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ゆかりなさんと。  作者: 遥風 かずら
第四章:パン野郎
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46.パパ×ぱぱ×オレ

 これは何の真似? どうしてこうなった……唯一の救いは、彼女が俺の隣に座ってくれていることくらい。それにしたってオッサン二人と見合いはキツイ。


 遡ること放課後くらい。ゆかりなさんは電話をしていて、俺の方をチラチラと見ながら誰かにうんうんと相槌を打っていた。もちろんその時点での彼女の表情では、何が起こるかなんて探れない。


 保健室から出て教室に戻り、その後は何てことの無い一日が終わった。そう思っていたのに、彼女の携帯に誰かから電話が来ていたらしく、俺はそれには触れないようにしてそのまま帰ろうとした。それなのに……。


「高久くん、電話に出てくれるかな?」

「ふぁっ!? え、誰?」

「出たら分かるし、出ろよ」

「はひっ! 出させて頂きます」


 彼女の口調がすっかり初期化されたようだ。それはともかく、電話口に出たのはパパさんだった。変な事なんてしてないからびびることはないのだが、やはりびびる。


「ど、どうも」

「高久君、久しぶりだね。ゆかちゃんとは仲良くやってるかな?」

「はぁ、まぁ……」

「うん、それは良かった。ところでね、今夜メシでもどう? 心配しなくてもゆりなはいないよ。場所は高久君の家でどうかな?」

「へ? で、でも大したおもてなしは出来ないですよ?」

「それは問題ない。俺が何か作るよ……ってことで、ゆかちゃんに代わってくれる?」


 おいおいおいぃー! パパさんが俺の家に来てご飯作って、食べる……だと!? いよいよ俺の弟子入りを迫る気か? それはまだまだ勘弁してほしいのに。


 そのせいか俺は無意識にゆかりなさんを見つめていた。


「ん、オッケー!」

「な、なんでございましょうか?」

「びくびくすんなよ! わたしもいるからさー。高久くんの隣に座ってあげるし、安心だろ?」

「そ、それならまぁ、何とか……」


 家に帰ってみれば、俺の本物のパパが待っていた。


「おう、久しぶり! 覚えてたか? 高久」

「そりゃあ、まぁ……どこへ旅立っていたかは聞かないでおくけど、何で?」

「ゆかりなちゃんのパパさんとでお前に聞いておこうかなと」

「へ、へぇ……」


 よほど顔に出ていたのかは定かじゃないが、ゆかりなさんが俺の手を握って来ていた。横顔も肌白で綺麗で思わず触れたくなる。


「――(後で、ね?)」


「ハイ」


 これはもう保健室からの流れで立場が逆転したかもしれない。


「高久、座れ。ゆかりなちゃんは、隣ね」


 それはいいのだが、パパはパパと隣同士でいいのか? 俺だったら嫌だ。


「俺は高久に聞きたくて出て来た、いや、戻って来た。この件に関してはゆりなさんは関係ない」

「ああ、うん。それで?」

「お前、ゆかりなちゃんとどうなりたいんだ? 聞いた話じゃ、卒業と同時に本当の家族になるってことらしいけど、それでいいのか?」

「いや、それは……」


 たぶん意味が違うと思われる。俺が言っている家族は、俺とゆかりなだけのことであって、そこに親父とお母さんは入ってない。


「分かってるよ。高久くん」

「え、マジで?」

「マジマジ」

「そ、そっか。そういう予定だから……さ」

「予定ねえ……ふぅーん。まだまだ成長が必要かな」


 詳しくは言いたかない。俺の思ってることとゆかりなの思ってることは、多分違うだろう。


「高久君。覚悟を決めたら、俺のとこに一度は話を付けに来てくれるんだろ?」

「はい」

「よし、いい返事だ! それなら俺からは何も言わないし、あいつにも言わないでおくよ」

「あ、ありがとうございます」

「ま、そん時には俺の事もパパと呼んでくれ」


 やっぱり呼ばれたいのか。いい人ダナー。


「高久の考えてることが分かったからいいや。俺は何も言わんし、怒らない。最初っから応援してたぞ」

「嘘つけ」

「いやいや、マジだって!」

「チャラいな相変わらず」


 親父もパパさんも何だかんだで応援してくれているようだ。そんなこんなで、パパたちとの夕食会はあっさりと終わった。


「あのね、わたしと高久くんってこの家で兄と妹として暮らしてたでしょ? それってママも結構好きな空間だったんだって。だから、わたしが高久くんのいる家にいる時は、兄妹として一緒にいていいって言われたの。それなら間違いも起きないからって。だから、高久くん……この家にいる時間だけでもいいんだけれど、わたしを妹に戻してもらっていい? 高久くんは兄に戻るの」


「それって、恋人関係じゃなくて、兄と妹ってことでだよな? そ、そんなの……」

「駄目……かな?」

「い、イイに決まってるだろうが! 今じゃなんつうか、恋人関係だろ? でも外ではさすがに兄妹とか公表しなかった。それって俺とお前だけの秘密だったわけで、むしろ希望! ゆかりんの兄、俺!」

「うん、それじゃあ……お望みを叶えてあげよっかな」

「ん?」

「お兄ちゃん、今夜一緒に寝たいなぁ。駄目かな?」

「い、いいですとも! 妹のゆかりんは俺が守る!」

「言っとくけど、手は出すなよ? わたし、妹なんだぞ?」

「デスヨネー……」


 し、しかし……「お兄ちゃん」あぁ、なんていい響き。華乃ちゃんに言われた時もそうだったが、これは最高だ! 


 制限付きではあるけど、俺の家限定でも何でもいい。久しぶりの兄妹関係が始まった。

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