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カラコロカラン
「母ちゃん見つけたって本当ですか!」
相良義昭が入ってきた。
橘は申し訳なさそうな表情で話す。
「その…見つけたっちゃ…見つけたんすけど…」
「…は、はい」
「会いたくないって…言ってんすよね…」
「…そ、そうですか」
相良義昭は力が抜けたのか、
ヨロヨロとソファに近づき腰掛けた。
僕はコーヒーを飲みながら、タバコに火を灯す。
「母ちゃんは…俺に会いたくないんすね」
「いや…でもさ!」
「いや!いいんすよ…会いたいのは俺のわがままなんで」
相良義昭は静かに話しはじめた。
「母ちゃんは父ちゃんが死んでから、一人で俺のこと育ててくれたんすよ。朝から夜遅くまで働いて…だから、きっともう疲れちゃったんすよね…俺が大人になって働くようになったら、いなくなっちゃったから…そりゃ、会いたくないっすよね」
「…でもさ、会いたいっしょ!?」
「そりゃ!会えるなら会いたいっすよ!でも、俺のわがままで…また母ちゃんを苦しませるなら…会わないほうがいいっすよね…」
僕は天井に煙を吐き出しながら聞いていた。
「探偵さん…母ちゃん…幸せそうでした?」
「どうですかね?幸せは人それぞれ違いますので…」
「…そうっすよね」
相良義昭は俯いたまま、話さなくなった。
「義昭さん!俺が絶対に会わせますよ!そんなに会いたいのに!会うことができんのに!会えないっておかしいっしょ!俺が絶対に説得してみせます!」
「…橘さん…すんません」
相良義昭は泣きそうになりながら、
ありがとうございますと橘に言った。
「俺、行ってくる」
「ちょっと待てよ」
「っんだよ!リンちゃん!」
「僕も行くよ。だから、ちょっと待って」
橘はわかったと返事をして、ソファにどかっと座った。
「相良さん。申し訳ありませんが今からお母様とお話しをしてきますので、わかり次第ご連絡しますね」
「すいません…」
お願いしますと頭を下げて、立ち去っていった。
カラコロカラン
「橘…じゃあ、行こっか」
「あぁ」
僕は橘ともう一度、相良昭子に会いに行った。




