第四話 『心が進む道』
翌日の日曜日。アキトはずっと彩のことを考えていた。
自分のせいで彩が楽しみにしていた都会での一日が台無しになったのは間違いないので、そのことをちゃんと謝りたかった。
しかし、どうやって謝ればいいのかわからなかった。
下手なことをすると、また彩を傷つけてしまうかもしれない。
透に相談しようかと思ったが、そうする前に前に『彩のことはそっとしておいてくれ』とメールが来た。それがベストなのだろうが、それでもアキトは何かせずにはいられなかった。
しかし、いくら考えても答えは出ない。
そもそも答えが出るような頭があれば、最初からこんなことにはならないだろう。
夕食が済んだ後、アキトはハクアに言った。
「彩にどうやって謝ればいいのかな」
ソファに座って読書をしていたハクアは、本にしおりをはさみ、アキトに言った。
「それはあなたが自分で考えなくちゃいけないことよ。自分で考えなくちゃ意味がないの」
「ずっと考えたよ。でも、どんなに考えてもわからないんだ」
「それでいいのよ。たとえ答えが出なくても、そうやって一生懸命彩ちゃんのことを考えることが大切なんだと私は思うわ」
「そういう、ものなのかな」
「そういうものよ」
アキトはハクアの隣に座り、いつものようにひざ枕をねだる。
「彩ちゃんと仲直りするまでは、おあずけ」
ハクアは膝の上に本を乗せる。
「わかったよ。明日、謝ってくる。うまく言えないかもしれないけど、自分の気持ちを正直に伝えてみる」
「そうしなさい。彩ちゃんは、あなたの心と向きあいたいのだから」
ハクアが優しく微笑んだので、アキトは正しい選択をしたのだと思えた。
夜の十時を過ぎた頃、アキトは『公社』のホームページにアクセスし、今日の分の記憶データを作成して送信した。
昨日送信したデータにはハクアがアキトを平手打ちしたことも記録されているはずなのだが、『公社』からは何も反応がなかった。
こういうことはたまにあるエラーであって、特に注意するほどのものではないのかもしれない。アキトはそう考えた。
作業を終え、パソコンの電源を切り、部屋の明かりを消してベッドに入る。
人間の心もスイッチひとつで切り替えることができればいいのに。
そんな非人間的なことを考えながら目を閉じた時、アキトはふと思った。
ハクアのオリジナルも、ハクアと同じことを言うのだろうか。
アキトはこれまで、ハクアの『キャラクター』のオリジナルについて考えたことは一度もなかった。しかし、都会での出来事が、彼にそのことを考えさせた。
いつか二人で、もう一度都会へ行こう。
その先に何かがあるという予感を抱きながら、アキトは眠りについた。




