第28話 神魔の深淵
前回、レンたちは影の脅威に備えて拠点を守り、
セルヴァンは単身“亜空間”へと向かった。
そこでは──
影界王のもとで育てられた影滅十二将の一角、
《影滅の将》が待ち受けている。
その強大な影の将は、
セルヴァンの首を取るためだけに存在を磨いた存在。
だが、セルヴァンの“本質”を知る者は、ほとんどいない。
今、神魔の深淵が開く。
◆◆ 亜空間・深層域 ◆◆
薄闇の中で空間がゆっくりと渦巻く。
そこに立つのは、老人姿のセルヴァン。
しかし、その瞳は底なしの蒼で、
周囲の闇そのものが彼を中心に揺らいでいる。
セルヴァン
「さて……そろそろ来るころじゃな」
軽く指を鳴らした瞬間、
周囲の闇が一瞬だけ震えた。
裂け目が走る。
黒々とした空間が“口”を開け、
3メートル級の漆黒の鎧がゆっくりと出現する。
かつん──。
兜の奥の紅い光が、セルヴァンを見据えた。
──影滅十二将
《影滅の将・ヴァル=ダーガ》。
影滅十二将の中でも最古参であり、
最も純粋に“滅び”を体現した存在。
ヴァル=ダーガ
「……待たせたな、影界王の兄よ」
セルヴァン
「ほぅ、弟者の飼い影か。久しいのお」
ヴァル=ダーガは低く、空間を震わせる声で言う。
ヴァル=ダーガ
「貴様の首は……我らが王が最も求める戦果。
兄を越えられぬという屈辱を晴らすために──」
セルヴァンの笑みが止まった。
セルヴァン
「弟者の……あの歪んだ執念はまだ続いておるか。
影を集め、影を歪め、影を捻じ曲げて……
弟よ、それは影本来の姿ではないぞ」
その瞬間、ヴァル=ダーガの殺意が暴発した。
ヴァル=ダーガ
「黙れ!!
おまえが“影界王の座”を捨てたからだ!
あの御方は……貴様を超えるためだけに鍛え上げた私を……
ここへ送り込んだッ!!」
黒いオーラが爆発し、
空間そのものが震え、ひび割れていく。
◆◆ 圧倒的開戦 ◆◆
ヴァル=ダーガの巨剣が闇を裂き、
十重二十重の影術がセルヴァンへ襲いかかる。
・空間切断
・影魂削り
・闇王撃破陣
・時差断層斬
・滅影領域拡張
一撃ごとに“世界の法則”がひしゃげ、
亜空間は悲鳴を上げて揺らぎ続ける。
だが──。
セルヴァンの姿は、
一歩も動かず
一傷すら負っていない。
ヴァル=ダーガ
「な……ぜだ……
なぜ、傷がつかぬ!!
この技は影界王直伝……!
世界すら砕く滅影術……!!」
セルヴァンは肩についた埃を指で払っただけ。
セルヴァン
「そなた……弟者のためによう精進した。
じゃが──」
一歩、前に出る。
その瞬間、空間が悲鳴をあげて沈み込む。
セルヴァン
「そなたは“兄の影”の深さを知らぬ」
ヴァル=ダーガ
「……っ!!」
◆◆ 本来の姿──“深淵の片鱗” ◆◆
セルヴァンの周囲の影が逆流し、
老人の姿がゆらりと揺らめく。
蒼黒い長髪。
闇を照らす蒼金の瞳。
世界の理をねじ曲げるほどの魔圧。
青年の姿へ変わる。
(まだ完全体ではない。10%にも満たない)
ヴァル=ダーガは膝をつき、
兜の中で震える。
ヴァル=ダーガ
「か、かみ……
魔……
いや……そのどちらでもない……
これは……“深淵”……!」
セルヴァン
「わしはただ、影を知り、影を司る者よ。
弟者は影を“武器”とした。
だが、影とはもっと優しく……もっと深いものじゃ」
人差し指を軽く弾く。
ぱん──。
小さな音。
だが次の瞬間、
ヴァル=ダーガの身体から“音”が消えた。
影から影が剥がれ、
魂が凍りつき、
存在そのものが“無”へと吸われる。
ヴァル=ダーガ
「や……め……!
影界王……万歳……ッ──」
霧のように消える。
影滅十二将の一角が、
音もなく、跡形もなく消滅した。
セルヴァン
「弟者よ……
こんな歪んだ影を鍛えてどうする。
影とは、本来こうではないというに……」
◆◆ 静寂 ◆◆
セルヴァンは一瞬だけ、
遠い過去を思い出すように目を閉じた。
セルヴァン
「さて──
レンたちのレベリングの前座は整ったかの」
その青年の姿はふっとかき消え、
老人へ戻る。
セルヴァン
「では、戻るとしよう。
弟者よ、次は……
わし自ら相手をしてやる」
影が揺れ、セルヴァンの姿が消えた。
その場には、
無音の深淵だけが残っていた。
今回はセルヴァンの“格”を最高レベルで示す回だった。
影滅十二将という強敵を相手に、
圧倒的な力を見せつけたセルヴァン。
だが同時に、
影界王(セルヴァンの弟)の本気が
まだ先にあることも示され、
物語はついに
神々の領域の戦いへ踏み込み始めた。
次回、第29話
──影界王の“真の戦略”が動き出す。




