適当な社員
こちらは『数を減らしておいて』で本来使おうとしていた内容となります。
書いている際に別のオチにしてしまいましたが、勿体ないのでこちらに流用いたしました。
話の内容が非常に似通っていますが、もしよろしければ合わせて読んでいただけると嬉しいです。
どこの世界にも適当な社員というのは居るものだ。
「ちょっといいかな」
「あい。なんでしょ」
「この数字を見てくれるかい?」
上司に呼ばれた部下は面倒くさそうな調子で歩いて来る。
その様を見て上司は眉を顰めたが人手不足の現状では我慢するしかない。
「ほら、この数字。明らかに間違っているだろう?」
「あー、そうっすね」
「そうっすねって……君の担当だろう?」
「ああーはい。すみません」
上司は一度深呼吸をして心を落ち着け部下に言った。
「この数字のままだとまずいんだ。今すぐに調整してくれ」
「あぃ。分かりました」
気だるそうな顔をして歩き去る部下の背中に上司は言った。
「しっかり頼むよ。本当に。下手すればこの会社が滅びかねないから!」
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「あー、めんどくせ」
そう呟きながら部下は数字を見る。
本来であれば10億に抑えなければならない数字が80億以上になっている。
これでは注意を受けるのも当然だ。
部下は欠伸をしながら数字を10億にした。
「はい。おしごとおわり~」
伸びをして部下は気だるげに息を吐く。
確かに彼は数字を適正な値に戻した。
しかし、中身の確認を全くしていない。
これでは基準値に満たない物が大量にあった際に大問題に繋がるのだが……部下は気にした様子もない。
そんな彼の足元に上司が丁寧に作成したマニュアルが虚しく転がっていた。
『【要注意】 人間は特に個体差が激しく数の増減は勿論のこと中身の質には十分に注意すること! 過去には一人の人間が基準値を超えた悪意を持っていたために地球が無茶苦茶になったこともあります!!【要注意】』
今回のことで上司である神様の堪忍袋の緒が切れることを彼はまだ知らない。