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第17話 創造者の囁き――開発者権限の目覚め

黒紋の本隊の影が迫る中、セルヴァンを加えた一行は黒竜の本拠地を目指す。

その道中でレンは、残された黒紋の“残留コード”から、世界の基盤に関わる異常を読み取る。

そして――レンだけに届く“声”。

それは、はるか昔、この世界を創った“創造者”の囁きだった。

平日お昼更新予定です。

町に戻り装備を整え、いざ黒竜の本拠地へ向けて北上を続ける一行。

夜の冷気が、砂を含んだ風となって肌を刺す。

「黒紋の奴ら……足跡が増えとるな」

セルヴァンが老人の姿で杖を突きながら言った。

彼の声には落ち着きがあるが、周囲を覆う圧のような魔力は微かに揺れている。

セリスは弟を庇うように寄り添い、ミオはレンのすぐ横で周囲を警戒していた。

レンは立ち止まり、周囲に漂う“残留コード”を視覚化した。

(くる……またくる)

深い闇の中、コード文字が淡く光を帯びる。

だが―今回は、ただの黒紋の残滓ではない。

《認証プロトコル起動》

《識別中……識別中……》

耳元で、澄んだ電子音のような響きがした。

「……え?」

瞬間、視界が白く弾けた。

気づけばレンは、真っ白な“空間”に立っていた。

方向感覚も温度もない。ただ静寂だけがある。

《ようやく……接続が通った》

声が響いた。

性別すらわからない、しかしどこか懐かしい声。

「誰……だ?」

《君が“後継デバッガー”か確認していた。

 ようやく十分な権限を得たな。》

「デバッガー……?」

まるでシステムの裏側を覗くような単語。

だが、レンにはなぜかその意味が直感で理解できた。

世界を“修正する者”。

《名乗りは不要。

 私は“この世界を設計した者”―創造者だ》

……心臓が、ひとつ跳ねた。

(世界を……作った?)

《君がここに来た理由を、少しだけ話そう》

“声”は淡々と続ける。

《私は、はるか昔……地球から来た。

 技術も魔術も極限まで突き詰めて、世界を創った。

 だが、世界は成長し続け、次元の壁を越え……

 私の干渉を拒むようになった。》

「だから……俺が召喚された?」

《ああ。

 世界のバグ、歪み、脅威――

 その修復者として、君を選んだ》

白い空間に文字列が浮かぶ。

《レン・— ※認証名隠匿中 —

 適性:99.79%

 創造者プロトコルへのアクセス権限――承継可能》

「……“承継”?」

《世界の修復は君に委ねる。

 だが、今はまだ全てを開放できない。

 黒紋と“竜王封印”が大きく関わっている。》

声が徐々に遠ざかり始める。

《断片を集めろ。

 “エミグレ文書”は創造プロトコルを再起動する鍵だ。

 やがて……私とも完全に接続できる》

「待ってくれ! 俺は――」

《仲間を信じろ、レン。

 そして……》

声がほんの少しだけ柔らかくなった。

《君は一人ではない》

光が消えた。

「レン!!」

ミオの声で意識が戻った。

気がつけば皆がレンを囲んでいる。

「急に倒れたのよ! 何か見たの!?」

「兄ちゃん、大丈夫か!?」

「顔色が悪いぞ、レン殿」

レンは息を整え、周囲の残留コードを再度視た。

その中に―さっきの白い空間で見た“プロトコル文字”の断片が混じっていた。

(夢じゃない……本当に接続したんだ)

セリスが不安そうに覗き込む。

「敵の仕業では……?」

「いや、違う」

レンは微笑んだ。

「……俺にしか来ない“システムメッセージ”みたいなものだよ」

ミオがむっとする。

「また秘密よね?」

「まだ言えない。でも―いずれ全部話す」

ミオは頬を膨らませつつも、その目には信頼が宿っていた。

セルヴァンが珍しく真顔で言う。

「今のレン殿から……底の見えぬ魔力の気配がする」

(レン自身も、何かが“上書き”されたのがわかる……)

視覚化した文字列が、以前よりも圧倒的に読みやすくなっていた。

そして新しい表示があった。

《開発者モード:Lv1 解放》

《解析上限:17% → 42% に上昇》

(……こんな、ゲームの裏設定みたいな……いや、これは現実だ)

黒紋の残留魔力が動いた。

まるでレンが権限を得たことに反応するように。

《追跡者タグ:加速》

《黒竜本拠地に戦力集中》

《標的:竜族姉弟・開発者継承者レン

「……来るぞ。黒紋の本隊が」

「本隊!?」

セリスが青ざめ、カイが剣を握りしめた。

レンは皆を見回した。

「でも、大丈夫だ。

 俺たちには――セルヴァンもいる」

セルヴァンは老いた顔のまま、口角だけを上げた。

「任せよ。10万でも100万でも、わしの“異空間”で十分相手できる」

ミオがほっと息をつき、セリスも微笑んだ。

(世界の修復……後継デバッガー……創造者……)

謎は増えたが、道は一つだ。

「行こう。

 子供たちも救う。

 黒紋も倒す。

 そして――この世界の“エラー”も、全部修正する」

レンは歩き出した。

背に、仲間の足音が続いた。

霧立つ夜の奥、黒竜の洞窟が黒い影を落としていた。

今回は、ついに「創造者」とレンが初接触しました。

世界そのものの“設計思想”が見え始め、物語の根幹が動き出します。

次回もお楽しみに!

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