第10話 ミオ、覚醒 ―光紋の導き―
レンの“第1覚醒”から、まだ日が浅い。
視覚化による情報の奔流にも少しずつ慣れ、制御が安定してきたレンだが――
今度はミオの身に、思わぬ“変化”が起きつつあった。
冒険者としては小さな依頼だったはずが、
それは二人にとって大きな転機となる。
今回は ミオの覚醒回!
それでは本編をどうぞ!
森の帰り道は、本来なら穏やかな陽光に包まれた散歩道のようなものだった。
だが――今日は違う。
(ミオ……妙に魔力が澄んでるな)
レンは歩きながら、ミオの背中を視覚化していた。
コードの光は細い枝分かれを作り、脈動している。
第1覚醒後の自分と似ているが、どこか“方向性”が違う。
「なに?また私のこと視てるわけ?」
振り返ったミオが少し頬を膨らませる。
「いや、変な意味じゃなくてだな……魔力流の調子が良すぎるっていうか」
「それ、褒めてるの?」
「多分」
「“多分”にするな!」
そんな他愛のないやりとりをしていた、まさにその時。
――獣の悲鳴が森の奥から響いた。
「行くぞ!」
「言われなくても!」
二人は一気に駆け出した。
◆
開けた草原に飛び出すと、複数の冒険者が影の刃に切り裂かれ、倒れ伏していた。
巨大な黒狼――ヘルガルド・ファングが、真紅の瞳を光らせている。
その周囲には影をまとった中級魔獣が二体。
冒険者たちは完全に押されていた。
「最悪……よりによって影系の上級魔獣とか……!」
「強い……だからこそ、正面から行く!」
彼女の魔力が一瞬で沸騰するように高まった。
「ミオ、突っ込む前に魔力安定コード入れる。肩貸せ」
「は、はやく……!」
レンはそっと触れ、コードを流し込む。
――ミオのコードが、ふっと光った。
微細だが確かに“共鳴”したのを感じる。
(……やっぱり、何か起きかけている)
だが考える暇はない。
ミオは剣を構え、風のように駆け出した。
◆
ミオの剣技は鋭かった。
影の斬撃をいくつか切り払い、味方から敵の注意を剥がしていく。
しかし――ヘルガルドの気配が消えた。
「ミオ、後ろ――!」
レンが叫んだ瞬間、影から巨大な牙が飛び出していた。
ミオは回避しようとしたが、足元の影が絡みつき、一瞬動きが鈍る。
牙はミオを通り過ぎ――
その奥のレンを狙った。
「……っ!」
咄嗟にレンは防御コードを展開する。
だが間に合わないと悟った瞬間。
――時間が、止まった。
いや、止まったように“感じた”。
ミオの視界には、レンが倒れる未来の像が見えた。
その瞬間、胸の奥に強烈な衝動が走る。
「やだ……絶対に、やだ……!」
ミオの中で感情が沸点を超えた。
レンが仕込んだ補助コードが共鳴し、
ミオ自身の潜在コードが暴走し――
“覚醒コード”が強制的に立ち上がる。
光が弾けた。
◆
レンには、ミオのコードが奔流のごとく噴き上がるのが視えた。
枝分かれが消え、一本の太い光の道となって収束する。
それがまた細かく分岐し、機能単位に再構築されていく。
「ミオ……これ……覚醒か……!」
強風が逆巻き、ミオの金髪が天へ舞い上がる。
髪の端は淡い青銀に染まり、耳の周囲に複雑な光紋が浮かび上がる。
瞳には二重の輪紋――翠と金が重なる美しい光。
ミオはゆっくり手を伸ばし、迫り来る影の牙を指先一つで止めた。
「……レンには……指一本触れさせない!!」
衝撃波が走り、ヘルガルドが吹き飛ばされる。
◆
覚醒後のミオは別人だった。
軽い動きではない、無駄のない“正確すぎる動き”。
影の刃を予測し、回避し、切り落とす。
まるで、敵の攻撃パターンが“全部見えている”かのように。
「こんなの……怖くない!」
叫ぶたびに風刃が生まれ、光矢が散り、
影の魔獣たちは次々と倒れていった。
ヘルガルドが残ったが、
ミオは地面を蹴った瞬間に影を追い抜き、
首筋へ風と光の複合斬撃を叩き込んだ。
黒い巨体は地面に沈む。
冒険者たちは恐れと畏敬の入り混じった声を漏らす。
「お、おい……あの子……なに者だ……」
「さっきまで普通だっただろ!?なんで急に……」
レンだけが理解していた。
(俺のコードが核になって……ミオ自身の潜在能力が花開いた……
この覚醒は……ミオの“感情”が引き金か)
◆
光が収束し、ミオがゆっくり振り返った。
その姿に、レンは言葉を失った。
少女らしさの中に、神秘的な美しさが混ざっていた。
髪は淡い銀光を帯び、瞳は輪紋を宿した深い翠。
体の線も少し大人びて、気品ある雰囲気が漂う。
「……な、何よその顔。変?」
「いや……すごく綺麗に……なったっていうか」
「~~~~~っ! み、見ないで!!」
耳の光紋がぴこぴこ揺れ、ミオが顔を真っ赤にする。
――が。
冒険者たちの視線がミオに集中しているのに気づき、
ミオはさらに不機嫌になる。
「ちょっと……なんでみんな見てるのよ」
「いや、覚醒して強くて綺麗で――」
「レン!あんたなんで得意げなのよ!!」
「いや?別に?」
「むー!!」
袖をぎゅっと掴むミオ。
周囲の男冒険者たちの視線が増えると、さらに掴む力が上がる。
(……あれ、やきもち?)
レンは心の中で苦笑した。
◆
そしてレンは、何気なくミオを視覚化しようとした。
――視えない。
普通なら見えるコードが、シャットアウトされていた。
(ロック……? いや、アクセス権限拒否そのもの……?)
覚醒ミオは、無意識のうちに“解析拒否”の防御を展開していた。
(……なるほど。
ミオだけは、“人として”見ろってことか)
レンはそう理解し、そっと視覚化を切った。
◆
戦闘跡地を調査していると、不自然な爪痕が見つかる。
大きい。
だが深さや力のかかり方が不釣り合いだ。
(……幼い。しかし膨大な魔力。
竜族……か?)
ミオが首を傾げる。
「レン、どうかしたの?」
「面倒なのが近くを通った跡がある。
竜族の子供……かもしれない」
「えっ……竜族って、あの?」
「そう。人間の常識が通じない連中だ」
二人は互いに顔を見合わせ、緊張を共有した。
――次に何が起こるのか。
その時は、すぐ近くまで迫っていた。
第11話へ続く。
ミオの覚醒回、いかがでしたか!
次章「竜族姉弟編」への本格突入
次話は平日のお昼に投稿予定です!
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また次の話でお会いしましょう!




