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「神影さん、本当にありがとうございました」
「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした」
あの後、警察を呼び、
野田勝の身柄を拘束してもらった。
白井勉にも連絡をして、一緒に事情を説明した。
事務所には申し訳なかったが、
殺しにきた野田勝を見て、
警察を呼ばない訳には行かなかった。
「まさかあのカメラがこんなことになるなんてな〜」
橘と一緒に雨宮栞の部屋に監視カメラを設置した。
盗聴器がなくなっても、気にせず部屋にくる野田勝を見て
また部屋に侵入するだろうと思い、設置したが、
殺人未遂の映像を撮ることになるとは思わなかった。
白井勉にも警察沙汰になったことを謝罪したが、
こちらが申し訳なくなるほど頭を下げられた。
お二人のおかげで、栞ちゃんが救われましたと
本当に申し訳なかったと泣きながら話す姿に
大丈夫ですから、申し訳ないと繰り返す
よくわからない状況にもなったが…
「私、実はあの時のことあんまり覚えてなくて…」
「えっ?そうなの〜?」
「はい。非通知の電話が鳴って、部屋が明るくなってから覚えてないんですよね」
「そっかそっか!俺がカッコよくやっつけたとこ見れなかったんだね〜」
えいや〜とふざけたポーズを決める橘は
雨宮栞と笑い合っている。
「そういえばここって探偵事務所なんですよね?」
「あ〜。ぽくないでしょ?元々、喫茶店だったからさ」
「そうなんですか?」
「そうそう!だから、リンちゃんはあーやって、コーヒーを淹れて楽しんでるのさ!」
橘はいらないんだな?と言いながら
僕は三人分のコーヒーを入れている。
うそうそ!ごめんって!と謝るポーズをしながら
カウンターの方へと歩いてきて
二人分入れたコーヒーを手にとり
雨宮栞の方へと持っていく。
二人同時にコーヒーを飲み始めた
息ピッタリだなと考えていると
「あっ!美味しいです!」
「それはよかったですね」
「リンちゃんのコーヒー最高!」
はいはいと返事をしながら、タバコに火を灯す。
「雨宮さんはまだあの部屋にお住まいですか?」
「いえ!違う部屋に引っ越しました」
「そりゃそうでしょ〜!」
「そうですか。それはよかったですね」
コーヒーを飲みながら僕は煙を天井へ吐き出す。
「今回は本当にありがとうございました」
「また何かありましたらご相談ください」
「リンちゃんのコーヒー飲みにきてもいいからね!」
「その…コーヒー…飲みにきてもいいんですか?」
「コーヒーしか出しませんよ?」
「だ、大丈夫です!」
笑顔で返事をした雨宮栞はまたきますと手を振り
立ち去っていった。
カラコロカラン
またね〜と手を振り続けていた橘が
なんで部屋のこと聞いたの?と尋ねてきた
いや、別になんでもないけどと返しながら
野田さんは…と話し続ける
「雨宮さんの番号を知らなかったみたいだよ」
これにて第一章完結です。
お楽しみいただけたでしょうか?
ゆっくりですが、続きも書いていきますので、
優しい気持ちで見守ってくださると嬉しく思います。
今後とも、お楽しみいただければ幸いです。




