第六話
「ありがとう」
クララがそう口にした瞬間、彼女は糸が切れたようにその場に倒れ込んだ。
「クララ様!」
ヤーミィが駆け寄り声をかけると、彼女はゆっくりと目を開く。
「おにいさん、だぁれ?」
その声はこれまでとは全く違い、外見通りに幼く、たどたどしい声だった。
「クララ様……?」
「くらら?あたしはアンだよ」
「おいおい、いったいどうなっていやがる」
「もしやこの様子、完全にクララ様としての記憶が消えたのでは……?」
「……かもしれねぇな」
そう結論づけたゲッカとヤーミィはアンと名乗った幼女に語りかけた。
「アン、明日また起きたら話しましょう」
「そうだな。アン、今はしっかり寝とけ」
すると彼女は眉をひそめた。
「呼び捨てしないで。様をつけなさい、様を」
「あぁ、これは失礼しました。アン様」
「様付けを強要するなんて、幼女の割にえらそうだな……」
「そっちの人、なんか言った?」
「えっ、あぁいや、気のせいですよ。アン様」
「それならいいけど。それじゃあ寝室まであたしを抱っこして連れていきなさい」
「はい喜んで!」
アンを抱きかかえたヤーミィが階段を登っていく音を聞きながら、ゲッカは呟いた。
「記憶を完全になくしたとはいえ、クララ様の性格を引き継ぎ過ぎだろあの幼女……」
こうして、幼女と男二人による奇妙な生活が改めて幕を開けたのだった。




