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第49話 決戦前夜――それでも、進む者たち

恐怖は消えない。

不安も、迷いも残ったままだ。

それでも――

人は、進むことを選べる。


加速空間・三年目終盤。

外界時間にして、残り一日。

蒼紋のブルーリッジは、

嵐の前の静けさに包まれていた。

空は澄み、

星が異様なほど鮮明に見える。


レンは、丘の頂に立っていた。

一人で。

(……ここまで来たな)


創造主コード。

時間操作。

世界修正。

どれも今や、彼にとっては「使える」力だ。


それでも。

(……万能じゃない)


痛感させられた……

力は、正しく使わなければ――

守りたいものを壊す。


「……兄ちゃん」


背後から、カイの声。

振り返ると、そこにはいつもの少年の姿。

だが、内側に宿るものは明らかに違う。


「身体、もう大丈夫か?」

「ああ。

 ……無理しないって、決めた」


短い言葉。

だが、それが覚悟だとレンは理解した。


「俺さ」

カイは、星空を見上げる。


「完全覚醒って、

 もっと“なった瞬間に全部終わる”もんだと思ってた」


「……違ったな」


「うん。

 でもさ――」


カイは、笑った。

「兄ちゃんが止めてくれたから、

 俺、まだここにいる」


レンは、何も言えなかった。


代わりに、拳を軽くカイの頭に乗せる。

「……当たり前だ」


二人の背後から、足音。

ミオだった。

夜風に揺れる髪。

いつもの強気な表情はなく、少しだけ柔らかい。


「ここにいたのね」

「ああ」


ミオは、レンの隣に立つ。

「……怖い?」


唐突な問い。

レンは、一瞬考えてから答えた。

「怖いよ」


ミオが目を見開く。

「隠さないんだ」

「もう、隠す必要がない」


レンは、静かに言った。

「勝てる算段はある。

 でも――

 誰も失わずに終われる保証は、ない」


ミオは、少しだけ唇を噛みしめてから言った。

「それでも行くんでしょ?」

「ああ」


即答。

ミオは、レンの手を取った。

「……じゃあ、私も最後まで一緒」


その手は、震えていない。

少し離れた場所では――


セルヴァンが、完全体で空を見上げていた。

制限のない姿。

本来の王の威容。

その隣に、ユナが立つ。

「……レン、随分変わったわね」

「うむ」


セルヴァンは、静かに答える。

「だが、根は変わらぬ。

 守るために戦う者だ」


ユナは、微笑んだ。

「それでいいのよ。

 世界を救う人間なんて、

 最初から完璧である必要はない」


蒼紋の丘の中心。

十二神獣たちが、静かに集う。

完成体に至った者。

まだ途中の者。


だが、全員が――

主を信じている。


《子》チトラが、小さく告げた。

「偏りは……整った」

《寅》ラガンが、低く唸る。

「護衛、最優先。

 命、賭ける」

《卯》リリアは、柔らかく光る。

「……必ず、癒す」


その時。

空が、割れた。

黒と紫の境界。

影界王ゼヴァリオンの声が、

世界全体に響く。


『――準備は整った』

『来い、世界修正者』

『この舞台で、終わらせよう』


レンは、ゆっくりと前に出る。

仲間たちを、振り返る。


「……行こう」


誰も、迷わない。

恐怖はある。

不安も、ある。

それでも。

彼らは、進む。

世界の運命を、背負って。


決戦前夜。

誰もが不完全なまま、ここに立っています。

だからこそ――

この戦いには、意味がある。

次はいよいよ最終話。

第50話:世界修正、その先へ


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