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相川姉弟③

「……で、結局()()()何をしてたの? 知り合いだったなんて俺、知らなかったんだけど……」


 結局、『人違いです』という嘘は通用しなかった。 まあ、通用する筈がない。


「雨流くん〜。 久しぶりの雨流くんだ〜」


 先程、気まずいという雰囲気を出していたはずの雨希はそんなことを忘れて隣に座った雨流の写真をスマホで連写していた。


 そんなに連写して、何か変わる? ただ、それを完全に無視している相川がすごい。


「そっ、そっちこそ。 大学サボって何をしてたんだよ?」


 何か……何だろう。 相川とのこの会話。 浮気を疑う恋人同士の会話のようだと思ったのは俺だけだろうか?


「そうだよ! 雨流くん! 今日、大学休んで何をしてたの?」


 雨希も俺の後に続いて雨流を問いただした。


「用事だよ。 用事」


 少し、面倒くさそうに答える雨流。


「用事って何? 私、聞いてないんだけど」


「用事があっても、雨希には関係ないだろ」


 そりゃそうだ。 


「関係ないって……そんな言い方しなくてもいいじゃないのよ! 連絡もくれないから心配してるのに!」


 雨希は怒っているのか悲しんでいるのかどちらなのかよくわからない。 


「はあーー。 バイト。 今日、誰も入る人がいなかったから、俺が代わりに入った。 それだけ」


 雨流は面倒くさそうに応えた。


「ああ、バイトね。 じゃあ、さっき一緒にいた彼女もバイトの人?」


「彼女? 雨流くん、彼女いるの⁈」


 あっ……しまった。 さっきの彼女のことを話に出すべきじゃなかった。

 案の定、雨希が驚いてすぐさま不機嫌になった。


「私、聞いてないんだけど」


 彼女だとしても姉に必ず言わなければいけないわけでもないと思う。


 チラッと雨流の方を見た。


 聞くつもりはなかったが口からポロッと出てしまった。 相川がどんな顔をしているのか正直気になってしまった。


「ああ、さっき一緒にいた人のこと?」


「えっ⁈ どういうことなのよ! やっぱり彼女なの⁈」


「彼女じゃない」


 相川はキッパリと否定した。


 でも、俺から見れば彼女の方は相川に気があった筈だ。 遠くからだったが、恋する乙女のように見えたからだ。

 まあ、実際のところはわからないが。


「本当に彼女じゃないの?」


 雨希はすごい疑っているが、それに対して雨流は軽く流していた。


「違うって……。 あの人、バイトが一緒の人なんだけど、猫を飼ってるって言ってたから、その話を聞いてただけ」


「ヘえ。 相川、猫好きだったっけ?」


 初耳である。 彼からそんな話を聞いたことがなかった。


「そう、最近飼い始めたから」


「そうなんだ」


 相川は家にいる猫を思い出しているのか優しい顔をしている。

 一方、雨希の方は初耳という顔をしている。


「えっ? 猫?」


「名前は?」


 俺は雨希を無視して話を進める。


「…………ソラ」


「ソラ?」


 俺の名前に似ているのは気のせい?


「……マメ」


「ああ、ソラマメ」


「ちょっと、私のこと無視しないでよ!」


 俺たちが話を進めていると、痺れを切らした雨希が怒り始めた。


「雨希には関係ないじゃん。 家を出てるし」


「雨流くんのことは私にも関係あるし……」


「えっ? 家を出た?」


 確かに、今は昨日から俺の家にいる。 ただ少しの間、泊まりに来ているだけじゃないのか?


「とっくの前に家を出てシェアハウスしてるよ。 雨希は」


「えっ? えっ?」


「なっ、何よ」


 雨希は俺の顔を見てバツが悪そうな顔をしている。


「まあ、家を出たわりに結構な頻度で帰ってくるけど」


「雨希……」


「べっ、別に私の家でもあるんだからいいじゃない!」


 それよりも、雨希は家を出てシェアハウスしてるんだ。


「でも、今は……そら」


「あーー!」


「なっ、何よ!」


 雨希は何を言おうとしていた? もしかして、今は俺の家にいることを言おうとしているのか⁈

 待って、ちょっと待って。 それをいうには雨希が俺の彼女候補になったことを一緒に伝えないといけなくなるんじゃないか?


「ところで、ずっと気になってたんだけど……あんたらさ、どんな関係なわけ?」


「「えっ?」」


 雨流の突然の質問に思わず固まってしまった俺と雨希。

 しかし、雨流が聞きたいのは当たり前だ。 自分抜きで姉と自分の友達が知り合いだったなんて気にならない筈がない。


「えっと……」


「何? 言えない関係なわけ?」


 俺が言い淀んでいると、雨流は何を想像したのか声が低く、どこか怒っているというよりも拗ねているように見える。


「言えない関係では……ないんだけど……言いにくいっていうか……」


 そう、別にまだそういう関係にはなっていない。 彼女候補になったっていうだけで……。


 というか、すぐに否定してきそうな雨希は黙ったままである。

 不思議に思って彼女の方を見ると、目が泳いでいた。 いざ、雨流に聞かれるとなんて応えていいかわからないという顔をしている。


「じゃあ、どんな関係なわけ?」


「えっと……」


 言っていいの? でも、言った後にどんな風に見られるのかと考えると……言っていいものだろうか?


 チラッと雨希の方を見ると、何かを決意したような顔をしていた。


 えっ? ちょっと待って。 雨希は何を言おうとしている?


「雨流くん……。 私、実は今……空太と一緒に住んでいるの!」


 あーー。 言った。 言っちゃったよ。 

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