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第21話 失われた子供と影の迷宮

フェルゼン砦が影に呑まれた直後。

レンたちは、攫われた子供――“まだ救われていない存在”を探し出す。

セルヴァンの本体は強大すぎるため、長く実体を保てず再び老人姿へ。

残されたのは、複雑に層分けされた影迷宮。

黒紋壊滅の裏で、

救われぬ命を求めて挑む――救出回。

フェルゼン砦が影の海へ沈んだ直後。

砦の跡地では、黒い光の粒子が空へ昇り、世界の色が静かに戻りつつあった。

レンは深く息を吐いた。

視覚化を発動したまま、崩壊した空間の残滓を追い続けていたからだ。

セリスが振り返る。


「レン、大丈夫? 魔力、かなり消耗してる」

「平気だよ。……それより――」


レンは眉を寄せた。


「攫われた子供たちの“気配”が……まだ途切れていない」


ミオが息を呑む。


「えっ……じゃあ、まだどこかで……!?」

「うん。砦にはいなかった。

でも、残留コードに“転送痕”がある。黒紋の連中は最後に……別拠点へ移したみたいだ」


カイが拳を握る。


「畜生……黒紋ども、最後まで卑怯な真似を……!」


その時、背後から落ち着いた声が降りてきた。


「……転送先は“影の第六層”じゃ。

奴らが直接触れられぬ場所――ゆえに、子らはまだ生きておる」


振り返ると、そこには青年姿のセルヴァンが立っていた。

しかし、彼の表情は疲労に満ちている。

セリスが思わず後ずさる。


「……ま、また若返って……! いや、これは……」


ミオも目を丸くする。


「さっきの“神みたいな姿”ではないけど……それでも十分若いじゃない……」


セルヴァンは苦笑した。


「本体で動ける時間は短い。

この姿も長くは保てん。力が強すぎるゆえにの」


青年の顔がふっと歪む。

次の瞬間、光の粒子が舞い、彼はいつもの老人姿へと戻った。


「……無理は出来んということじゃ。すまぬの」


レンは首を振る。


「いいんです。むしろ、本体の状態で話してくれただけで充分です」


セルヴァンは杖をつくと、ゆっくり言った。


「子らは“影迷宮”の奥深く。

黒紋の者どもが手を出せぬ、影属性の護域に閉じ込められておる。

だが、完全に閉ざされておるわけではない。

レン、お主の視覚化があれば、道は開く」


レンは頷いた。


「行こう。……子供たちを助けに」

 

◆◆◆

影迷宮――それは、フェルゼン砦の下、何層にもねじれた空間に存在していた。

黒い霧が立ち込め、先が見えない。

床には青白い紋様が刻まれ、触れると即時発動する魔法罠が仕込まれている。

カイが周囲を見回す。


「……なんだよここ。普通のダンジョンじゃねぇぞ」


ミオは魔力の流れを読み、顔をしかめる。


「影属性の迷宮……なのに、ところどころ“コードみたいな線”が走ってる……? 何これ」


レンはすぐに答えなかった。

視覚化で見える世界が、あまりに現実離れしていたからだ。

(……影属性の魔法陣に、地球のデジタル構造の“断片”が混じってる。

まるで、二つの世界を無理やり重ね合わせたような……)

セリスが不安げに訊く。


「レン、迷える?」

「うん。むしろチャンスかも。

“地球のコード”部分は俺だけが視える。

つまり、ここは俺たちのために用意された道だ」


レンが一歩踏み込むと、床の罠が一瞬だけ輝いた。

だが、レンはその“点”を指でなぞると、デジタル文字列のようにほどけて消えた。

カイが叫ぶ。


「おいおい……魔法陣を“解除”したのか!?」

「違うよ……“編集”したんだ。

影迷宮のコードを、一部書き換えた感じ」


ミオが感嘆のため息をつく。


「レン……やっぱりあんた、規格外だわ……」

 

◆◆◆

迷宮を進むほど、罠は強力になった。

影の分身兵。

記憶を模倣する幻影。

音ひとつで発動する魔力捕縛陣。

だが――

レンが解析。

ミオが魔力安定化。

セリスとカイが先行して敵影を排除。

完璧な連携が続いた。

やがて、巨大な扉に辿り着く。

中心には、三つの属性紋様――光・影・時間――が重なって輝いている。

セリスは息を呑む。


「これ……古代竜の結界……!」


レンは扉に手を触れた瞬間、視覚化が暴走した。

地球のコードと、古代竜の魔法陣と、影属性の呪印――

三つが重なり合い、複雑な“世界の構造そのもの”が目の前に広がる。

(……こんなもの、あり得ない……!

でも、誰かが“作った”……?

影階層を操る創造主……セルヴァンの本体だけが干渉できる領域……)

扉の奥から微かな泣き声が聞こえた。


――たすけて……だれか……


レンは叫んだ。


「待ってて! 今、開ける!」


レンの指先がコードを走り、ズレた魔法陣を“調律”する。

ミオが影属性を中和し、セリスとカイが竜力で扉を押す。

三つの力が合わさった時――扉が開いた。

 

◆◆◆

内部は青白い光に包まれ、中央に小さな子供たちが膝を抱えていた。


「……っ!」


セリスが駆け寄る。


「大丈夫!? 怪我してない?」


子供たちは相当衰弱し怯えていたが、セリスの手に触れると安心したように泣き出した。

ミオが肩を撫でる。


「よしよし……もう怖くないからね」


レンは部屋全体を見渡す。

(……影結界の解除が完了。

転送痕なし、敵なし。

ここから直接外へ出られる……)

レンは深呼吸し、影迷宮の出口を“再構築”した。


「みんな、行こう」

 

◆◆◆

外へ出ると、そこはエルドの町から少し離れた丘の上だった。

子供たちが親のもとへゆっくりと向かい、歓声が沸き起こる。

セルヴァン老人は、疲れたように杖を突きながら微笑んだ。


「……よく救ったのう。

お主らのおかげで、またひとつ希望が守られた」


レンも笑った。


「まだ終わりじゃないけど……救えてよかった」


その時、セルヴァンの瞳がかすかに揺らいだ。


「レン、皆……一つ伝えておかねばならん。

黒紋は壊滅したが――これで全て終わったわけではない」


カイが聞き返す。

「どういうことだよ、爺ちゃん」


セルヴァンは空を指した。


「影迷宮の“外側”……

さらに深い階層に潜む“真の本隊”が動き出しておる。

エルドへ向けて――すでに進軍を始めておる」


空が鳴り、遠くで黒い雲が渦巻いた。

レンは目を細めた。


「……来るんだな。

黒紋の“本当の戦争”が」


風が強く吹き抜けた。

セルヴァンの声は低い。


「次が……本番じゃ」


今まで描かれていなかった“過去に攫われた子供たち”の救出を描く回でした。

影迷宮でレンの能力がさらに進化し、世界構造の謎にも一歩踏み込む回でもあります。

そして――黒紋の“真の本隊”がついに動き始める。

次回もお楽しみに!


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