第13話 追跡者の影―封印コードに潜む真実
竜族姉弟・セリスとカイを救ったレンとミオ。
しかし、その夜――町に“見えざる影”が忍び寄る。
竜族を追う者なのか、それとも封印に関わる別勢力か。
レンは視覚化能力で残留コードを解析するが、その真相は仲間の運命さえ揺るがすもので……。
森の戦いから戻ったレン達は、夜の静けさに包まれた城門へたどり着いていた。
町の灯りが揺れ、兵士たちの松明が影を伸ばす。
「……止まれ。身分を確認する」
門番が声を張る。
セリスとカイは竜族の角を隠すため、フードを深くかぶった。
レンは視覚化を静かに起動する。
兵士の意識が淡い文字列として浮かび上がる。
《認識:普通の旅人/警戒度:低/問題なし》
――この程度なら軽い書き換えで十分だ。
「……通してもらっても?」
レンは一言呟き、兵士の意識コードに“旅人=安全”の暗号タグを上書きした。
兵士は一瞬まばたきし――
「……ああ、いいぞ。気を付けて入れ」
セリスが小さく息を呑んだ。
「すごい……意識に干渉したのですか?」
「ちょっとした調整だよ。気づかれない程度にね」
後ろでミオがむすっとしていた。
「セリス、そんなキラキラした目で見るなーっ!」
「えっ!? えっと……尊敬の意味で……?」
「だから余計ややこしいのよ!!」
カイだけがゲラゲラ笑っていた。
◆夜の宿で――やきもちの温度
宿に着くと、俺はベッドに倒れ込みそうなほど疲れていた。
ミオが隣に座る。その距離がやたら近い。
「ちょっと! 寝ないの。まだ聞きたいことあるでしょ? 竜族のこととか」
「いや、ミオ。俺、今倒れそうなんだけど……」
そこにセリスが無自覚に割り込んでくる。
「レン、竜族の血の色を知りたいと言っていましたよね。見せますか?」
彼女は腕を差し出し、袖をまくる。ほんのり蒼い血管が浮かんだ。
ミオの目がギラッと光る。
「ちょ、色気出してんじゃないわよ!!」
「え……色気?」
「そういうのは私の前で禁止!」
カイだけは「姉ちゃん美人だもんなー」と言い、ミオがさらに膨れる。
俺は心の中でため息をついた。
(……やっぱり女子って難しい)
◆深夜――忍び寄る異質な《コード》
深夜――
視覚化システムが自動で反応した。
《警告:外部データ構造接近/属性:竜族系統・黒紋》
窓の外を見ると、屋根の上に黒いフードの影が立っていた。
夜風になびく外套。人とは思えない静かな動き。
「レン……あれ、敵?」
いつの間にか起きていたミオが、低く囁く。
「ああ。俺たちを観察してる」
影はまるで“こちらの情報を読み取るかのように”、わずかに首を傾けた。
ミオが杖を握りしめる。
「セリスとカイは寝てる。……私たちが守るのよ」
――その心意気が、少しだけ嬉しかった。
影が動いた瞬間、俺は残留魔力を視覚化した。
淡い光が文字列となって浮かび上がる。
《封印解除の鍵は“二柱の子竜”
彼らを奪還し、王へ献上せよ
覚醒の兆しを持つ者――“視る者”も同時に連行対象》
……俺の胃がひやりと縮んだ。
(俺も……標的か)
さらに深層情報が浮かび上がる。
《成功すれば大封印が解放され、竜王復活》
(……竜王?)
俺はその情報をミオにも、セリスにも言わなかった。
言えば余計に怯える。
今ここで真実を告げれば、セリスは責任を感じて逃げ出すだろう。
俺は息を整え、影が去るのを見送る。
「……レン? 何かわかったの?」
ミオが首を傾げる。
「いや。まだ断片的だ。確証がない」
嘘を言った瞬間、胸が少し痛んだ。
だが――守るための嘘だ。
◆翌朝――“罠”が動く
翌朝。
町の広場にはざわめきが広がっていた。
「子供が一人……行方不明だと?!」
「夜に“角のある男”を見たって話だ!」
ミオが青ざめる。
「角……!? それ、セリスとカイが疑われるじゃない!」
セリスは怯えたように弟を抱き寄せる。
「私たちのせいで……町が……」
レンは強くかぶりを振った。
「違う。これは完全に“罠”だ」
視覚化すると、犯人が残した細かなコードが広場に漂っていた。
《誘導タグ:竜族犯行に見せかける》
《焦点:女竜の捕獲》
(狙いは……セリスか)
さらに奥に隠された文字列が浮かび上がる。
《捕獲後、北方の“黒竜の祭壇”へ搬送》
《覚醒前に封印解除の儀式を開始せよ》
レンの背中を冷汗が伝う。
(……セリスを連れて行かれたら、終わりだ)
だが――
その事実は彼女に決して言えなかった。
ミオが震える声で口を開く。
「レン……私たち、どうするの?」
「決まってるだろ」
レンは二人に背を向け、前を指さした。
「助けに行く。子供も、そして……狙われてるお前らもだ」
カイが拳を握る。
「俺も……行きたい!」
セリスは弟を制そうとして――
レンは静かに言った。
「大丈夫。暴走防止コード……ひとつ仕込んでおいた」
セリスが驚き、そしてわずかに頬を染めた。
「……あなたは、どうしてそこまで……」
ミオが飛び込むように割り込む。
「はいストップ! そこ私の前で言わない!!」
カイ「姉ちゃん、レン兄ちゃんが好きなの?」
セリス「えっ!? 違います! 尊敬です!」
ミオは(それが厄介なのよ!)と心で叫んでいた。
その最中にも――
町の空気は不気味なほど静かになる。
“追跡者”はすぐ近くにいる。
俺はひとつ息を吐いた。
「行くぞ。……この罠、ぶっ壊す」
そして――
俺たちは影を追って北へ走り出した。
影の追跡者が本格的に動き始めました。
レンはすでに“敵の真意”を完全解析していますが、仲間を守るため告げないという展開にしています。
平日昼更新予定です!




