勝手に彼女を募集された件③
「今時はどんな方法でもあるのよ」
今時って……。 俺も今時の若者のはずなんだけどな……。
「だから、内緒よ」
ふふっと笑いながら内緒だという祖母につられて他の三人も笑っている。
「俺のことなのに内緒って」
「不服そうだねー。 大丈夫だよー。 和佳子さんは変な方法で私達を集めたわけじゃないから」
和佳子さんというのは俺の祖母の名前である。
「だから、まずは自己紹介しようか。 私の名前は日野晴陽。 君と一緒の大学に通ってるよ」
「えっ! そうなの?」
「まあ、学部が違うからね」
こんなに可愛いかったら有名になりそうなのに。
「次は私ね」
次に自己紹介してくれるのは俺を睨みつけていた彼女だ。 今も相変わらず睨んでくる。
どうして、俺の彼女に立候補してきたのか不思議だ。
「私は相川雨希よ。 近くの女子大に通ってるわ」
「よっ、よろしく」
「それよりも、名前を聞いてピンとこないの?」
「名前……?」
名前……名前ね……。
「あっ!」
「ふふっ。 やっとわかったようね」
どこか勝ち誇った顔をしている雨希に俺は自信満々で答えた。
「皆んなの名前に天気が入っている所でしょ!」
絶対にそうだ。 こんな偶然なかなかないし。
「………………」
俺の答えを聞いた雨希はふるふると震え出す。
そして、俺を睨みつけてきた。
「違うわよ! 他にあるでしょ!」
「えっ? 違うの」
嘘でしょ。 他の何かがあるの?
「…………えっと……画数が同じ?」
「違うわよ」
「誕生日が一緒?」
「違うわよ」
「えっと…………」
「……弟よ」
「弟?」
彼女の弟。 えっと……俺の知り合いにいるってこと……。
俺は頭をフル回転させて急いで考えた。 決して睨む彼女が怖かったわけではない。
そして、ある一人を思い出した。
「相川雨流」
「そうよ! ようやく思い出したわけ?」
確かに彼女の顔を見ると彼と似ている。 最も弟の方は彼女のように睨んだりしない。 むしろ、いつも気怠にゆっくりとしている感じだ。
「えっと……」
「あんたが弟を誑かしたんでしょ!」
唐突に言われた言葉に正直、困惑を隠すことができない。
「誑かすって……相川……えっと……雨流くんは俺がそんなことしなくてもイケメンだし……通用しないんじゃないでしょうか?」
「私の弟はイケメンなのは当たり前だし! それでも! 家に帰ればいっつもあんたの話ばっかりなのよ!」
「ははは……」
相川。 俺の話してんだ……ちょっと嬉しい。
「だから、どんなイケメンか見にきたら…………」
「見にきたら?」
「みっ見にきたら…………」
彼女は言葉に詰まっていた。
俺は雨希がちらちらと横目で何かを見ていることに気づいてどこを見ているのかその視線を追うと、そこには祖母が雨希の事を期待したような目で見ていた。
あっ……。
俺は察した。 そりゃあ、孫のことを祖母の前で貶すことはできないことに。
「みっ、見にきたら……イケメンって……いっ、言うよりも……かっ、可愛い系だったわ……」
この子。 こんなに俺のことを睨んでいるけど、本当はいい子なのでは?