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楠木柚葉が汗を流しながら、終わったよ〜と言った。
テーブルの揺れもなくなっている。
三島優子はソファに倒れていた。
「三島さんは?」
「大丈夫。寝てるだけ〜」
橘がおそるおそる三島優子に近づき、
あっ…寝てると呟いた。
「この人はもう大丈夫よ〜」
「そうですか…ありがとうございます」
僕は楠木柚葉に感謝を伝え、カウンターに移動する。
あれ?さっき、コーヒー淹れてたかな…
「私にもコーヒーちょうだい」
「わかりました」
僕は返事を返して、コーヒーを入れる。
カウンターにコーヒーを置くと、
楠木柚葉はカウンターでコーヒーを飲みはじめた。
タオルを渡すと、ありがと〜と言われたが、
僕は何も返さずコーヒーを一口飲み、
タバコに火を灯す。
「まだ、この人のこと気になる〜?」
「さぁ…どうですかね?…そう言えば、取り憑いていた霊はどうなったんですか?」
「どうかしらね〜…元の場所に戻ったんじゃない?」
「そうですか」
僕はタバコの煙を天井に吐き出した。
「って!いやいや!二人とも落ち着きすぎじゃね!?」
「どうしたんだよ?」
「どうしたんだよ?じゃなくてさ!え?おかしいの俺だけ?いや、さっき何かテーブル揺れてたよね?電気消えたよね?え?あれ?そんなんなかった?いや、あったよね!?」
橘は三島優子にブランケットをかけてから、
カウンターの方に詰め寄ってきた。
橘は優しいやつだなと思いながら、
コーヒーを一口飲み、煙を吐き出す。
「いや、なに普通にコーヒー飲んで一服してんだよ!」
「何?橘も飲みたかったの?」
「え?これは私のコーヒーよ!あげないから!」
「いや!ちげーよ!」
橘は身振り手振りを入れながら話している。
楠木柚葉は橘からコーヒーを隠すように持って、
チビチビとコーヒーを飲んでいる。
僕はタバコの煙を天井に吐き出しながら、
じゃあ、なんだよ?と問いかけた。
「なんだよじゃなくて!…あーーっ!もう!おかしいの俺だけなの!?リンちゃんも見たよね!?テーブルがガタガタってさ!電気がチカチカってさ!見たよね!?」
「見たけど?」
「だよね!見たんだよね!じゃあ、何でそんな普通にさ!見たけどって一服してられんの!?」
「タバコ吸いたいから?」
「…はぁ、何か聞いてる俺がバカみたいじゃん…」
「確かに、揺れてたし電気も消えた…でも、もうテーブルは揺れてない。照明もついてる。慌てなくてもいいだろ」
「いや、まぁ…そうなんだけどさ」
納得いかないって表情をしながら、
さっきのは何だったん?と聞いてきた。
「さぁ…柚葉さんはわかりますか?」
「そうね〜気付いて〜って感じだったんじゃない?」
「そうですか。橘、そうらしいよ?」
「うん。なんか2人に聞いた俺がバカだったよ」
「なに〜?私のことバカにしてる〜?」
笑いながら聞いている楠木柚葉に、
そんなんじゃねーからと橘はぶっきらぼうに返した。




