第4話 森の遺跡と、封印されたコード
お読みいただきありがとうございます、霧島ロジカです!
今回は、レンが初めて本気でコード魔法を使う回であり、ミオと本格的に関わり合うスタートでもあります。
町で発生した魔力の乱流から、まさかの古代ゴーレムが起動するハプニング。
さらに、ミオがちょっと危ない場面に巻き込まれてしまい。
レンの即興コード魔法が暴走し、ミオが心配するどころか怒ってくるのも、二人らしさということで楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、本編をどうぞ!
森の奥は、昼でも薄暗かった。
霧が漂い、木々の間から時おり淡い光が漏れる。
レンは枝を払いながら、隣を歩くミオに目を向ける。
「本当にこの先にあるのか? 例の遺跡とやらが」
「あるわよ。祖母が残した記録にも残ってたもの。あんた、疑ってるでしょ?」
「いや。信じてるさ。信じてるけど、虫が多いなって思って」
「虫くらいで文句言わないの!」
ミオ・ルシェナール。
この世界でも珍しい純血のエルフで、魔導技師、要するに修理屋だ。
ツンとした態度に似合わず、手先は器用で、好奇心も旺盛。
ただ、ちょっと気難しい。たぶんレンが彼女を茶化すせいもある。
二人の目的は、《エーテル・コンダクタ》から検出された座標
古代エルフ文明の研究拠点、「シルヴァーダ遺跡」に辿り着くことだった。
遺跡の入り口は、岩山の裂け目の奥にあった。
石造りの扉には複雑なルーンが刻まれている。
「防衛魔法式ね。千年も経ってるのに、まだ残ってるなんて」
「ルーンパターンが生きてる。魔力の流れがまだ動的だ」
レンは壁に手を当て、光る文字列を読み取るように指先を動かした。
ルーン文字の並びが、彼にはコードのように見えていた。
「ここ、条件分岐があるな。侵入者判定がif構文だ」
「何その変な言葉。魔導式にそんなの」
「いや、ほら」
レンは空中に指で走り書きをするようにルーンをなぞる。
if (target == friendly) { access = grant; }
else { access = deny; }
彼の意図を汲むように、魔法陣が淡く光った。
数秒の沈黙ののち、扉が低く唸って開く。
ミオが口をぱくぱくさせて言った。
「本当に開いた。なにそれ、どんな魔法?」
「ただのロジック修正。システムにif文を加えただけだ」
「システムって何よ!」
「魔法を制御してる根っこのこと」
「はぁ。。もう、理解できない」
「でも便利だろ?」
「むーっ」
顔を赤らめながら、ミオは先に歩いていった。
遺跡の内部はひんやりとしていた。
壁一面に古代ルーンが浮かび、中央には巨大な魔導機
球体のエーテル・コアが鎮座している。
「これが封印の核?」
「いや、稼働中の制御装置だな。動力はまだ生きてる」
レンが近づくと、コアの表面に光の波が走る。
まるで誰かの接触を検知したかのように。
次の瞬間、床が震えた。
壁の奥から金属音。鈍い響きとともに、石像のような巨体が立ち上がる。
ミオが目を見開く。
「まさか守護ゴーレム!? 千年も眠ってたのに動くなんて!」
5メートルを超える巨体。
光るルーンが全身を走り、手には巨大な槌。
「レン! 下がって!」
「いや、ちょっと待て」
レンは落ち着き払って手を上げた。
視界に浮かぶルーン群を目で追い、つぶやく。
「これは攻撃命令ループだな。停止フラグが消えてる」
「なにぶつぶつ言って。。危ないっ!」
ゴーレムが腕を振り上げた瞬間、レンは杖を突き出した。
「コード修正。強制ブレーク」
空中に魔法陣が展開され、淡い光のラインがゴーレムのルーンを走る。
for (action in attack) {
if (target == friendly) break;
}
轟音とともに、ゴーレムの動きが止まる。
硬い脚が一歩、また一歩、後退し、やがて完全に静止した。
ミオが呆然と立ち尽くす。
「い、今のどうやったの?」
「ループ制御。暴走してた命令を中断させただけ」
「命令って。。魔法を命令って言わないでよ!」
「いや、命令文でしょ? 命令式魔法って書いてあるし」
「理屈っぽいわね、ほんと」
レンは肩をすくめ、ゴーレムのコアを調べる。
そこには微弱な魔力の波。そして何かの記録データが残されていた。
《エミグレ文書 第零章:カーネルの設計者たちへ》
光の文字が浮かび、レンの目に情報が流れ込む。
「やっぱりここにも、プログラムの痕跡がある」
「ぷろぐらむ?」
「この世界の基盤を作った仕組み。世界そのものの設計図かもしれない」
ミオは息をのむ。
「まさか、そんなもの、誰が作ったの?」
「さぁな。でも、この遺跡は再起動システムの一部だ。
つまり、世界を一度リセットした形跡がある」
ゴーレムが沈黙したまま、コアの中心に淡い光が残る。
それはまるで、まだ命令待ちのように静かに明滅していた。
レンは振り返り、ミオに笑いかけた。
「ま、今日はここまでにしよう。さすがにデバッグ疲れた」
「あんた、デバッグって言うのやめなさいよ」
「じゃあ、バグ取りで」
「もっとやめて!!」
レンはくすりと笑い、杖を肩に担いだ。
ミオは呆れたように息をつくが、その横顔はどこか嬉しそうだった。
遺跡を出ると、森の風が心地よかった。
空気が澄んでいて、どこか懐かしい匂いがする。
ミオがぽつりと呟く。
「ねぇあんた、本当に何者なの?」
「ただのプログラマーさ。ちょっと世界の構造をいじれるだけの」
「ふーん。。変なの」
そう言ってミオはそっと笑う。
レンはその笑顔を見て、心の奥で小さく呟いた。
この世界は、再起動されている。
なら、俺がそのリブートを完了させる番だ。
今回もお読みいただきありがとうございました!
第4話では、
・レンの設計思想ガン無視の即興コード魔法の危険さ
・それでも修正してしまうプログラマーの本能
・ミオのツンデレ全開リアクション
・二人の距離がわずかに近づく瞬間
を意識して描いてみました。
次回は、今回の騒動の余波やミオとの距離感の変化も描いていきます。
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