書き終わりましたぁ。


という事で、4日間は連続更新できるかな?


まぁ、1話だけ短いのがあるけど、各話の区切りごとだからしょうがないよね。。


皆さん、楽しみにしててくださいなぁ~。

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