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僕は今、階段を降りている
地下へと続く階段だ。
真っ暗闇で何も見えない。
事前にライトを持ち込んでいなければ
階段を降りることも難しかっただろうと思う
ライトを持ってきて本当によかった。
そこまで長くない階段を下まで降りると
扉があった。鍵はかかっていない。
そりゃそうか。そもそもここに気付く人は
今までいなかったんだろう…もしくは…
そう考えながら扉を開くと…
両手と両足を縛られた状態の二人の少女を見つけた。
「瑞穂さん、望美さん…見つけましたよ」
僕は呟いてから二人にそっと近づく。
二人は気を失っている状態だった。
まだ生きていることに、間に合ったと心から思った。
「探偵さん…勝手に入っちゃダメじゃないですか」
後ろの方から声が聞こえた。
「調べさせてくださいとお願いしたじゃないですか」
「やれやれ…これだから勘のいいやつは嫌いなんだ」
後ろの方へと光を向けると、
笑顔で安村守が立っていた。
「やはり、貴方だったんですね。安村守さん」
「はぁ…今後の為にもどうして気付いたのか教えてもらえませんか?私は誰にも気づかれないように入念に準備をして行動していたんですよ」
「そうですか。それは残念でしたね。そうですね…僕は望美さんのおかげで気付けたと思っていますよ」
「やはりそうか…今回の望美は出来が悪かった…」
「貴方ではなく母親に似たのでは?」
「…そうですね。本当に妻に似ていましたよ」
イヤなほどにねと呟いている。
僕はここからどう動いてくるかなと
冷静に慎重に安村守の動きを観察していた。
さて…探偵さんと話しかけてくる。
「もしやここから出られるとお思いですか?」
「もちろん。帰らせていただきますよ」
フフフ…ハハハハハ
高笑いをする安村守。
うっわ…こいつ気持ち悪いなと思いながらも
表情には出さずに僕からも質問がありますと尋ねた。
「どうしてこんなことをされたんですか?」
「どうして?どうしてと聞きますか。ふふふ…やはり私の様な高尚な考えはわからないのですね…」
「そうですね。全く理解できませんね」
「そうですか…ふふふ、理解できないあなたにもお話しして差し上げましょう」
どうせ、あなたはここで死ぬのだから
そう言った後に安村守は話しはじめた。
長々と話す内容は気持ち悪くて聞いていられない。
聞いておいて、かなり失礼な話だが
全くもって理解しがたいし、理解したくない。
だから、要約して三行にまとめてみた。
私は狼男だ!
満月の夜に女の子を食べちゃうぞ!
経験値ゲット!レベルアップ!
そういう話だった。
「さて、もういいでしょう」
「そうですね。もうお腹いっぱいですよ」
そう返事を返した途端に、
暗いのにすごいなと感心してしまう早さで
僕の方へと動いてきた。
手には鈍器のような硬いものを持っていた様で
頭を強く殴られる。
暗くて持っている物に全然気付かなかった。
これは失敗したなと思いながら…
僕はコンクリートの床に倒れてしまう。
倒れた状態でなんとか安村守に光を向けると
笑顔のまま僕を見下ろしていた。
だが目は笑っていない。
頭の痛みに耐えながらも、この人がこんなにも
狼男に執着してしまうのは何故だろう?
どうしてこんなに悲しいと感じてしまうのだろう
そう僕は思いながらも安村守を見た
「…なんだ、その目は…その目で私を見るなっ!」
不意に笑顔が消え、何かに怯えたような
何かを怖がっているような表情をした。
手に持っている鈍器を振り上げ、
勢いよく振り下ろしてきた。
ガキン
鈍器とコンクリートが強くぶつかった音が響く。
手に持っていたライトを手放し、
横にゴロゴロと転がった。
何とかトドメの一撃は逃れたらしい。
頭がグワングワンとするが、このままだと
本当に帰らぬ人になってしまう。
何とか起き上がり、全力で走る。
安村守に思いっきりタックルを食らわし
一緒に倒れ込む。馬乗り状態になり、
鈍器を持っている手を思いっきり殴る。
イッテーと思いながら、手放した鈍器を
手で払いのけ遠くへと滑らせてから、
安村守の顔面を一発殴り、僕をどかそうとした腕をとり、関節を決めたままうつ伏せへと転がらせて押さえ付けた。
階段の方から走り降りてくる音が聞こえた。
どうやら間に合ったらしい。
警察の方と一緒に降りてきた橘は
画面が明るく光る携帯電話を強く握りしめていた。
「遅いよ…タッちゃん」
僕はおどけた口調で名前を呼んだ




