第十二話 『虹がかかるまで』
アンドロイドであるハクアの位置はGPSで確認できる。
しかしアキトはそうしなかった。
彼の目的はハクアを見つけることであり、アンドロイドを見つけることではないからだ。
それにアキトには、ハクアがどこにいるのか見当がついていた。
だから彼は豪雨で視界が悪い中、ずぶ濡れになりながらも迷うことなく走ることができた。
山の手の街へ続く坂道を駆け上がり、異国の街並みを抜け、山の斜面に沿ってつくられた細長い石段を上る。
石段を上り終えたところで、社務所の軒下で雨宿りをしているハクアの姿を見つけた。
ハクアはアキトが現れたことに気づき、少しばかり驚いた。
「キト? どうしてここに……。ていうか、びしょ濡れじゃないの」
「平気だよ。それよりよかった。やっぱりここに来てたんだね」
「どうして、私がここへ来たって思ったの?」
「さっき、時間ができたらお参りしようって言ってたから。でも、ハクア。一人で動いちゃだめだよ。ここは僕たちの街とは勝手がちがうみたいだから」
アキトはハクアの隣に立つ。
ほかに人の姿は見当たらなかったので、アキトはシャツを脱ぎ、軽く絞って水気を払った。
「神社のなかで失礼だとは思うけどさ、場合が場合だから神様も許して下さるよね」
「そうね。ねえ、キト」
「なに?」
「神様は、私のお願いでも、聞き入れてくれると思う?」
「もちろん。だって神様なんだから」
少しの沈黙の後、ハクアはアキトに微笑みかける。
「そうね。じゃあキトにはがんばってそのことを証明してもらわないと」
「まだテストのこと言ってるの? ハクアってばいくらなんでも心配しすぎじゃない?」
ハクアは何も言わず、ただ静かに微笑んでいた。
「あー、もう、わかった。わかりましたよ。がんばる、がんばります」
観念したようにアキトは言う。
雨音は少しずつおさまってきた。どうやら、雨上がりが近いらしい。
「そうだ。ハクアが見つかったこと、二人に連絡しとかないと」
アキトは透と彩にメールを送った。
やがて雨音は消え、重苦しい灰色の雲も姿を消そうと動いていた。
もしかしたら、ひさしぶりに虹が見られるかもしれないな。
そんなことを考えながら、アキトは青空が見えるのを待った。
彼の期待にこたえるように、ほどなくして雲の切れ間から青空が姿を見せた。
彩が息を切らしながら彼らの前に現れたのは、それから間もなくのことだった。




