勝手に彼女を募集された件②
ケーキを食べ終わると、改めて俺の正面の席におばあちゃん、それから三人の彼女達が座った。
やっと、彼女達は一体誰なのか説明してくれるようだ。
「おばあちゃん、やっと説明してくれるんだね」
「あらあら、やっとって……元々説明するつもりだったわよ」
おほほと笑いながらそう言っているが、俺が聞こうとしたら、はぐらかしていたじゃないか。
「それで、彼女達は誰なの?」
「誰だと思う?」
まさかの質問返し。
それを聞いてくすくす笑っている彼女の達。
もしかして、俺が忘れているだけの知り合いだった? それだと俺、すごい失礼だよね。
「もしかして……昔、遊んだことがあるとか?」
こういう時、漫画では大体主人公が忘れてしまっている幼馴染だったりする。
「ないわよ。 あんたとは初対面」
即座に否定された。 否定したのは俺を睨んでいた彼女だ。
「えー。 そんなにすぐに否定したら面白くないでしょ」
さっきまで俺の隣に座っていた彼女はそう言ってくすくす笑っている。
「まあまあ、二人共。 彼、困惑してるよ」
さっきまでケーキを美味しそうに食べていた彼女はニコニコしながら俺を見ている。
「じゃっじゃあ、確認だけど俺とは初対面で合ってるよね」
「「「勿論」」」」
声を揃えて即答。 幼馴染説というのは漫画の中だけの特権だったようだ。 ……知ってた。 知ってたけど、ちょっと期待しちゃったよ……。
じゃあ、何でそんなにおばあちゃんと仲いいの?
「えっと……おばあちゃん。 彼女達って……」
誰って聞こうとしたら先におばあちゃんが答えた。
「貴方の彼女候補達よ」
「はっ……?」
えっ? 空耳? まさか、そんなまさか……だよね?
「あら、聞こえなかった?」
コクコクと何度もうなづく。
「じゃあ、改めて。 彼女達は貴方の彼女候補達よ」
そう言ってにっこりと微笑む祖母。
空耳ではなかった。
「……は? はあああああーーーー!?」
えっ? 何でそんな話になってるの? 本人初耳なんですけど。
「何? あんた。 不満なわけ?」
さっきよりもさらに睨まれる。
「いや……べっ別に不満とかでは……っというよりも驚きの方が優ってるんだけど」
だって、俺の彼女候補とかいうんだよ? 彼女って家族の推薦で決まるわけ? えっ? いや、ないよな。 ……うん、そんなことあるはずないわ。
「じゃあ、いいんだね。 私達が彼女候補で」
「いや、いいって……そもそも、どうしてそんな話になってるの⁈ 」
おばあちゃんを見るとスッとスマホを俺の目の前に出される。
それを見ると、誰かとメッセージアプリでやり取りをしている画面だった。
「これがどうしたの? というよりもおばあちゃん、メッセージアプリすごい使いこなせてるね。 これなんてすっごい絵文字いっぱいだし……」
「ちゃんと読んでちょうだい」
そう言われてトーク画面をスクロールしながら読んでいく。
「おばあちゃん。 まさかと思うけど、このやり取りで俺の彼女作りたいとか思わないよね? そんなまさかね……」
「ふふ」
にっこり笑って誤魔化しているが、まさかまさかの本当だった。
トーク画面のやり取りには、おばあちゃんの仲の良いお友達と孫の話で盛り上がっており、お友達の方のお孫さんには彼女ができて一緒に孫とその彼女とお出かけしたりお茶をした話をメッセージアプリに書いていた。
「だって、羨ましいじゃない?」
「羨ましいじゃない? って……。 他所は他所。 内は内でしょうが」
「それで、おばあちゃん。 考えたのよ。 貴方に彼女ができれば解決だなって」
「いや、解決だなって。 全然解決じゃないよね。 本人の知らないところで話進もうとしてるよね? というか、人の話聞いて」
「だから、募集をかけてみたの」
「募集⁈」
待って。 えっ、募集? 俺の彼女になる人募集したの?
「集まってくれたのが彼女達よ」
「あっ……そうなの……」
こちらにひらひらと手を振ってくれる。 それに手を振り返しながら頭を抱えそうになった。
「おばあちゃん……ちなみにさ、どんなふうに募集かけたのか教えて欲しいんだけど……」
知りたい。 どうやって、俺の彼女を募集したのか。 だって、正直こんなに可愛い子達が集まるなんて思わないじゃん。 俺の彼女候補として来てくれただなんて……。