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神影さんは何も話さないまま
静かに歩き続ける。
彩花も少し怒った様子だ。
私も楽しかった旅行がこんなに暗闇の山を歩くことになるなんて思っていなくて、不機嫌になっていると思う。
「あそこに小屋があるよ!」
私達の空気が悪いことを気にしてか、
いつもより少し元気な様子で橘さんは話しかけてきた
「あっ!本当だ!」
「ねぇ、疲れたしあそこで休憩しようよ」
神影さんは休まずに歩き続けたそうだったが、
私達がもう歩けないというと
わかったと言ってくれた。
「もう、足がパンパンなんだけど…」
「私も…疲れちゃった…」
神影さんが橘さんを見ると、橘さんは頷いた。
「リンちゃんが確認してくるってさ」
神影さんが小屋に近づくと中に入っていった。
少し待っていると中から手招きしている。
「よし!そんじゃ行こっか!」
橘さんが先頭を歩き、三人で小屋の中に入った。
「なにここ!めっちゃ汚いんだけど…」
「そうだね…」
小屋は近づいて見ると、ボロボロで最後に使われたのはいつだったのかわからない感じだった。
蜘蛛の巣もあって、居心地がいい場所じゃない
「ここで少し休憩しよっか!」
橘さんは私たちが座れるように、床の埃を払ってくれて、
そこに座り込む。
神影さんは何も話してくれない…
小屋の中も色々と調べているみたいだ
携帯のライトがないと何も見えないような
暗い小屋の中で私達は休憩していた。
ふいに神影さんがライトを消してください!と小声で話しかけてきたので、ビックリしつつもライトを消した。
壁の隙間から、灯が見えた。
彩花が探しに来てくれたと笑顔を見せると
神影さんは口に人差し指をあて、
静かにしてくださいというポーズをとった
私も彩花も何でだろうと思いながらも静かにしていた。
灯の方から声が聞こえてきた。
「おい!どこに逃げたんだ!」
「まだ逃げたって証拠はねぇだろ!」
「そうだな!探しにきたって言って連れ帰ればそれでいいからな!」
なんの話をしてるんだろ?
「ったく!今年は4人もきて大漁だと思ったのによ!」
「あの若造が車の鍵を回収し忘れるから…」
「この夜道だ!そんなに遠くまでは行ってないだろ!」
「そうだな!見つけなきゃ明日のお祭りができなくなるじゃねぇか!」
「せっかく女のいいところは譲ろうと思ったのによ!」
「おい!無駄口たたいてないで探せ!」
「絶対に見つけるぞ!」
大勢の人の声が聞こえてきた。
少しづつ離れて行って、聞こえなくなった。
「リンちゃん…あれって…」
「…村の人達だろうね」
私達を探している様子だったけど、
すごく怖い感じがした。
「ねぇ…神影さん…なんかわかんないけど怖い」
彩花も怖い感じがしたんだと思う
神影さんに怖いと言っていた。
「そうですね…このまま見つからずに山を抜けることができたらいいんですけど…もう歩けますか?」
私も彩花も無言で頷いた。
「そうですか…それなら、行きましょうか」
ボロボロの小屋から出て、暗い山道を草をかき分けて歩いて行く神影さんの背中を見つめながら歩いた。




