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「見つけたよ。多分だけど」


息を切らして、勢いよく扉を開けたせいで

カラコロカランがカララコカランとなった。

扉、壊さないでほしい。


「僕も目星はつけたかな」


あれから一週間。雨宮栞の依頼は終わったが

引き続き調べていた。

依頼人ではなくなったので、

ある意味僕らがストーカーのようなものだが…

本物のストーカーらしい人物を見つけることができた。


野田勝。雨宮栞の所属事務所の社員だ。

まさか社員が所属アイドルに

執着してるとは思わなかった。

彼女はアイドル活動をしながら大学に通えるように、

事務所が用意した寮で生活しており、

合鍵を使い部屋に入っているところを目撃している。

ある意味、熱狂的なファンよりたちが悪い。


「これ…どうすっかね〜」


橘は頭を抱えている。

正直な話、ファンによるストーカーなら、

事務所に話なり警察に話なりして解決する方法があるが

事務所内での話を警察沙汰にはしない可能性が高い。

野田は彼女のマネージャーとも仲が良く、

会社からの信頼もそれなりにされている。

彼女の話と野田の話のどちらを信じるのか、

僕達では判断がつかないところだ。


現状として、調べられることは調べた。

後は彼女がまた依頼にきてくれるまで、

僕たちには出来ることはない。


「なんとか、教えてあげることはできんかね〜」


僕は返事を返さず、タバコに火を灯す。


「助けてください!」


カララコカラン

扉、壊さないでほしい


「栞ちゃん!どうしたの!?」

「こ、これ!た、助けてください!」


雨宮栞は紙を強く握りしめながら、

息を切らして入ってきた。

紙を受けとって見た橘はなにこれ…と呟き

僕に渡してきた。その紙を見てみると


ずっと見てただけなのに 許せない

許せない許せない許せない許せない許せない

僕だけの栞ちゃんなのに許せない許せない許せない

僕だけの栞ちゃんじゃないなら殺してやる

殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる


熱狂的なファンレターだ。


「愛が重いって話ですか?」

「そういう冗談はいいから!」


「わ、私、その」

「栞ちゃん!とりあえず落ち着いて!」


橘は雨宮栞の肩を優しく抱き、ソファに座らせる

大丈夫だから、落ち着いてと肩をさする姿に

こいつ女性にモテるんだろうなと

見当違いなことを考えていた。


「これはまたポストに入っていたんですか?」


何も言わずに、コクンと頷く。


「そうですか…」

そう話しながらカウンターに置いてあるメモ帳を手に持ち、静かにペンを走らせる。

「ですが、僕達は何も調べることができませんでした」

"盗聴されてます。引き続き調べていました"

「申し訳ありません」


僕の話す言葉と書いた言葉に、

ビックリした表情を浮かべ、静かにコクンと頷いた。


橘は僕の意図したことに気づいたのか

「俺たちにまだ出来ることはあるかもしれないだろ!?」

その言葉を流し聞きしながらペンを走らせる

「僕達にできることはもう何もない」

"野田勝の可能性あり。引き続き依頼されますか?"


彼女はまたコクンと頷いた。


「くそっ!なにもできないのかよ…」

橘の以外と上手な演技に感心しつつ

「申し訳ありませんが僕達にできることはもうありません」

"マネージャーと会ってもいいですか?"

そう書いたメモ帳を雨宮栞に渡す


雨宮栞は少し悩んだ様子だったが

「わかりました」

"お願いします"

そう書かれたメモ帳を返された。


「リンちゃん!俺、栞ちゃんが心配だから家まで送っていくけどいいよな!?」

「僕に言われても…雨宮さんはご迷惑ですか?」

「あの、お、お願いできますか?」


上目遣いで聞いてくる姿に、

あざといなと失礼なことが頭によぎった


「じゃあ、栞ちゃん行こっかっ!」

「は、はい!」


カラコロカラン


少し元気を取り戻した様子の雨宮栞と

元気いっぱいの橘を見送り、僕は僕のできることを

しなくちゃいけないなと思いながら…

コーヒーを入れ、タバコに火を灯した。



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