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第1話 再起動する魂

初投稿になります。

魔法をプログラムとして扱う異世界ファンタジーです。

ゆるくも理屈っぽい物語を楽しんでいただければ幸いです。

 終電を逃した夜の寂れたオフィス。

 モニターの光だけが、暗い部屋を青白く照らしていた。


 レンは冷めたコーヒーを片手に、コードのログをぼんやり眺めていた。

 画面の中では、延々とデータが無機質に流れ続けている。


「よし、これなら通ったな」


 小さく呟く声が、自分の耳にもかすれて聞こえた。

 システムエンジニアとして五年。

 毎日が終わらないテストと修正のループ。


 ――if(life == work) return death;


 そんな自虐コードを、ふと頭に浮かべて苦笑する。


 気がつけば朝が近い。

 目の奥が熱く、意識が遠のく。多少の頭痛も麻痺気味。

 心臓が、ひときわ大きく跳ねた。


 その瞬間、画面の文字が滲み、

 視界が真っ白に染まり、意識が遠のいた。


 再起動音が、耳の奥に響いた気がした。


 目を覚ますと、見慣れない天井があった。

 木造の屋根。湿った土の匂い。どこか懐かしい手作りの部屋。


「ん?」


 体を起こすと、視界に入ったのは古びた机と本棚。

 そして壁に掛けられた、不思議な金属の板。

 見たことのない文字列が、表面にうっすらと浮かんでいる。


『Emigre Document - Module 01』


 エミグレ文書。


 その文字を読めた瞬間、頭の奥に光が走った。

 無数の文字列、数式、構文。

 まるでコードが脳内に直接流れ込んでくるような感覚だった。


「これっっ魔法の仕様書か?」


 胸の奥で、長年封じ込めていた好奇心が動き出す。


 部屋の扉が開き、年配の男が顔を出した。

 質素な服装。農民か、もしくは下級役人のような風貌だ。


「おお、目が覚めたか。熱はもう下がったようだな。名前は覚えておるか?」


「レン。レン・アークライトです」


 口が自然にそう答えていた。

 どうやら、転生というやつらしい。こうゆうマンガあったな。。


 話を聞けば、この世界では「魔法と科学」が同居しているという。

 ただし、古代の魔導技術はすでに失われ、今はその断片を真似ることしかできない。

 人々は呪文を暗記して使うが、その構造や理屈は誰にも理解されていなかった。


「完全にブラックボックス化してるってわけか」


 つい、前世の言葉が口をつく。老人は不思議そうに首をかしげた。


 数日後。

 村の外れで、レンは一人実験を始めた。

 試しに、村人から借りた古い杖を地面に突き立てる。


「《ファイア》」


 杖の先に、小さな火が灯る。

 これがこの世界の“魔法”。

 だが、レンにはその裏側が見えていた。

 炎を生成する「式」と、「マナ」の消費ルール。

 まるで、単純なスクリプトのように。


「つまり、この呪文は変数を呼び出してるだけだな。

 なら、マクロ化すれば再利用できるはず」


 彼は地面に指を走らせ、思い浮かぶままに式を書き換える。


 if (mana >= 10) { Fire(); Fire(); }


 瞬間、杖が震えた。

 ドンッドンッ、と音を立てて炎が二連発で弾ける。


「やった!」


 成功。

 コードの最適化に似た快感が、全身を駆け抜ける。

 この世界の魔法は、まさに“構文”だ。

 条件分岐も、ループも、エラーも存在する。


 レンは笑った。

 五年間、会社で叩き込まれた知識が、いま異世界で動いている。

 彼の脳裏に浮かんだ言葉は、たったひとつ。


「魔法システム、再起動完了」


 その夜、村の上空に一瞬だけ、古代語の光文字が浮かんだ。

 それを見た老学者たちは口々に言ったという。


 「エミグレ文書が、動き出した」 と。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

次回、第2話ではレンが初めて魔法コードの暴走と向き合います。

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