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勝手に彼女を募集された件

 大学が終わり、そのままどこにも寄らずに帰宅した俺が見たものは誰かわからない美少女三人が祖母と一緒に自撮りしているものだった。


「えっ、誰?」


 俺は大学から近い祖母の家で二人で暮らしている。 一人ぐらしの祖母を心配した両親の勧めだ。。

 俺も、一人暮らしだと何かと心配だったので二つ返事でOKした。


 ーーが、現在。 帰ったら知らない三人の彼女達と祖母は楽しそうに自撮りしていた。


「あっ、おかえりー」


 祖母が、俺に手を振っている。 それに対して振り返した。


「おかえりー」


 三人のうちの一人も俺に手を振っていた。


 本当に誰? 俺と同じぐらいの歳に見える。


「お帰りなさい」

「ふんっ」


 残りの二人も俺と同じ歳に見えるが、一人は笑っているがもう一人は俺を睨んでいる。


 えっ? 俺、何かした?


「えっと……おばあちゃん、何してるの?」


「映え写真を撮っているの」


 まさかの答え。


「へっ、へえー」


「皆んな、とってもお上手なのよー」


「へえー。 で、あのさ……」


「あっ、そうそう。 ケーキがあるんだけど、食べる?」


「あっ、食べる。 じゃなくて、おばあちゃん……」


「何のケーキがいいかしら? おばあちゃんのおすすめは……」


 彼女達が誰か全く聞けない。 というか、その質問を受け付けない圧を感じる。


「いちご大好きよね? おすすめはいちごのタルトよー」


「あっ、美味しそう。 って、そうじゃなくて……」


「あら、いちご嫌いだったかしら?」


「いや、めっちゃ好きですけど。 むしろ一番好きな果物だよ」


「なら、いちごタルトでいいわね」


 そう言いながら、ケーキ屋のロゴが入った箱からいちごのタルトを取り出してお皿に乗せてくれる。


 あっ、美味しそう。 


 ツヤツヤしたいちご。 それをタルトにするなんて天才かよ……ってそうじゃなかった。


「おばあちゃん」


「あっ、フォークを忘れていたわね。 はい、どうぞ」


「あっ、ありがとう」


「どういたしまして」


 俺はいちごタルトを一口食べた。


「美味しい。 えっ、これすごく美味しい」


 いちごの良さを引き立てるサクサクのタルト。 


「…………って、そうじゃない。 俺はいちごタルトと食べるために…………まあ、でもタルトに罪はないし」


 俺はタルトの美味しさに抗えず。 食べてから質問したらいいかと思い、まずは堪能することにした。


 その様子を祖母はニコニコしながら見ていた。


「美味しい?」


「すっごく美味しい!」


「それはよかった! よかった! 並んで買ってきたかいがあったよー」


 そう言いながら隣に座ってきたのは祖母ではなくさっき手を振って彼女だった。


「えっ?」


「それ、美味しいって評判のケーキ屋さんなんだよー」


「どうりで美味しい筈だ」


 俺もそのケーキ屋さんは調べていた。 今度買いに行こうと思っていたから食べれてよかった。


「…………」


「どうしたの? ふふ。 私のタルトも欲しいの?」


 彼女は笑いながら俺の隣で同じタルトを食べ始めていた。


「大丈夫。 俺は自分の食べるから」


 えっ? 本当に誰? それよりも距離近いな。


 俺の隣に座った彼女と俺の距離は近い。

 何で隣に座ったんだろう。 俺はジワジワとその距離の近さに緊張してきた。


 チラッと祖母の方を見ると、その様子を見ていた祖母はなぜかニコニコしていた。


 えっ? 何で? なんか嬉しそうなんだけど?


「ケーキは美味しいかしら?」


「美味しいけど……」


 祖母に聞かれて美味しいと答えるが、聞きたいのは俺の方。

 彼女達のこと説明して欲しい。


「おばあちゃん」


「あらら。 他の二人も呼ばないと」


「あっ、ちょっと……」


 俺が呼ぶとそれを聞こえないふりをして後の二人の元に行き、一緒に食べようと誘っていた。


「ほらほら、二人も一緒に食べましょう?」


 チラッと二人の様子を見ると、一人は相変わらずこちらを睨みつけていたが、もう一人はにっこり笑っていた。


 その様子を見ながら祖母はふふと笑っていた。


 そして、二人は俺の前の席に腰掛けた。


「何、見てるの?」


「えっと……」


「こーら! そんなふうに言わないの」


 俺の隣に座っていた彼女が口ではそう言いながらも苦笑していた。


「ふんっ」


「もう……。 ごめんねー。 悪い子ではないんだけど」


「いえ、大丈夫です」


「君はいい子だねー」


 そう言いながら、俺の頭を撫でた。


 恥ずかしい。 えっ。 これはどう言う対応で大丈夫なの?


「ふふっ。 恥ずかしがってる」


「別に恥ずかしいわけじゃ……」


「照れるな、照れるな」


「照れたわけじゃ……」


 俺たちがそう言うやりとりをしていた時に「ふふ」と笑い声が聞こえてそちらを見ると、幸せそうにケーキを口いっぱいに運んでいた彼女だった。


「ケーキは美味しい! サイコー」


「食べてからしゃべりなさいよ。 ほら、ここついてるわ」


 そう言って口を拭いてあげていたのは驚くことに俺を睨みつけていた彼女だった。 驚きの一面を見た感じだ。


「何見てんのよ」


 見ていたことに気づかれた。


「ごめん……」


「ふんっ」


 俺が素直に謝るとそっぽを向いてしまった。


「本当にごめんね。 本当はいい子なのよ」


 確かに、さっきの一面を見ると面倒見が良い子と言うのはわかる。

 それに、所作も綺麗だ。


 ところで、本当に彼女達は誰ですか?

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