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カラコロカラン
「あれ?栞ちゃんじゃん!やっほー」
「やっほー!来ちゃった」
橘に笑顔で手を振ると僕に頭を軽く下げた
コーヒーいりますか?と尋ねると
お願いしますと微笑んだ。
「ねぇ、栞ちゃんって怖い話とか苦手なほう?」
「えー、怖い話ですか?本当に怖いのは苦手ですけど、ちょっとした都市伝説ぐらいなら知ってますよ」
「そうなんだー!俺は得意じゃないんよね〜」
「そうなんですか?なんか意外です!橘さんって何でもできちゃうイメージがあったから」
「なんでもできちゃうけど、苦手なこともあるのよね〜」
あとさタッちゃんって呼んでよなんて話を
カウンターで聞きながら、コーヒーを淹れる。
「なんかコックリさんしてるっぽい子がいてさ〜」
「コックリさんですか?私の友達にもしたことあるって子がいたかな〜」
「うげぇ!マジで!何でコックリさんすんだろ?」
三人分のコーヒーが淹れ終わったので、
コーヒーできましたよと声をかけると、
雨宮栞がありがとうございますと
カウンターの方へと歩いてきた。
橘の分のコーヒーも受け取り、ソファへと戻る。
「なんか私の友達は好きな人に好きな子はいるのかとか聞いてみたらしいですけど…」
「そうなの?」
「はい。でも、何も教えてくれなかったって言ってました」
「やっぱ、そういうのってインチキだよね〜」
「私もあんまり信じてないですけど…でも、動物の霊とか呼び寄せるからしちゃダメだよって話も聞いたことありますよ」
カラコロカラン
「あら?ここ喫茶店じゃないの?」
この間会った時のいかにも霊能者です!って格好ではなく普通の女性が着るような服装の楠木柚葉が入ってきた。
「あっ!インチキ霊媒師!」
「インチキなんて失礼なやつ」
「この間!足下気をつけろって言われてから、ずっと足下気をつけてたらこけちゃったじゃねーか!」
「ほら、足下に気をつけないからでしょ?」
「気をつけすぎてこけちゃったの!」
雨宮栞は二人を交互に見つめながら
困った表情で話を聞いている。
「ここは探偵事務所ですよ」
「そうだったの。でも、コーヒーのいい香りがする」
はぁとため息をついて、淹れましょうか?と尋ねるの
いいの?お願いと言われた。
しょうがないので楠木柚葉にコーヒーを淹れ始めた。
僕の本業ってコーヒーを淹れることじゃないんだけど…
楠木柚葉はカウンターに座ると、僕を見つめてきた。
「あ、あの…この綺麗な方は?」
「楠木柚葉さんですよ」
「はじめまして。楠木柚葉です」
「あっ!はい!はじめまして。雨宮栞です」
探偵事務所なのに探偵事務所らしからぬ挨拶を
流し聞きながら、コーヒーをカウンターに置いた。
一口飲むと、美味しいと呟いた。
タバコ吸いますけど?と尋ねるとどうぞと返されたので
タバコに火を灯す。
橘は楠木柚葉にイーーと子供のような仕草をした後、
雨宮栞にそれで何の話だったっけ?と聞いていた。
「コックリさんの話でしたよね?」
「そうだそうだ!コックリさんの話だ!でも、俺は信じないけどね〜」
「私もあまんり信じてないですかね」
「だよね〜…てかさ、なんかリンちゃんが狼?とか赤ずきんちゃん?とかってのに引っかかっててさ」
「赤ずきんちゃんの話ですか?」
「うーーーん。そうなんだけど、ちょっと違う感じ」
「違う感じ?赤ずきんちゃんはおばあさんを訪ねて、食べれちゃうけど猟師さんに助けてもらうんですよね?たしか」
「赤ずきんちゃんの話はそうだったよね〜」
突然、楠木柚葉が二人の方を振り返り
狼の話なら狼男の話もあるのよと話かけた
「狼男?なんだそりゃ?」
「たしか、満月の夜に狼になっちゃう男の人がいるって話だった気がしますけど…」
「えっ?そうなの?狼になってどうすんの?」
「いや、狼になることしか知りませんけど…」
「話にもよるけど、女の人を食べちゃうとかヴァンパイアと恋しちゃうとか」
「うげぇ。どっちにしろこえーじゃねーかよ」
なんだかんだ仲良く話してんじゃねーかよと、
心の中で思いながらも、
タバコの煙を天井に吐き出しながら黙っていた。




