第42話 十二神獣、完成体への分岐
力は、与えられるものではない。
条件を満たし、選ばれ、そして受け止めた者だけが辿り着く場所がある。
それは祝福であり、同時に――
重荷でもあった。
加速空間・第七区画。
ここは、レンが“神獣専用”として設計した特別領域だった。
地面には無数の幾何学紋様。
空にはコードと魔法陣が重なり合い、
世界そのものが“判定装置”として機能している。
レンは中央に立ち、静かに宣言した。
「――これからやるのは進化じゃない」
十二の小さな存在たちが、彼を見上げる。
「分岐だ」
《子》チトラの尾が、わずかに揺れた。
チトラ
「完成体……いける?」
レン
「全員に“可能性”はある。
でも、条件は同じじゃない」
指を弾く。
空間に、十二の光の柱が立ち上がった。
■完成体とは何か
レン
「完成体ってのは、単なる最終進化じゃない。
世界法則に直接干渉できる権限個体だ」
《申》コングルが、目を輝かせる。
コングル
「つまり……
“神”に近い演算権限?」
レン
「近い、じゃない。
神獣としての正式実装だ」
セルヴァンが腕を組む。
「軽く言うがの……
それは、神代ですら制限されておった存在じゃぞ」
レンは頷いた。
「だからこそ、条件がある」
■三つの分岐条件
空間に、三つの項目が浮かぶ。
【条件一:核の自我完成】
レン
「自分の役割を“命令”じゃなく“選択”として理解していること」
《寅》ラガンが、即座に前に出た。
ラガン
「俺はレンを守る。
それ以上も以下もない」
レン
「――合格」
一方、《戌》バルゴは尻尾を振りつつ首を傾げる。
バルゴ
「守る!
……けど、理由はうまく言えない!」
レン
「不合格じゃない。
保留だ」
【条件二:力の反動耐性】
レン
「完成体は、世界に影響を与える。
その反動を“自分で処理できない”個体は――」
セルヴァン
「暴走する」
《卯》リリアが、小さく耳を伏せた。
リリア
「……まだ、怖い」
ミオがしゃがみ込み、微笑む。
「それでいいよ。
癒しは、急がなくていい」
リリアは、少しだけ安心したように頷いた。
【条件三:契約者との共鳴率】
レン
「俺との“同期率”が一定以上じゃないと、
完成体には移行できない」
《巳》ミィナが、レンの肩でぎゅっと巻き付く。
ミィナ
「……ずっと一緒」
レン
「そういうのは、強い」
《酉》シェルファが空を舞う。
シェルファ
「私は“全体”を見る。
個じゃなく、群として」
レン
「――それも、一つの答えだ」
■完成体候補の提示
光が再構成される。
候補として浮かび上がったのは――
・《寅》ラガン
・《辰》リュニス
・《申》コングル
・《巳》ミィナ
セルヴァンが、目を細める。
「……順当じゃな」
だが、レンは首を振った。
「違う。
今はまだ“候補”止まりだ」
十二神獣たちが、一斉にレンを見る。
レン
「完成体は、
“一番強い個体”じゃない」
一歩前に出る。
「一番、世界を背負える存在だ」
《午》ガイオスの蹄から、風が生まれた。
《亥》ドルンが、地面を鳴らす。
《未》フェリオンの結界が、全体を包む。
全員が、確かに前に進んでいる。
レン
「この三年で、
条件を満たした者から順に実装する」
小さく、だがはっきりと告げた。
「――誰一人、置いていかない」
完成体とは、力の証明ではない。
それは、覚悟の到達点だ。
十二神獣たちは今、
進化ではなく「選択」を迫られている。
平日昼の更新です。次回もお楽しみに!




