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「母ちゃん!」
相良義昭は走って部屋に入ってきた。
「…義…昭」
相良昭子は涙を瞳にためながら、
息子の名前を呼んだ。
僕は相良義昭に椅子を用意して、
相良昭子のベットの横に座ってもらった。
「母ちゃん…元気してたか?」
「…うん…うん…義昭も立派になって…」
「母ちゃんは…変わらないな」
相良昭子は僕に話した内容を相良義昭に伝えた。
「今まで黙っててごめんよ…母ちゃんはね…バカな女なんだよ…父ちゃんには本当に悪いことをした…」
「…母ちゃん」
「だからね…母ちゃんは幸せになっちゃいけないんだよ」
「それは…それは違うよ!」
相良義昭は相良昭子の手を握って話しはじめた。
「俺…子供の頃だったけど…父ちゃんのこと覚えてるんだ…父ちゃんいつも言ってたよ。母ちゃんは優しい人なんだって…だから、父ちゃんが幸せにするんだって言ってた。そんな父ちゃんがさ…亡くなる前に言ったんだ…母ちゃんを幸せにできたかな?ってさ…だから、俺は言ったよ!幸せにできたって!これから先は俺が幸せにするから心配すんなって!父ちゃん…泣きながらさ…ありがとうって言ったんだよ…」
相良昭子は泣きながら話を聞いていた。
相良義昭も瞳に涙をためている。
「だからさ…母ちゃん。幸せになっちゃいけないなんて言わないでよ。俺に…父ちゃんとの約束…守らせてよ」
僕は話す二人を静かに見つめていた。
僕の隣に立っている橘は一生懸命に涙をこらえていた。
チリン
左腕から鈴の音が聞こえた気がした。
僕はこの音が大好きだったが、
二度と聴きたくないと思うこともある。
突然、隣のベットから音楽が流れた。
どうやら隣の人の携帯から流れているようだ
あれ?サイレントにしてたのにと慌てている。
「あれ?…この音楽って…」
「…父ちゃん」
「母ちゃん…父ちゃんがいつも聞いてた曲だよね」
「…うん…うん」
「父ちゃんは…今でも俺たちを見守ってくれてんだな…」
相良昭子は涙で話すことができず、
うんうんとただ頷いていた。




