第24話 蒼紋の丘、最初の開拓者たち
レン達の拠点“蒼紋の丘”計画は静かに幕を開けた。
十二神獣の誕生によって生命の息吹が満ちた土地へ、
最初に辿り着いたのは──過去を失った三人の亜人たち。
それぞれの願いが、この新しい村の未来と重なり始める。
そして、戦争の影は依然として遠く燃えていた……。
それでは本編をどうぞ!
【1:霧が晴れた土地へ】
黒い魔力の霧が晴れ、森の匂いが戻った朝。
レンたちは村の中央──十二神獣の“巣石”がある広場に集まっていた。
十二体の神獣たちはまだ赤ちゃんサイズで、
周囲をちょろちょろ走り回ったり、ぴょこんと跳ねたりと大忙し。
リリア(丸ウサギ)
「ぴぃ……♪」
フェリオン(羊)
「もこもこ〜」
カイ
「……なんか癒されるんだが」
セリス
「私たち、世界を救う戦争に行く前なんだよね……?」
レン
「まあ、準備期間は大事だし。
それに──」
レンは周囲の土地を見渡した。
緑が濃く、風は柔らかく、魔力が澄んでいる。
レン
「ここに、もう“人が住める”ような気配がある」
ミオ
「……うん。わかる。
霧が晴れた途端、空気が変わったもの」
十二神獣たちが誕生したことで、
大地そのものが生命に反応しているのだ。
その時──
草叢の奥から、弱い声が響いた。
「……あの……!」
「誰か……いらっしゃいますか……?」
ミオ
「っ……人の気配!?」
レン
「この土地にわざわざ近づけるってことは……」
レンたちは声の方へ向かった。
【2:最初の来訪者──フロル】
草木の合間に立っていたのは、
緑色の髪と枝のような指を持つ少女だった。
少女
「よかった……人が……!」
ミオ
「あなた……ドリアッド族?」
少女
「はい……木精族の……フロルと申します……」
フロルは深々と頭を下げた。
フロル
「この大地が……“助けを求める声”を上げていたので……
いてもたってもいられなくて……」
レン
「(……大地の声が聞こえるなら、適性は抜群だな)」
セリス
「大地の声を……? すごい……」
フロルは続けた。
フロル
「黒霧に覆われて……もう駄目だと思ったのですが……
急に霧が晴れて……温かくなって……
その……ここに、住ませていただけないでしょうか……?」
レン
「もちろん歓迎するよ。
むしろ、ぜひ力を貸してほしい」
フロルの目に涙が溜まり、
リリアがぴょこりと近づいて裾を引っ張る。
リリア
「ぴぃっ(仲間〜)」
フロル
「かわ……っ……!?」
村に最初の仲間が加わった瞬間だった。
【3:二人目──ギルダ】
その直後──
「……ここ、だったのか」
重い声と共に、大きな影が近づいた。
狼耳と灰色の髪を持つ、筋肉質の青年。
カイ
「ハーフウルフか?」
ギルダ
「名はギルダ。……お前たちが霧を晴らしたのか」
レン
「そうだけど、どうしてここへ?」
ギルダ
「……俺の故郷は黒紋に焼かれた。
もう帰る場所はない。
だが……家を建て直す力だけは残ってる。
もし、必要なら……使え」
セリス
(なんだか……言い方が照れてる感じ)
ミオ
「家を建てる力……って?」
ギルダ
「大工をやってた。
それしか取り柄がない」
その言葉を聞いた途端──
モーロス(羊サイズの黒牛)
「もぅぅ〜!(建築仲間!!)」
ギルダ
「……!? な、なんだこの……小牛……?」
レン
「我が家の工務主任だ」
ギルダ
「主任!?」
レン
「まあ実力はガチだから安心してくれ、一緒に風呂を作ってほしい」
ギルダはしばらく固まっていたが、
最後には苦笑して言った。
ギルダ
「……変な村だな。
……でも、悪くない」
こうして、頼れる大工が仲間に加わった。
【4:三人目──ベリィ】
さらにその日の夕暮れ。
風を裂くような影が木々の間を走り抜けた。
「いや〜、助かった助かった。
あの霧のままだったら、私、たぶん死んでたわ」
黒い尻尾を揺らしながら、
ひらりと木の上から降りてきた女性。
ミオ
「夜猫族……!」
ベリィ
「名前はベリィ。
暗い場所は得意だけど、あの霧は苦手でね。
でも、ここに来た瞬間……ふっと消えて」
カイ
「霧が嫌ってどんな生活だよ……」
ベリィ
「で──住んでいい?
食べ物は自分で調達するから!」
レン
「もちろん。ただし……」
レンは指を一本立てた。
レン
「索敵と偵察を手伝ってくれるなら」
ベリィ
「得意分野じゃない〜。
任せて!」
その瞬間、シェルファ(鳥)が肩に止まり、
シェルファ
「ぴぃ(偵察班マッチング)」
ベリィ
「ちっちゃ!? かわっ!?」
こうして三人目も加わり、
村は一気に賑やかさを増した。
【5:蒼紋の丘、始動】
三人の亜人が加わり、
十二神獣が走り回り、
レンたちは大きな焚き火を囲んだ。
ミオ
「賑やかになってきたね〜」
セリス
「なんだか……本当に村な気がしてきた」
レン
「これからみんなで作るんだよ。
“蒼紋の丘:ブルーリッジ”って名前の……俺たちの拠点を」
カイ
「おーし、明日から働くぞー!」
焚き火の炎が、ゆらりと揺れた。
その中心で十二神獣の小さな影が寄り添い、
まるで、これから来る戦乱の前触れを感じているようだった。
蒼紋の丘に、ようやく“人”が集まり始めた。
木精族のフロル、ハーフウルフのギルダ、
そして夜猫族のベリィ。
彼らはこの村の未来を支える重要な仲間となる。
次回──
村づくりは本格化し、
同時に北方から迫る黒紋本隊の影が濃くなる。
戦乱前の、束の間の開拓譚。
だが、それは確かな“希望”の物語でもある。
次話、第25話へ続く――。




