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ゆかりなさんと。  作者: 遥風 かずら
第三章:成長戦略的なヤツ
25/68

25.ゆかりなさんの初期化。


「ふっ……ざけんなー! 早く持って来い!」

「そ、そそそ、そう言われましても俺は瞬間移動なんて出来ないんですよ? 俺を何かと勘違いしてないか?」

「うるさーい! うるさいうるさいうるさーい! 早くしろ、早く!」

「いやっ、ほら、みなさん注目されてらっしゃる」


 料理の腕は一部マスターされたゆかりなさん。しかし、人間はそう簡単には成長しない。だがゆかりなさんは逆だった。特にわがままっぷりは別の意味で成長し続けていた。


 今から遡ること2時間前。家出から帰って来た妹さんはとても機嫌が良かった。俺は真面目に勉強をしていたのに、彼女はその俺の邪魔を……もとい、機嫌が超絶にいい状態でデートに誘って来た。


「なにゆえ?」

「もちろん、お弁当を食べて欲しいから。駄目……かな?」


 ぬおお!? 何て可愛い仕草をお見せになられるのか。俺を見上げるような上目遣い。単純にちっさいゆかりなさんだからこその技。それに毎回引っかかる俺もどうかしている。


「駄目なわけがないだろう! 行くぜ!」

「じゃあ、これをちゃんと充電してね」

「はい? 自分の充電器をお使いになられては?」

「何か、使えなくなった。だから、同じ機種のたかくんのを使って充電しておいてね」

「わ、分かったよ」


 いわゆる家族割で同じ機種のスマートすぎる電話を使っている妹さん。俺は普段は全くと言っていいほど使わないアナログ人間。対してゆかりなさんは、自分で作った自慢の料理を「映え~」とか言って撮りまくっている。そりゃあ電池という名のバッテリーは消耗しまくりでしょう。


 そんなにも嬉しいのかな。そしてその映える料理をどこに発信しているというのか。恐らくママに違いないが、俺は何も言わないでおいている。料理人のパパの言うことを鵜呑みにするわけではない。


 だけどゆかりなさんのママ……お母さんは油断できない人だということを、改めて認識している最中だ。

 そして今日に限って自分の電話を優先に充電し、彼女のソレを充電器に置くのを忘れてしまったのだった。


 ――そして今に至る。


「高久のを貸せ!」

「す、すまん、俺のは映えません。普段使わないから非常に低グレードなんですよ、ええ」


 なんせゆかりなさんを自動的に観察するのが俺の機能。電話もカメラも使わないわけです。そして今はこんな場所で怒っておられる。


 よりによってその場所とは、デートということで可愛いスィーツなお店。

 行列に並び、いざ店内へ案内され……席に着くとゆかりなさんは怒りで我を忘れてしまった。充電されていなかった彼女のソレは見事に沈黙してしまったのだった。もちろん、バッテリーなんてものも持っていない。


 あぁ……俺とゆかりなさんとの甘々記念が……。


「バカ!! バカ! ばかーー!」

「はい、はいぃ……ハイ……スミマセン」


 こんなはずじゃなかった。デートとはもっと楽しくて甘くて、好きを今よりもさらに増幅させる効果があったのだが、半減どころか彼女の俺への気持ちはこのデートと共に冷めてしまったらしい。


 せっかく料理の向上と共に盛り上がって来たのに、ゆかりなさんはまるで初期状態に戻ったかのように、俺をあしらうようになってしまった。俺が好きだと意識し始めて来た矢先のことだった。


 デートから数日後、俺は自分以外の男に嫉妬をしている。もしかしたら彼女を奪われてしまう、もしくは彼女が自らの意思で他の奴に近付こうとしているからだ。


 デート以後、明らかにゆかりなさんの俺への感情は変わっていた。もちろん俺への「好き」は持ったままだと思われるが、家の中でのたかくん呼びは消え失せた。


「高久、早くしろ! 遅刻すんぞ」

「は、はい。スミマセン」


 きっと料理を出来るようになったことの自信の表れと、自分発信によってお母さんが彼女に何かを言ったのが原因なのかもしれない。


「うんうん、それでさーそっちのが綺麗に映えてると思うんだ」

「いいね! 花城は料理撮んのも作んのも上手いよね」

「あはっ、そんなことないよー。そうゆうチヒロ君も綺麗に撮ってんじゃん?」

「たまたま偶然、撮れただけだよ」


 ぬああああ!? おいおいおいいー! 第2のパン仲間にして友達のチヒロくんよ。なに仲良く話してくれちゃってんの? 


「高久、何? 何でそこで立ったまま見てんの?」

「あ、いや、ゆかりなさん。ちょっと、廊下に……」

「嫌」

「嫌じゃない! チヒロ、コイツを連れて行くぞ。悪いな」

「お、おお……」


 我を忘れた俺は、見ていられなくて思わずゆかりなさんの手を引っ張っていた。


「……なに? なんなの?」

「お前、まだ怒ってんのか? 何であいつとあんな――」

「は? 高久の友達じゃん?」

「だってお前、今まで俺以外の奴と話なんてしたことないだろ? 何で急に……」

「話くらいしてもいいじゃん? 何でそこまで気にするわけ? 高久もわたし以外の女子と話をすればいいことでしょ? そんなことくらい誰でもするし、何ですか、束縛ですか~?」

「……そっ、そんなんじゃねえし。分かった、俺も他の女子と話をすることにする」

「あっそ、じゃあわたし戻るし」


 ぬああ! 見事なまでに扱いづらくなったじゃないか。まさに初期化。充電が原因とか、それはあんまりだ。


「高久、何だって? というか、喧嘩でもした……とか?」

「ううん、違う。高久くんには一度そういう思いをしてもらわないと成長しないし、磨かれないから。だからいいの……本当に女子と仲良くなって、わたしに悔しいって思わせたら、そうしたらわたしから近づくだけ」

「そ、そうなんだ。あいつはいい奴だから、頼むね花城さん」

「うんっ」

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