表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

えっ……デート?②

 土曜日の朝。 

 雲母と駅前に十時に待ち合わせをしており、現在九時四十五分。


 雲母からは一緒に家を出ましょうよ、と言われたが、二人で出かけるとなると変に怪しまれると嫌なので、俺が先に家から出てきた。


 格好はいつもと同じような服装だ。

 だって、今日はデート服を買いに来たのだ。 だから、いつもと同じなのだが…………今日、どう見てもデートじゃない?


 何でデートする相手とデート服を買いに行くことになってるの? いやまあ、俺が持ってないからだけど……。


「でも、今日はどう見たってデートだよね……」


 本番は明日なのだが……。


 そんなことを思っていると、肩をトントンと叩かれた。


「ん?」


 後ろを振り返ると、ほっぺを人差し指でツンッと軽く押された。


「えっ?」


「ふふっ。 引っかかりましたね」


 俺から手を離してにっこりと微笑んだ。

 そこに立っていたのは俺が待っていた相手。 雲母だった。


「空太さん。 お待たせしました」


「いや、そこまで待ってない……」


 雲母を見ると、可愛らしいワンピースに緩く巻かれた髪。 それにほんのりと色づいた唇。 どこを見ても可愛くオシャレをしている。


 可愛い。 どこを見ても可愛い。


「ふふふ。 何だか、彼氏彼女、みたいな会話ですね」


「ええっ⁈ 彼氏彼女⁈」


「まあ、違うんですけどね」


「あはは……はは……だよね……」


 雲母の期待させるようなセリフに一瞬ドキッとさせられた。


「じゃあ、空太さんの服を買いに行きましょうか?」


「そうだね……」


 とりあえず、近くのショッピングモールに行くことに決めて二人並んで歩き始めた。


「空太さんに似合う服、頑張って選びますね」


「うん……ありがとう。 俺、自分で選ぶと同じような服を選んじゃうから雲母に任せるよ。 頑張って」


「はい! 任せてくださいね」


 ……やっぱりこれって、どう見ても周りからはデートしているみたいに見えないかな?


「……あのさ、雲母」


 歩いていた脚を止めた。


「何でしょう?」


 雲母も歩みを止めて、首を傾げて少し斜めしたから俺を上目遣いで見る雲母。


 可愛い。


「んんっ……」


 いかん。 また、チョロ太になりそうになった。


「大丈夫ですか?」


「だっ大丈夫。 そっ、それよりも! 今日って……その……あの……」


「はい……?」


「……デートみたいじゃないかな?」


 言った! 言えた! 


「本番は明日ですよ?」


 首を傾げてそういう雲母。 その目は今日は決してデートではないと言っている。


 そうなんだけどね。 確かにそうなんだけれども……。


「そっ、そうだね……。 あはは……はは……はぁ……」


「大丈夫ですか?」


「うん……大丈夫、大丈夫」


「変な空太さん。 でも、今日は空太さんと出かけられて嬉しいです」


 ニコッと笑う雲母はルンルンとしながら前に歩いて行く。


「ほら、空太さん! 置いて行きますよ」


「……あっ、ちょっと待って」


 雲母を追いかけて俺も歩き出した。


 笑った雲母の笑顔にドキッとしたことは内緒だ。 本当にチョロ太に改名した方がいいかもしれない。


「空太さん、楽しいですね」


「うん、そうだね」


「ふふふっ……ふん……ふふふ」


 小さな声で鼻歌を歌っている雲母。

 その様子から今日のお出かけが本当に楽しいのだとわかった。


「まあ、いいか。 デートじゃなくても雲母、楽しそうだし」


「空太さん、何か言いました?」


「ううん。 何も言ってないよ。 俺も楽しいなぁって」


 俺たちは知らなかった。

 まさか、この二人で出かけていることを知っている人物がいるとは……。


「どうして、空ちゃんと雲母がデートしてるの?」


「知らないわよ! 空太のくせしてデートなんてずうずうしいわ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ