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5の14

僕はボロボロになった家にきていた。

特に用事がある訳ではない。

ただ…気になっただけだ。


どれだけの年数が経ったんだろう。

僕はそう思い、入ろうとした。


チリン


左腕から鈴の音が聞こえた気がした。

僕はこの音が大好きだったが、

二度と聴きたくないと思うこともある。


これは僕の記憶ではない。


大きな男性が女性を殴っている。

大きな男性が自分を殴っている。

殴られた女性は泣きながら、

自分のことを強く抱きしめている。


これは僕の記憶ではない。


ハッと気がつくと僕は中に入っていた。

朽ちた壁やボロボロの床。

そこにポツンと綺麗な櫛を見つけた。

きっと大切に使われていたんだろうと、

そう思えるほどに綺麗な櫛。

僕はそれを手に取った。

その瞬間、肩に重みを感じた。


わかったよ。


誰にでもなくそう呟くと、

僕はこの家から立ち去った。

手に櫛を握りしめて。


ピンポーン


はーい!と言う声が聞こえてきた。


ガチャ


「え?だれ?」

「突然、訪ねてしまい申し訳ありません」


僕はこういう者ですと名刺を渡した。

受け取った少女は、おかーさーん!なんか知らない人がきたー!と中に入っていった。

母親だろうか、大人の女性が歩いてきた。


「あー、すいません。それでどうかされたんですか?」


名刺を手に持っている。

さっきの子が渡してくれたんだろう。


「こちらに見覚えはございませんか?」

「いやー…ありませんけど…これがどうかされたんですか?」

「そうですか…これは貴女のご家族の物だと思いまして…」

「そうなんですね…んー、お母さんなら…知ってるかな?」


どうぞと中に入れてもらった。

廊下を歩き、部屋の前につく


コンコン


「お母さん、お客さんだよ」


そう声をかけて、ドアが開いた。

部屋の中にはベッドに座っている女性が見えた。

僕はこの人に会うのは初めてだ。

初めてだけど面影があるなと思った。


「まぁまぁ、こんな婆さんに何のようだい?」

「お婆ちゃんのお客さんだったの?」


さっきの子もこの部屋にいたようだ。

お婆さんの横で足をフラフラしながら座っていた。


「私もわかんないんだけど、何か私達家族の物じゃないかって持ってきてくれたみたい」

「そうかいそうかい。わざわざ申し訳ないね」

「いえ、こちらこそ突然訪ねてしまい、申し訳ありません。貴女のご家族の物ではないかと思いまして…こちらに見覚えはございませんか?」


僕がそう言ってから見せると、

お婆さんは目を見開いて、受け取った。


「こ、これを…どこで?」

「たまたま拾いまして…」

「そうですか…これは…私の娘の物です…」

「大事な物ではと思いましたので…」

「はい…ありがとう…ありがとう」


何度も感謝をしながら泣きはじめた。

お婆さんは強く握りしめている。


「ご家族にお渡しできてよかったです」


花ごめんよ…ごめんよ…と泣き続けるお婆さんに


「泣かないでください。貴女が幸せになっていることが、とても嬉しく思いますよ」


何故か僕はこう話していた。

お婆さんは僕を見て、驚いた表情をした


「は、花…お前を忘れた事なんて一度もないよ。ありがとうね。よく私の所に帰ってきてくれたね…おかえり…花…ごめんね。ありがとうね」


そうお婆さんが泣きながら僕に話すと、

肩の重さがスッとなくなった。

泣き続けるお婆さんに困惑している二人。


「突然、訪ねてしまい申し訳ありせんでした。ご家族にお渡しできて、本当によかったです。では、僕はこれで失礼しますね」


そう話してから、その部屋を出た。

お母さんがあんなに喜んでいたのを見るのは久しぶりでしたと、家族の大切な物を持ってきてくれて、ありがとうございましたと感謝された。

僕は大切な物が大切な人の元に帰ることができて、本当によかったですと伝え、大事にされてくださいと言葉を残して立ち去った。


一人、何も考えずに道を歩く。

近くのコンビニでコーヒーを買って、

入口の喫煙所でタバコに火を灯す。


空へと煙を吐き出した。


さぁ、僕も帰るか…


カラコロカラン


中に入ると橘と柚葉さんが僕を見て、

笑顔でこう言った。


「おかえりなさい」


これにて第五章完結です。

お楽しみいただけたでしょうか?


ゆっくりですが、続きも書いていきますので、

優しい気持ちで見守ってくださると嬉しく思います。

今後とも、お楽しみいただければ幸いです。

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