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「お父さんをイジめるのは、やめてください!」
セリーヌは大声でそう叫ぶと、人だかりから前に飛び出した。
その場にいた全員の目がセリーヌに集まると、そこでひと際、上ずった奇妙な声をあげたのは、金色の軍服の男だった。
「おおおお、ハーデル。ハーデルじゃないか」
男は驚愕した表情を浮かべ、フラフラとセリーヌに近づいて来た。セリーヌが思わず後ずさりすると、大声が響いた。
「セリーヌ、逃げろ!今すぐ、ここから逃げるんだ!」
セリーヌが聞いたのは、父親から発せられた、初めての心が入った言葉だった。
お父さん、あんな声、出せるんだ!
セリーヌは、そんなことを思いつつも、反射的に、そこで反転し、人だかりに向けて走り出した。