第23話 十二神獣プロジェクト─原初竜の末裔リュニス
王から与えられた辺境の地に、レンたちは新拠点づくりを開始。
そしてレンは久々に“コード創造”を本格的に起動する。
プログラマーとしての能力を応用して、この世界に存在しない“概念生命体”の生成を試みる。
そう──それは、後に世界を揺るがす十二柱の神獣の誕生だった。
今回は十二神獣の創造と、竜族の姉弟と〈辰〉リュニスの因縁が明かされる重要回。
それでは、本編をどうぞ!
王城から戻った翌日。
レンたちは馬車に揺られながら、自分たちの領地となった“ノルデア丘陵地帯”に到着した。
風が気持ちよく吹き抜ける、広い草原。
小さな湖、緩やかな丘、遠くに森。
人がほとんど住んでいない代わりに、自然が美しい。
ミオが腕を広げる。
「はぁ〜……いいわねここ! 空気が美味しい!」
セリスも嬉しそうに微笑む。
「戦闘の気配がほとんどない……落ち着きます」
カイは早くも走り回っている。
「家どこに建てる!? トレーニング場つくる!?」
セルヴァンは、相変わらず“老人姿”で杖をつきながら笑った。
「よい場所よ。ワシの影獣たちを置く倉庫もつくれるな」
──そう。
セルヴァンは再び老人の姿に戻っている。
本体の魔力が強すぎて周囲に害が出るため、『制御形態』として老人姿を取っているのだ。
ミオがレンの背を小突く。
「レン、あんた、この土地どう使うか考えてるんでしょ?」
「……まあね」
レンは丘の上に立ち、指先に光を集めた。
世界のコードが淡く反応する。
この場所は“構築”しやすい。
魔力の流れが素直で、干渉耐性が低い。
(……作れるな。ここの地脈なら)
ミオが覗き込む。
「ねぇ、何を?」
「生命体だよ。
前から作りたかった“守護体系”の……十二柱の神獣システム」
「十二……!?」
セリスが驚いて振り向く。
セルヴァンだけが、意味ありげに目を細めた。
「……ほう。ついに“コード創造”に手を出すか」
レンはうなずき、腰の端末を起動する。
透明な光のパネルが浮かび上がった。
設計図面のような、魔法陣のような、そしてプログラムコードのような不思議な図。
「元の世界でいう、アルゴリズムの自律生成モデル。
この世界の魔法学でいうと、概念具現術式。
両方を合わせたハイブリッド構造で……“生命そのものを生成する”」
ミオ「……やっぱりあなた、怖いわ」
カイ「でもワクワクする!」
■“十二神獣プロジェクト”起動
レンは指先で空間のコードを操作し、木の枝を拾って魔力を込める。
枝が光に包まれ、ぐにゃりと変形し──
ちいさな、丸いフォルムの動物が生まれた。
ピッ、と鳴いてレンの腕によじ登る。
最初に作られたのは《子》──チトラ。
ミオ「かわいい! これが“子”ね!」
セリスが手を伸ばすと、チトラは頬をすり寄せた。
カイ「すげぇ……これ、生き物なのか?」
レン「生命コードと魔力で構成された、魔法生命体。
今は赤ちゃんの姿だけど……成長速度は早く、念話もできる。
十二体とも」
セルヴァンがうなずく。
「……見事よ。創造主の技の片鱗を感じる」
レンは次々とコードを起動し、十一体を生成する。
十二匹の赤ちゃんサイズの神獣が、丘の上をヨチヨチ歩き回る。
ミオ「かわいすぎるんだけど!!」
セリス「癒されます……」
カイ「すげぇやべぇ……!!」
■十二神獣、降臨(赤ちゃんver)
●《子》チトラ
闇と光を同時に操るバランサー。
敵味方の魔力の“偏り”を直す。
●《丑》モーロス
物質強化と重力操作を行う。
建築で本気を出すと家が1日で建つ。
●《寅》ラガン
戦闘脳の虎。速度特化。
レンの護衛として最優先行動。
●《卯》リリア
治癒系のスペシャリスト。
今は丸いウサギだが、後に回復女神の化身級に。
●《辰》リュニス
──この物語で最も重要な神獣。
小さな蒼いドラゴン。
孵化した直後、セリスとカイの方へまっすぐ飛んだ。
セリス「え……?」
リュニスはセリスの胸元にちょこんと座り、くるる、と喉を鳴らす。
カイ「姉ちゃん……好かれてる!」
セルヴァンが目を細める。
「……なるほど。
リュニスは“原初竜王ソルヴァリスの直属守護獣”の末裔だ。
竜族に懐くのは当然よの」
セリスの目が大きく見開かれた。
「原初竜王って……竜族の始祖……?」
レンはうなずく。
「セリスとカイの血に反応したんだ。
たぶん……この十二神獣の中でもリュニスは別格だ。
竜族の守護を本能レベルで組み込んである」
セリスは抱きしめながら微笑む。
「……あなた、私たちを守ってくれるの?」
リュニス「くるぅ!」
カイ「かわいい!! あれもう家族じゃん!!」
■残り七体の降臨
レンが再び指先を掲げると、丘の中央に魔法陣が走った。
十二神獣の生成シーケンスはまだ半分。
ここからが本番だ。
●《巳》ミィナ
しなやかな蛇型。
毒と解毒を同時に扱う特殊体質。
赤ちゃん姿では髪紐くらいの長さで、レンの肩に巻きついてくる。
ミオ「かわっ──細っ!!」
ミィナ「しゅるる♪」
●《午》ガイオス
小さな黒馬。
将来的に“軍勢の脚”となる速度バフの覇者。
今は手のひらサイズだが、蹄から微かな風が生まれる。
カイ「え? もう走ってるんだけど! はやっ!!」
●《未》フェリオン
ふわふわ羊。
結界と防護を司る。
もこもこで、触ると魔力が静まる。
セリス「……かわいすぎて言葉が出ませんね」
●《申》コングル
ちび猿。
解析・計算・情報収集など、レンの補助を担う。
原初言語の一部を読み取れる“コード猿”。
レン「おお、これは便利……!
俺の書いたコードの補完ができるのか」
コングル「キキィ!(任せろ的な意味)」
●《酉》シェルファ
小鳥型。
超遠距離索敵と伝達の女王。
群れを作る能力もあるため、スカウトを一手に担う。
ミオ「ちっさ! でも目が鋭いわね」
シェルファ「ピィッ!」
●《戌》バルゴ
丸い仔犬。
嗅覚と直感が異常に鋭く、敵意察知のスペシャリスト。
十二神獣の中でも特に忠誠心が高い。
バルゴ「わふ!」
カイ「うぉぉぉかわいい!」
●《亥》ドルン
コロコロした子イノシシ。
圧倒的な突進力と突破能力を持つ。
怒ると地面が震える(赤ちゃんなのに)。
ミオ「ちょっ……この子、怒らせちゃダメなやつじゃないの?」
ドルン「ぶひっ!」
十二神獣はすべて揃った。
いずれは“大人”へ進化し、神獣級の力を発揮する。
だが今は、どれも手のひらサイズのかわらしい魔獣──
レンの新たな家族のような存在だった。
十二体が並ぶ光景は、まるで神話のはじまりそのもの。
カイ「……なんかスゲェよこれ。
ほんとに俺たちだけの軍勢じゃん」
セリス「レンさん、本当に……ありがとうございます」
レンは肩をすくめる。
「感謝されるほどのことじゃないよ。
ただ……守りたかっただけだから」
ミオが頬を染める。
「……ま、アンタらしいわね」
セルヴァンは静かに頷く。
「これで、この土地は“生きる”ぞ。
十二神獣が地脈を通し、結界の核となる。
拠点としては申し分ない」
そしてそれだけでは終わらなかった。
十二体はレンの手元に寄り添い、
コードの光が丘全体に拡散する。
丘に走る地脈が揺らぎ、光を帯び──
■拠点誕生
中心から広がるように、木材が組み上がり、石が積み上がり、
モーロスの重力操作が構造を固める。
フェリオンの防護膜が全体を包む。
シェルファが周囲を飛び回り、視界を共有する。
バルゴが危険区域を嗅ぎ取り、印をつける。
リリアが周囲の植物の生命力を高め、道を柔らかく整える。
レンのコードと十二神獣の能力が融合し──
わずか数時間で、森の小さな入り口に“住める拠点”が形成されていく。
ミオ「な……何このスピード!? ここ、さっきまで何もなかったわよね!?」
カイ「すげぇ……秘密基地みたいだ!」
セリス「……私、ここに住めると思う。すごく落ち着く」
セルヴァン「ふむ、名をつけるとよかろう。
これは既にひとつの“領域”だ」
レンは少し考え──そして言った。
「《蒼紋の丘》
……どうかな? 竜族の蒼と、神獣の紋章で」
リュニスが嬉しそうに鳴いた。
「くるるっ!」
ミオ「いいじゃない。もう今日からここが拠点ね!」
カイ「俺、訓練場つくる!」
レン「うん。しばらくは戦争の準備まで時間がある。
──ここで力を蓄えよう」
その言葉に皆が頷いた。
そうして、レンたちの拠点づくりの日々が始まる。
■そして、迫りくる脅威
夕暮れ。
蒼く輝く丘を見ながら、セルヴァンがぽつりと言った。
「……十二神獣。
創造主の遺産とも呼べる存在。
まさか、お主がこの地で揃えるとはの」
レン「……俺の前任者の話、また聞かせてくださいよ」
セルヴァン「いつか、な。今は……力を溜めよ。“戦”が迫る。
十二体が揃った今でも……危うい気配がある」
レンは頷いた。
セリスとカイはリュニスを抱きながら遠くの空を見た。
──十二神獣は誕生した。
だがそれは、
これから始まる“本当の戦い”の序章にすぎない。
今回は十二神獣(巳〜亥)の誕生・新拠点《蒼紋の丘》の完成・竜族とリュニスの因縁の強調などを一気に描きました。
ストーリーの“中盤の土台”になる重要な回です。
次回もお楽しみに!




