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第48話 三年目・最初の破綻

時間は、力を与える。

だが――

同時に、均衡を試す。

成長とは、常に正しい形で訪れるわけではない。


加速空間・内部時間二年目の終盤。

蒼紋の丘の地下に構築されたこの異界は、

すでに「鍛錬場」という言葉では足りない領域に達していた。

空は幾重にも重なり、

地面は神獣の力に耐えるため、常時再構築されている。


その中央。

――カイが立っていた。


否、立っているように見えただけだった。


「……はぁ……はぁ……」


呼吸が、乱れている。

青年の姿。

長身で、竜の刻印が全身に浮かび上がり、

魔力ではなく存在そのものが震えている。

《完全覚醒・定着訓練》

その最終段階で、

“代償”が――牙を剥いた。


「カイ!」


セリスが駆け寄ろうとした瞬間、

空間が、きしんだ。


――時間が、ズレる。


一瞬、カイの姿が三つに重なった。

過去・現在・未来。

未制御の時間干渉。


「……っ、止まれ……!」

レンが即座にコードを展開する。


「《時間補正・局所固定》!」


だが――

効かない。


レンの顔色が変わる。

(……時間が、拒絶してる?)

カイの身体から、竜王の圧が噴き出す。


「兄ちゃん……!」


声は届いている。

だが、身体がついてこない。


「俺……強くなりたいだけなのに……!」


次の瞬間。

――未来のカイが、崩れ落ちた。

老化ではない。

存在消耗。


「カイ!!」


ミオが悲鳴を上げる。


セルヴァンが、即座に結界を張った。


「これ以上は危険だ!

 レン殿、止めよ!」


レンは歯を食いしばる。

「……っ、カイ!」


だが、カイは首を振った。

「違う……

 止めたら……追いつけない……!」


その言葉が、空間を凍らせる。

セリスが、震える声で叫んだ。


「追いつく必要なんてない!

 あなたは、あなたでいい!!」


その瞬間――

竜の刻印が、暴走した。

《警告:器と時間位相の乖離率、臨界突破》

《警告:存在崩壊まで、残り――》


「黙れ!!」


レンが、創造主コードを強制上書きする。

「《存在定義・再固定》

 《対象:カイ》

 《優先順位:人間形態》!!」


世界が、軋みながら従った。

カイの身体から、光が剥がれ落ちる。

青年の姿が崩れ、

――元の少年の姿へと戻る。

倒れ込むカイを、


セリスが抱きとめた。

「……ばか……」


彼女の声は、震えていた。

「……いなくなるところだった……」


カイは、かすかに笑った。

「……ごめん」


沈黙。

加速空間そのものが、

「失敗」を理解したかのように静まる。


ミオが、レンを見る。

「……これが、代償……?」


レンは、拳を握り締めた。

「……違う」


彼は、静かに言った。

「これは――

 無理な近道を選んだ結果だ」


セルヴァンが、低く頷く。

「力は、焦れば刃となる」


レンは、カイの眠る姿を見る。

「……三年あれば、全部できると思ってた」


その声に、初めて迷いが滲む。

「でも……

 やり方を間違えたら、意味がない」


セリスが、レンを見る。

「……次は、失敗しない?」


レンは、深く息を吸った。

「次は――

 一人でやらせない」


その言葉に、皆が頷いた。

加速空間の奥で、

“何か”が静かに軋む。

影界王ゼヴァリオンは、まだ来ない。

だが――

世界はすでに、代償を支払い始めていた。


最初の破綻。

それは敗北ではなく、学習。

ここから先の三年は、

「無双」ではなく「選択」の物語になります。


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