第11話 竜の姉弟 ―孤独な叫びと出会い―
ミオの覚醒から日が浅く、二人はまだその余韻の中にいた。
レンの視覚化能力も安定し、情報の奔流を制御できるようになったが――
森の奥から、異質な魔力の揺らぎが迫ってきていた。
それは人間でも魔物でもない――竜族の痕跡。
今回の話では、新章「竜族編」の導入です。
森の帰り道、レンはふと立ち止まった。
「……ん?」
視覚化で表示される魔力のコードが、微かに不自然な揺らぎを見せていた。
枝分かれする光の流れ。
その先には、見慣れない魔力の波紋が、ゆっくりと森の奥へと広がっている。
レンは眉をひそめる。
「ミオ、ちょっと待て」
「なに?」
振り返ったミオは、まだ覚醒後の高揚が残っている。
金銀に光る髪の端、瞳の翠と金の二重輪紋は、少し落ち着いたとはいえ存在感を放っていた。
「森の奥、何か変な魔力の痕跡がある」
「また戦闘フラグ……?」
ミオは少し不安げに息を吐いた。
「いや、戦闘とは限らない。助けを求めるような気配もある」
二人は慎重に足を進める。
開けた草原の中で、倒れている一人の少女を見つけた。
背中には古代魔紋の痕跡が残り、封印の影響で魔力が抑えられている。
レンはそっと駆け寄り、視覚化で状態を確認する。
(……封印がかかっている。潜在能力は高いが、制御不能状態だ)
少女はゆっくりと目を開けた。
「……だ、誰……?」
弱々しい声ながらも、瞳には好奇心と少しの安心が見えた。
「大丈夫か?俺はレン。この森で倒れているのを見つけた」
「……レン……?」
少女はその名前を繰り返した。尊敬に近いまなざしがレンに向けられる。
それを見たミオの頬が一瞬赤くなる。
(……なんで、あんな見方するのよ!)
ミオの胸の中でツンデレスイッチが作動する。
「この子、何者だ?」レンは視覚化を使い、魔力コードを解析する。
「名前はセリス・ヴァルディナ……人間ではない、竜族のようだ」
「竜族……?」ミオは顔をしかめた。
「しかも、かなり強力な潜在能力を持っている……封印が解除されたら手がつけられないな」
そこに、森の奥から低い咆哮が響いた。
「……あれは?」
小さな体に似合わない巨大な魔力の揺らぎ。
弟らしき少年――カイ・ヴァルディナが、追手に追われて逃げ込んできたのだ。
「姉ちゃん、大丈夫か!?」
少年は振り返りつつ、魔力制御が不完全なまま全力を出してしまう。
周囲の木々が揺れ、地面に亀裂が入るほどの力だ。
「放っておけば、この森ごと吹き飛ぶ……!」
レンは視覚化で少年の魔力コードを確認する。
異なる構造――竜族独自のコード体系が奔流していた。
(……初めて見る形だ……解析できるか?)
そこへ、人間の追手が森に侵入。
目的は竜族の捕獲。
レンはミオに小声で指示する。
「ミオ、封印を解除する前にカイの魔力を抑えてくれ」
「わ、わかった……!」
ミオは覚醒した能力をフル活用し、風と光の複合魔法で暴走寸前の魔力を局所的に封じる。
少年はその瞬間、ようやく呼吸を整えた。
「……すごい……姉ちゃん、助かった?」
セリスはレンの方を見上げ、深く頭を下げる。
「あなた……ありがとう、レン」
その表情に、ミオは強烈なやきもちを感じる。
「……ちょっと、なんでそんな顔するのよ」
ミオはつい、声を荒げてしまう。
レンは苦笑しながら、肩をすくめた。
(……やきもち炸裂か……可愛いけど扱いにくいな)
追手は森の外縁まで撤退したが、
レンは視覚化でまだ残る竜族の魔力コードを確認する。
「……危険は去ったが、封印の影響も強いな。長居はできない」
「うん……でも、二人とも無事でよかった」
ミオはまだ少し拗ねながらも、目は優しく姉弟を見つめる。
レンは心の中で思う。
(セリスは尊敬心から俺を慕っている……恋愛ではない。
でも、ミオが勘違いして焼きもちを焼く構図は面白い)
次の問題は、カイの暴走の原因と封印解除、
そして竜族姉弟の秘密にどう向き合うかだ。
第11話、いかがでしたか?
次話では、カイの暴走をどう抑えるか、
ミオの覚醒スキルがどう協力プレイで活かされるかが焦点になります。
平日お昼に投稿予定です!




