表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/50

第35話 静寂を選ぶ者たち

新年あけましておめでとうございます。

まだまだ、レン達の戦いは続きます!


影界王ゼヴァリオンは退いた。

それは敗走ではなく、次なる舞台を整えるための静かな宣言。

人の姿で覚醒した竜王と、

自己負荷すら無効化する創造主。

世界は今、嵐の前の深い呼吸を選ぶ。

蒼紋の丘――ブルーリッジへ。

平日昼の更新です。今年もよろしくお願いいたします。

影界の裂け目が、音もなく閉じていく。

空間に残っていた黒い歪みは、霧が晴れるように消えていった。


最後に響いたのは、影界王ゼヴァリオンの低い声。

『……興が削がれたな』

空気がわずかに軋む。

その声には怒りも焦りもない。ただ、冷めた確信だけがあった。

『竜王の器も、創造主も……

 この場で潰すには惜しい』


セルヴァンが肩をすくめる。

「ほう。逃げるか、弟よ」

『違う』


裂け目が完全に閉じる寸前、声が重く落ちる。

『“ふさわしい場所”を用意するだけだ。

 世界が耐えられる舞台でなければ……

 互いに消えかねんからな』

そして、影は消えた。


戦場に残されたのは、深い静寂だけだった。


ミオが、張り詰めていた息をようやく吐き出す。

「……終わった、って言っていいのよね?」


レンは首を横に振る。

「いや。一区切りだ。

 向こうは本気の“決戦場”を作るつもりだ」


カイはすでに変身を解き、いつもの姿に戻っていた。

だが、その内側にある蒼核は、以前とはまるで違う。

荒れ狂う炎ではなく、静かに燃える恒星のような重み。


セリスがそっと近づき、カイの腕を取る。

「……無理、してない?」

「大丈夫だよ、姉ちゃん」


カイは少し照れたように笑った。

「制御できてる。

 前みたいに、力に振り回されてない」


その言葉に、セリスはようやく安堵の息を吐く。


セルヴァンが全員を見渡した。

「今日はここまでじゃな。

 これ以上続ければ、勝っても“壊れる”」


レンも同意するように頷く。

「俺も……少しやりすぎた。

 コード処理で負荷は無効化できるけど、

 精神の消耗までは消せない」


《卯》リリアが、ぴょんと跳ねてレンの足元に来る。

「レン……やすもう……」


《未》フェリオンがもこもこと近づき、

全体に柔らかな防護と鎮静の波を広げた。

十二神獣たちが、もう“兵器”ではなく

確かな仲間としてそこにいることを、誰もが感じていた。


転移を経て、蒼紋の丘――ブルーリッジが姿を現す。

青白い魔力紋が大地を走り、

神獣たちが自然と落ち着く場所。


「……帰ってきたって感じがするわね」

ミオの言葉に、誰も異を唱えなかった。


ギルダが腕を組みながら出迎える。

「顔が死人だぞ。

 まずは風呂だ、風呂。文句は聞かん」

その言葉に、張り詰めていた空気が少しだけ緩む。


夜。

蒼紋の丘の高台。

レンは一人、空を見上げていた。


――ふと、重なる声。

『レン……

 “選ばれた者”は、休めるうちに休みなさい』

「……分かってるよ、姉さん」


呟いた瞬間、隣に気配が来る。

「兄ちゃん」


カイだった。

「次……勝てる?」


レンはすぐには答えなかった。

「……勝つよ。

 でもそれは、“生き残る”って意味だ」


カイは小さく頷き、丘を見下ろす。

二人の前には、守るべき場所があった。




遠く、影界の深層。

ゼヴァリオンは静かに“玉座”を構築し始めている。

法則も、時間も歪む場所で。


「次は……逃げ場のない場所で会おう」


その声は、まだ届かない。


第35話は、戦いの熱を一度冷まし、

次なる決戦の“格”を上げるための静かな回でした。

ゼヴァリオンは敗れたのではなく、舞台を選んだ。

レンとカイは、覚醒後の安定段階へ。

そして蒼紋の丘は、名実ともに“帰る場所”となりました。

嵐の前の静寂は、最も深く、最も不穏。

次回から、物語は少しずつ動き出します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ