結婚の約束をした幼馴染VS男だと思われてた幼馴染VSずっと尽くしてきた幼馴染。レディ、ファイ!!
――ここに集うは三人の幼馴染。
一人は、「おおきくなったら、けっこんしようね!」と、将来を誓い合った約束系幼馴染。
一人は、「え、お前、女だったの!?」と、男勝りな言動で少年たちと遊び歩いたボーイッシュ幼馴染。
一人は、「もう、私がついてなきゃ、だめなんだから!」と、いつも一緒の夫婦系幼馴染。
今、ここに三人の幼馴染による一人の男を巡った血で血を洗う大戦争が巻き起こる。
「——それじゃあ、誰が浩介と付き合うのか会議を開始したいと思います」
そう言って話し始めたのは、夫婦系幼馴染。
少しばかりピリッとした緊張感が場を支配する中、一人の少女が手を挙げる。
「はいはーい!浩介と結婚する約束をした私が浩介のお嫁さんに一番ふさわしいと思いまーす!」
そう言って立ち上がったのは約束系幼馴染。
そんな約束系幼馴染を睨むように夫婦系幼馴染は言う。
「あんたは小さい頃に約束しただけでしょ!私はいつも浩介と一緒にいるの!だったら結婚するのは私じゃない?」
夫婦系幼馴染がそう言うと、ボーイッシュ幼馴染が反論してくる。
「いや、私と浩介は小さい頃虫取りやゲームでたくさん遊んだからね。趣味の一致は大事じゃないかい?私こそ浩介のお嫁さんにふさわしいと思うよ?」
「「「……ぐぬぬ……!!」」」
三人の幼馴染は互いに一歩も譲らず、睨み合う。
そんな中、夫婦系幼馴染はコホンと一つ、咳ばらいをする。
「私はね、浩介と一緒に学校に行っているの。毎日よ、毎日。これはもう、付き合っているって言ってもいいんじゃない!?」
夫婦系幼馴染がそう言うと、ボーイッシュ幼馴染が言う。
「私は、浩介と部屋で二人っきり、一緒に遊んだこともあるんだよ?これはもう、同棲カップルといっても過言じゃないね」
ボーイッシュ幼馴染がそう言うと、約束系幼馴染が鋭い一撃を加える。
「私はね、浩介と一緒にお風呂に入った事だってあるんだよ?それだったら、私はもう結婚してるっていってもよくない?」
三人は三人互いに譲らずデッドヒートは加速していくばかり。
「私なんて、毎日浩介にお弁当作ってるんだから!」
「私だって、浩介と毎日遊んでるよ?」
ボ「私は、毎日浩介に抱き着いてるよ?」
「「はぁ?」」
約「私は、浩介と夫婦ごっこをして遊んでる」
「「はい??」」
夫「私はお義母さんに弟子入りして、料理勉強してるもん」
「「え??」」
誰がどの発言をしているのか、三人が思い思いに言い合って、訳も分からなくなってくる頃。
ガチャっと扉の開く音がした。
三人が音のする方へと顔を向けると、そこには渦中の人物が。
「「「浩介!!!」」」
「騒がしいから来てみたら、三人ともどうしたの?」
「「「だってこの人が!!」」」
そう言って三人はお互いを指差す。
そんな三人の様子を見て、浩介はため息をついた。
「みんな、そんなことで喧嘩してたの??」
浩介は「心配ないよ、だって……」と言いながら指をパチンと鳴らす。
すると、浩介が三人に増える。
「「「僕は三人いるんだからね」」」
「「「浩介!!!」」」
三人は浩介に駆け寄った。
それぞれの浩介は三人の肩をとって、彼女たちを揺らす。
「「「よし、これで解決だね」」」
『……なさい』
「「「やったーーー!!!!」」」
『……きなさい』
六人が幸せに浸る中、どこかからか声が聞こえる。
『起きなさい!!学校遅刻するよ!!!』
「はっ」
目が覚める。目の前には紗奈の母親がいた。
紗奈はぼんやりと母親を見る。
「……?」
「なーに寝ぼけてるの?さっさと朝ごはん食べなさい。学校遅刻するわよ」
「……はーい」
紗奈はベッドから出ると、朝ごはんを食べ、歯を磨く。
そこでハッと気づく。
「あれ、全部私じゃん」
小さい頃に結婚の約束をしたのも紗奈。小学生の頃、男勝りな性格で男子と混ざって遊んでいたのも紗奈。中学生の頃、世話焼きでよく絡んでいたのも紗奈。
「あれ、自分同士で争ってたのか……」
わかると凄く虚しくなる。
そして、「そうだ、今日は!」とハッとする。
紗奈は急いで身支度を整え、髪の毛を確認する。
そして、どこにも問題がないことを確認すると、「行ってきまーす!」と家を飛び出した。
しばらく走っていくと、青年が一人電柱のそばでソワソワとしていた。
紗奈はその青年に駆け寄ると、「ごめん、待った?」と声をかける。
青年は、「ううん。さっき着いた所」と首を横に振る。
「そっか。じゃあ、行こっか!」
——今日から紗奈は高校生。
恋人の浩介と一緒に、桜色の学生生活を始めていくのだ。
6時間後の紗奈「やめなさいよ、自分どうしのあらそいはみにくいものだよ」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
あなたの読書人生に良い本との出会いがありますように!