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第11話 私の15年

  2010年7月、夏休み3日目。


 喫茶店のお客さんが一斉にこちらを見る。


 しかし、それでも構わないと言った感じで、目の前で彩愛が顔を真っ赤にして、「15年も好きだったんだもん!」と叫んだ。


 俺の思考が止まった。


 突然のキスとその言葉が響いて、視界が歪む。


「彩愛も…まさか未来から?」とやっと絞り出した声に、私が目を丸くして、「え?」と呟く。


「もって…どういうこと?」と小さく頷く。


「俺も未来から来たんだ…。2025年から」

「嘘…」


 お互いに見つめ合いながらも、頭の中ではパニックになっていて、一旦冷静になるため、ここから少し離れた喫茶店に行くことにした。


 そうして、道すがら改めて考える。


 確かに全く接点がなかった1年の時点でこんなに距離が近い時点でおかしかったのだ。


 美緒との距離をとったことで生まれたズレのようなものだと思っていたが、どうやら違うようだ。


 そして、無言のまま2人で喫茶店に入り、最初に発した言葉は重なった。


「「まるで小説の話みたい」だね」


 すると、思わず2人で笑い合う。


 そのまま彼女は目を伏せて、「私、九条くんのこと、高校2年の時から好きだった」と話し始めた。



 ◇ 2011年の春


 2年で初めて九条くんとクラスが一緒になった。


 教室で本を読んでる彼をいつも遠くから見てた。


 物静かで、優しそうな顔してて…初めて見た時、心臓がドキッてした。


 初めて一目惚れをして、でも、話しかける勇気なんてなくて、ただ眺めてるだけだった。


 そんなある日、授業でペア課題があって、席の関係で彼と組むことになった。


 多分私と同じで発表とか、人前で何かするのが得意ではないはずなのに、「発表は俺がやるから」と言ってくれた。

その優しさにまたキュンってなった。


 他にも文化祭の準備で、飾り付けの紙を落とした時、彼が拾って「大丈夫?」って声かけてくれた。


 それだけで心が止まったみたいになった。

完全に好きになっちゃったったんだって分かった。


 でも、彼が美緒ちゃんと仲良くしてるの見てたから、『幼馴染の彼女がいたんだ』って思ってた。

だって、彼が幼馴染のあの子と話す時、多分私と同じ顔をしていたから。


 廊下で2人が笑ってるの見て、私に入る混む隙間なんてないんだって思った…。


 いや、今のは少しだけ強がった。

本当は少し安心していた。

告白できない理由を探して、安心しちゃっていた。


 しかし、とある転校生がやってきてから全てが変わった。


 イケメンですぐに人気者になった彼と幼馴染のあの子が付き合うまで、さほど時間はかからなかった。


 その時、付き合っていなかったんだって気づいた。


 それからは少しだけ話す関係になった。


 隣の席になってわざと教科書を見せてもらって話すきっかけを作って、些細な話をするようになって、帰りに「じゃあね」って手を振ってくれるよつになって、その時間が宝物だった。


 けど、私のことが目に入っていないのはわかっていた。

彼女のことを遠くから見ていたその目は本当に優しくて、見ているのが辛くなるほど悲しい目だった。


 だから、一度だけ告白しようとしたこともあった。


 3年のバレンタイン、チョコ作って学校に持ってきた。


 でも、彼が美緒ちゃんと楽しそうに廊下で話してるの見て、渡せずゴミ箱に捨てた。

勇気出せなかった。


 そうして、結局私の恋は告白することも叶わず終わった。



 ◇大学入学後


 大学入っても、九条くんのこと忘れられなかった。


 友達に誘われて合コンっていうものにも何度か行ったけど、誰とも話が弾まなかった。


 みんな優しい人だったけど、彼と比べちゃうと全然ダメだった。


 バイト先で先輩に告白された時も、「ごめんなさい、好きな人がいるから」って断った。


 その好きな人って、ずっと九条くんだった。結局、彼氏ができないまま、本と勉強に没頭して、大学を卒業した。



 ◇2025年


 30歳になった私は図書館で司書してた。

毎日、本に囲まれて…でも、心のどこかで九条くんのこと考えてた。


 そんなある日、SNSで高校の同窓会の通知来た。


 行こうか迷ったけど、彼に会えるかもって思って、勇気出して行った。


 しかし、彼が来ることはなかった。

その代わりに美緒ちゃんは来ていて、あの人と結婚して、子供まで産まれるなんて話を聞いて、すごいなって感心したのと同時に、彼の気持ちを考えるだけで胸が張り裂けそうになった。


 それから数ヶ月後、九条くんが事故で亡くなったというニュースを見た。


「交通事故で…」というアナウンサーの声を聞いて、頭が真っ白になった。


 信じられなくて、アパートで泣き崩れた。


 1人、彼のこと思い出しながら、「好きだって言えば良かった」って何度も呟いた。


 あの時、告白してたら…彼の心の支えでも、ううん、吐口でもいいから、一緒にいてあげられたらって、後悔しかなかった。

それから毎晩、枕濡らしてた。


 いつかもし過去に戻れたらって、毎日思うようになった。


 そうしたてたら、目覚めたら2010年の春だった。


 高校1年の自分に戻ってた私は、『今度こそ九条くんに近づこう』って決めた。


 だから、1年じゃ接点なかったはずなのに、自分からアタックしたんだ。

未来を変えたかったから。



 ◇現在


 少しの沈黙が流れる。


「…だから…昨日、美緒ちゃんと何かあったって聞いて…怖くなった」と続ける。

「頑張って距離を縮めて…なのに私、また何も言えずに終わるって思って…我慢できなくてキスしちゃった。ごめんね」と、彩愛の顔が赤くなる。


「15年、ずっと好きだったんだもん。やっと会えたのに…」と涙がこぼれてから、「ごめんね。私、急に押し付けすぎたよね」と苦笑する。


「話してくれてありがとう…。すごく嬉しかった。実は…俺さ…事故に遭うあの日に美緒に告白したんだ。美緒の旦那さんが浮気してるところをたまたま見かけて、それを美緒に見せて…その時に勢いで告白して、気持ち悪いって言われちゃってさ。言葉の意味が理解できなくて、家を飛び出して、そのまま車に轢かれて死んだ。あれは…事故っていうか自殺みたいなものだよ。けど、その時に決めたんだ。もう美緒のことは諦めるって。だから、この世界に来て、美緒もまさか未来から来てるなんて思わなくて…」

「え?美緒ちゃんも?」

「うん…」


 その事実を聞いて、拳を握りしめる彩愛。


「けど、いいんだ。それはもう納得したことだから。だから…このやり直しでは違う恋をしたいってそう思ってた。正直にいうと、彩愛がアタックしてくれてすごく嬉しくて、その…いつの間にか好きになってた」


 その瞬間、彼女の目が大きくなっていく。


「…嘘」

「本当…。美緒から好きだって言われて…もし、彩愛のことが好きじゃなかったら、もしかしたら揺らいでいたかもしれない。けど、彩愛が居たから…迷わなかった。好きです…。俺なんかでよかったら…付き合ってください」


 目を見てはっきりとそう言った。


 彩愛は突然あたふたとしはじめて、「え?え?え?え?//」と混乱しているようだった。


「答えは焦らないから「ち、違う!!…の…。私もす、好き…。つ、付き合いたい…です…//」と、そう言ってくれた。


 お互いに少しの沈黙の後、自然と目があって笑い合う。


「…で、でも…わ、私…結構重いよ…?」

「俺だっておんなじくらい重いと思うよ。好きになったらトコトン重くなると思う」

「ほ、本当に…?と、とりあえず!…ふ、2人きりで話したい…//」と、隣の席の人に声が聞こえていたのか、優しい目で見られているのが逆にキツく感じる。


 そのまま、2人で急いでお店を出た。


「2人きりっていうと…カラオケとか?」

「う、うん…。個室がいい//」と、そう言われた。


 そして、俺たちはカラオケに向かうのであった。

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