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「また訪ねてしまい、申し訳ありません」

「…私は会いませんよ」

「はい。義昭さんにもそうお伝えしました」

「そうですか…」

「義昭さんは、昭子さんが幸せそうだったかと僕に聞かれました」

「…そう…ですか」

「昭子さんは今、幸せですか?」


僕の問いには答えなかった。

ただベットに座り、自分の手を見ている。


「昭子さん…なんで会わないんすか?」

「この間もいいましたが…話したくありません」

「義昭さんのこと嫌いなんすか?」

「嫌いな訳ないじゃないですか!」

「じゃあ、何で会わないんすか!?」


相良昭子は自分の手を見ながら話している。

隣のベットの人は家族の人が来ているのか、

幸せそうに笑っていた。


「義昭さん…言ってましたよ。朝から夜遅くまで働いて自分を育ててくれたって!自分に疲れちゃったから、出ていったんじゃないかって!でも!大好きだから会いたいんすよ!」

「貴方に何がわかるのっ!」

「わかんないっすよ…話してくんなきゃ、わかるもんもわからないっすよ…」

「…私は息子に会う資格がないんです」

「息子に会うために資格なんかいらねーよ!何があったかなんてわかんねーよ!でもさ!会える時に会っとかなきゃ!義昭さんのこと今でも思ってんだろ!大事なんだろ!たしかに、何かあってさ…息子に会いたくないって思ってんのかもしれないけどさ!義昭さんの母ちゃんはあんただけなんだよっ!世界中どこ探したってさ!あんたしかいねーんだよっ!」


僕は橘の肩を叩いた。


「橘…少し冷静になろう」

「リンちゃん…」

「ちょっと頭冷やしてこいよ」

「…悪い」


そう言って部屋を出ていった。


「大変申し訳ありませんでした」


僕は頭を下げた。


「…いえ…あの子は…」

「橘ですか?ちょっと、義昭さんと自分を重ねて見てしまったところがあったと思います。申し訳ありません」

「…いえ、それはいいんですが…あの、もしかして、あの子のお母さんは…もう…」

「…そうですね。橘が子供の頃に亡くなっています」

「そうですか…」


相良昭子は橘が出ていった扉を見つめていた。


「神影さんでしたよね…私の話を聞いてくれますか?」

「僕でよろしければ…」


相良昭子は僕の目を見て、頷いた後に話しはじめた。


「私ね…旦那と出会う前に、お付き合いしてる人がいたの…その人にはね、妻も子供もいて…不倫だったのね」

「…そうですか」

「その人の欲しい物は何でも買ってあげたくて…自分の生活が苦しくなるまで尽くしちゃってたのよ…その時に、旦那と出会ったの…この人と一緒になれば生活には困らないわって思ってね…結婚したのよ…でもね、結婚してからも彼とは会ってたのよ…」


私、ダメな女でしょと相良昭子は笑った。


「きっと、旦那も気付いてたと思います…でもね、旦那はすごく優しい人だった…その時にね、義昭が産まれたの。本当に嬉しくてね…だけど、旦那の子供なのか心配になっちゃってね…」


旦那に隠れてDNA鑑定までしたのよと苦笑した。


「紛れもなく義昭は旦那の息子でホッとしたわ。それからすぐに旦那は亡くなってしまった…亡くなってからね…気付いたのよ…私は旦那のことが好きだったんだなって…それからはね、息子の為だけに生きてきた。彼とも縁を切って、朝から夜遅くまで働いた、義昭の為なら全然大丈夫だったのよ。そんな義昭も大人になってね…働きはじめて…初給料でね…私に花を買ってきてくれたのよ」


旦那に似て、優しい子なのよと幸せそうに笑った。


「でも…その時に思ったの…私は幸せになっていいのかなって。本当なら旦那がこの幸せを感じるべきだったんじゃないかってね…きっと、私が無理をさせたから…旦那は亡くなったんじゃないかって…そう考えたら、旦那に申し訳なくてね…だから、旦那が亡くなったのは私のせいなんです」


だから、私は息子に会う資格がないんです…

相良昭子はそう僕に話した。


「そうだったんですね…」

「はい…私は最低な親なんです」

「そうですか、色々と思うことはあると思います。ですが、息子さんを立派に育て上げたのは紛れもなく貴女ですよね?そして息子さんは貴女の幸せを願っています」

「…はい」

「旦那さんに対して申し訳ないという気持ちもあるのかもしれません。ですが、一度息子さんと会って、しっかりと話し合った方がいいのではないですか?」

「私は…息子に会ってもいいのでしょうか?」

「息子さんは…義昭さんは会いたいと思っていますよ」

「…そう…ですか」


そう話したまま、黙ってしまった、

少しの間考えてから、決心したのか

僕の目を見てこう言った。


「探偵さん…息子に会わせてください」

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