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第8話 小さな奇跡

今回はバトルなしの日常と小さな奇跡回です。

視覚化能力が強まっていくレン。その力が、思わぬ形で一つの命を救うことになります。

ゆったり読み進めていただければ嬉しいです。

昼下がりの街はいつもよりざわついていた。

昨夜の魔獣迎撃戦の影響で、住民たちは興奮ぎみに武勇伝を語り合っている。

その中に、レンとミオの姿があった。

「レン、今日は珍しくのんびりね」

「昨日のあれだけ動けば疲れるだろ。少しくらい休息がないとな」

「言うほど疲れてたように見えなかったけど?」

「俺は繊細なんだよ」

軽口を交わしながら広場を歩いていると、


「う、うわぁああん……!」

道端で泣いている少年が、転んだのか膝から血を流していた。

ミオが駆け寄るより早く、レンはしゃがみこんだ。

「大丈夫か。ちょっと診せてみろ」

「いたい……いたいよ……」

視界に浮かぶのは、膝の裂傷、魔力の乱れ、感染リスクの小さな数値。

レンは簡易魔法を一つ構築し、そっと少年の膝に触れた。

淡い光が傷を覆い、にじんだ血が引いていく。

「わぁ……痛くない……お兄ちゃん、すごい!」

「応急処置だよ。走り回るとまた転ぶから気をつけろ」

少年の顔がぱっと明るくなる。

その後ろから、少年の祖母らしき女性が息を切らして駆けてきた。

「まぁまぁ……! 本当にありがとうございました」

「いえ、たいしたことじゃありませんから」

礼を言う祖母の表情には、別の影が潜んでいた。

その横顔にレンの視界が反応する。

(……魔力値の偏り……? 生体コードに異常……?)

視覚化が示したのは、彼女の体内深くに沈む“病巣のコード”だった。

祖母は少年に気づかれないよう、胸を押さえて微かに痛みに耐えていた。

レンは立ち去ろうとしたが、少年が遠慮がちに衣服をつかむ。

「あの……おばあちゃんね……ずっと身体が悪くて……

 治す魔法も効かなくて……誰も治せないって……」

ミオがレンを見る。

レンは小さく頷き、祖母へと向き直った。

「少しだけ、診てもいいですか?」

少年に手を引かれ、二人は近くの古い木造の家へ向かった。


部屋に入った瞬間、レンの視界に“揺らぎ”が走った。

第1覚醒で得た能力――

世界の構造が“コード”として視える現象。

だが今は暴走せず、落ち着いた光の粒として情報が流れてくる。

(……フィルターが効いてる。慣れてきたな)

ベッドに横たわった祖母の身体に、淡い線が浮かんでいた。

魔力の流れは弱く、臓器のいくつかは黒いノイズを帯びている。

しかし以前のように情報が洪水のように押し寄せることはない。

「レン……また見えてるの?」

ミオが小声で尋ねる。

「大丈夫。必要な部分だけ視えてる。……これは病気というより、魔力の詰まりだな」

祖母の体内で魔力回路が断線し、

生命力の循環が途絶えているようだった。

レンはそっと祖母の手を取り、深呼吸する。

(修復できる……はずだ)

レンの指先から淡い光が流れ、

祖母の魔力回路のノイズをひとつずつ消していく。

まるで壊れたコードを丁寧に修正するように。

ピッ――。

視界の奥で、一本の線が正常な青色に戻った。

続けて、二本、三本――

魔力の流れが再び動き出し、祖母の表情にわずかな赤みが差す。

「……っ、あ……?」

祖母が薄く目を開ける。

少年が叫んだ。

「おばあちゃん!!」

ミオも驚いて口を押さえる。

「レン……本当に、治したの?」

「いや、流れを整えただけさ。本人の回復力が戻っただけだよ」

だがその“整えた”という一言の裏に、

ミオには想像もつかない高度な処理が隠されている。

少年がレンの手を握りしめる。

「ありがとう……ありがとう!」

「礼はいらない。おばあさんを大切にな」

顔を赤らめてそっぽを向いたミオが、小声で言う。

「……優しいところ、あるじゃない」

「やめてくれ。今のはただのメンテナンスだ」

「メンテナンスで人が助かるなら、もっとやってあげたら?」

「いや、こういうのは乱用するものじゃない」

視界の隅で、レンの“フィルター処理”が静かに動作していた。

視える情報は、必要なものだけ――。

彼は少しずつ、覚醒した力を使いこなし始めていた。

今回はバトルなしの小休止回です。

レンの能力が“人を救う”形でも描けて、作者としても満足しています。

次回は影に潜む異形“エラービースト”との戦いへ。

次話更新も平日昼頃を予定しています。

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