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「お邪魔しまーす!」
元気よく入った橘に日村孝介は苦笑いしながらも、
どうぞ、中を見られてくださいと話した。
ありがとうございますと返事を返し、
部屋を確認する。
特にこれと言った変わりはなく。
普通の部屋だと言われてもわからない。
「リンちゃん、なんか感じる?」
「んー、特には」
「やっぱり幽霊はいないんじゃん。あービクビクして損した〜」
ビクビクしてたのかよ…と思いながらも、
ベランダに出てみる。普通にあるベランダと同じで、
乗り越えなければ落ちないなと思う。
だが、特によじ登った形跡などもなく綺麗だ。
ふと、違和感を感じた。
「ねぇ、リンちゃんこれ見てよ!」
後ろから声が聞こえたので部屋の中へ入り、
橘が指差している方向を見ると
「あれって…幽霊だよね…めっちゃ怖いんだけど…」
「いや、どうみてもぬいぐるみだろ…」
可愛らしいおばけのぬいぐるみだ。
何をどう思ったら怖いと思うのか…
チリン
左腕から鈴の音が聞こえた気がした。
僕はこの音が大好きだったが、
二度と聴きたくないと思うこともある。
ふいに後ろに気配を感じる。
髪の毛が僕の肩に触れた気がした。
これは…臼井怜子?
だとしたら、なんでこんなにも悲しいと思うのか
なんでこんなにも…
「リンちゃん!リンちゃんどうしたの!?」
橘に肩を掴まれ、ハッとした。
気付いたら僕はベランダに立っていた。
「いきなり、ベランダに歩いていくからビックリすんじゃんよ!そういうのやめろよな〜!」
「…悪い」
もー!俺を怖がらせようとしたんだろ!と
プンプン怒っている橘に悪かったってと言いながら、肩を軽く叩いた。
「あの…もう準備が出来たので、でますけど…」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえ…」
怒っている橘に何があったんだろうと困惑している日村孝介に感謝を伝え、部屋を出る。
「俺は順子のとこに行きますけど…神影さん達はどうしますか?」
「そうですね…もう少しだけこのマンションを調べていきますので…今日は確認させていただき、ありがとうございました」
「わかりました。こちらこそ、色々と調べてもらってすいません…それじゃ、あの…お願いしますね」
「はい。わかりました」
日村孝介は頭を軽く下げてから立ち去っていった。
まだ橘はプンプンしてる。
怒りすぎだろ橘龍生…
「橘…本当に悪かった」
「…もうこんなことすんなよな!」
「わかってるよ。ありがとな」
僕がありがとうと言ったことに、なんでありがと?って表情をしながら、わかってるならいいけどさと橘は言った。




