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「くそっ!全然、わかんねー!」
「ふふっ、いくら頭のいい探偵さんでも俺のメッセージまではわからないかな?」
タバコの煙を吐き出しながら、
僕は二人のやりとりを見ていた。
「なんなんだよ…この暗号みたいなメッセージは!」
「ふふっ、その顔が見たかったんですよ」
ふふふと笑っている彼に申し訳なく思う。
もういいかな?帰っていいかな?
「俺は…絶対に諦めないっ!」
「さぁ、君にその謎が解けるかな!」
なんか仲良しなの?友達なの?
早く帰ってコーヒー飲みたいんだけど…
うん。もういいかな…
「あの…すいません」
「どうしました?探偵さん」
ウザい喋り方するなと思いながらも、
申し訳ないのですが…と話を続けた。
「謎なんて一つも解いてませんよ」
「…え?」
「一つも解いてません。橘の強行突破できましたよ」
「…え?いや!そんなはずはっ!」
「そもそも簡単に見つかる場所に鍵を置かないでください」
「な、謎を解かなければわからないはず!」
「あの…探偵だからって頭が良い人とは限りませんよ?実際に僕はそんなに頭が良い方だとは思いません。一応、貴方が用意された謎ですか?全て解きましたけど…それを話す前に、橘が鍵を見つけてますからね」
「そ、そうなんですか?」
「おう!俺は今でも全然わからん!」
「三つ目の謎は頑張ったなと思いましたが、それ以外については簡単でしたよ?」
「…そ、そうですか」
仮面の彼は少しへこんだような声を出した。
可哀想だったかな?
「もう帰りませんか?そちらの女性も疲れたでしょう?」
僕がそう話しかけた女性は俯いたまま、
肩をプルプルと動かしている。
橘が僕の方を見て、え?どゆこと?と聞いてきた。
「そちらの女性は貴方の知り合いですよね?もうこういう遊びはいいんじゃないですか?」
耐えきれなくなったのか、縛られていたように見えた縄を外し、お腹を抱えて笑っていた。
「アハハ!もうダメ…プププッ…めっちゃウケる!」
そこにいたのは全く知らない女性で、
橘も口をポカーンと開けて見ていた。
「坊ちゃん、これは完敗ですよ。帰りましょう」
「い、いや!俺の謎はまだ一つ解かれてないぞ!」
「もう私が彼らの大事な人ではないとバレているんですよ。もう彼らに解く理由なんてありませんよね?」
「そ、そうだが…で、でも!」
仮面の彼と人質役の彼女が話している。
もうこのまま帰っていいかな?
「ダメだ!逃がさないぞ!」
橘…空気読んでよ…
このままお帰りいただけたら、
僕たちだって帰れるじゃないか…
「ふふっ、そうこなくっちゃね!」
「あぁ、栞ちゃんをどこに隠したっ!」
本当に面倒だな…
チリン
左腕から鈴の音が聞こえた気がした。
僕はこの音が大好きだったが、
二度と聴きたくないと思うこともある。
明るかった照明が全て消えた。
「えっ!?何だこれは!俺知らないぞっ!」
後ろの部屋から音が聞こえる
ゴーン ゴーン ゴーン
時計の音?
「リンちゃん!さっきの時計止まってたよね!」
「そ、そうだ!あの時計は動いていなかった!」
本当は仲良しだろ?
「坊ちゃん!いまのうちに逃げますよ!」
「いや!俺は!」
そう言った彼の言葉は小さくなり、
聞こえなくなった。
僕はやっとで帰れるよと思いながら、
煙を吐き出す。
「くそっ!暗くて見えない!逃したか!」
いや、別に逃してもいいだろ…
僕は橘のテンションについていけなかった。
真っ暗闇の中、タバコの煙を吐き出した。
時計の音は鳴り響いていた。




