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橘が村人にタックルを食らわし、
雨宮栞と真島彩花に走ってと大声を出したので、
二人は後ろの方へと真っ直ぐに走り出した。
橘!と声をかけるとわかってる!と返事を返してきた。
橘のタックルで、村人達はドミノ倒しのように倒れていた。
「皆さん。申し訳ありませんが失礼しますね」
僕はそう伝えてから、橘と一緒に走り出した。
後ろから追ってくる音が聞こえてきたけど、
どんどん遠くなってくる…
なんとか巻けたかな?
そう思いながらも全力で走る。
走り続けると間宮亮太と倒れている女性二人、
雨宮栞と真島彩花を見つけた。
「あー、ちゃんと生きてますよ」
「そうですか…」
橘は少しづつ倒れている二人に近づき、
確認したあとに僕の方を見て頷いた。
「二人には何もしてませんよ…少し眠ってもらいましたけど…」
「そうなんですね…」
橘は二人を抱えて、近くにくる
「神影さん…俺と少し話しませんか?」
「奇遇ですね。僕も間宮さんとお話ししたいと思っていたところですよ」
「あー、橘さんはどうぞ、先に行かれてください」
ヘラヘラと笑った様子で橘に声をかける
「言われなくて行くよ!リンちゃん…先に行くから」
「ああ、すぐ追いかけるよ」
橘は二人を抱えたまま立ち去っていった。
あれ…僕は無理だな…と思っていると
ヘラヘラ笑ったまま声をかけてきた。
「神影さんは最初から気づかれていたんですか?」
「そうですね。最初は少し怪しいなと思うぐらいでしたが、旅館に入った時にわかりましたよ。懐かしいなって…」
「懐かしい…ですか?」
「まぁ、それはどうでもいいんですが。僕もお聞きしたかったんですよ…橘に、わざと鍵を渡したままにしましたよね?」
「あぁ、神影さんの言う通りですよ」
「間宮さんはどうされたかったんですか?」
「あー、なんと言いますか…神影さんも気付かれた通り俺の生まれた村は狂ってるんですよ」
「まぁ、おかしなお祭りをするぐらいですからね」
「そうですね。村の外から人を連れてきて…村人でパーティーをするってお祭りですからね」
間宮亮太は腹を抱えて笑っている
「本当なら真島さんだけ…または雨宮さんまでの予定でしたよね?」
「はい。その通りです。それなら普段通りの村人が言う神聖なお祭りは予定通りできたと思いますね…」
「なぜ、僕達を連れてきたんですか?」
「そうですね…俺の名前なんですけど…本当はないんですよ。村のやつらもそうで…外から人を連れてくる為だけにつけられた名前なんです」
「…そうなんですね」
「でも、外に出て思っちゃったんですよ…あれ?俺の村っておかしいんじゃないかって…だから、神影さん達を連れてきたんです」
「…僕たちが何も気付かなければ、いつも通り。もしも気付いたのなら…」
「そうです!気付いてくれたら、何かが変わるんじゃないかって!」
「結局、変わると思いますか?」
「さぁ…何も変わらないかもしれないですね。今年は神聖なお祭りができなかったってだけで…」
間宮亮太はヘラヘラと笑ったまま
結局のところ、神影さん達に委ねたんですけどねと
僕に声をかけた。
「間宮さんはこれからどうされるおつもりですか?」
「そうですね…このまま逃げるか…それとも…」
「逃げようなんて考えているようには見えませんが」
「ははっ!そうなんですよね。結局、俺は誰でもない、ただの一個の個体でしかない…でも、それでも…」
「まぁ、僕が一つだけ言えることですが…」
そう僕が言うと、なんだろう?って表情をした。
なんだ…ちゃんと人間してるじゃないか…
「貴方が今回のお祭りを無くした。それは、きっと今までは一度もなかったことでしょう…それをしたのは、誰でもない貴方の行動の結果ですよ」
僕の言葉を聞いた後、言葉を飲み込むように
身体の奥底まで染み渡るようにしながら目を瞑った。
そして、またヘラヘラと笑いはじめた。
「あー、まだ神影さんと話したいですけど…そろそろいかなきゃいけないですね…」
「残念ですが…僕だけ残るわけには行きませんので」
「それじゃ、神影さん。会えてよかったです」
「そうですか。僕も貴方の無事をお祈りしますよ」
そう言葉をかけた後、僕は橘を追いかけた。
会えてよかったとまた呟いていた気がしたが
僕はただひたすらに山の中を走り続けた。




