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ゆかりなさんと。  作者: 遥風 かずら
第二章:妹とヨメの狭間
23/68

23.ゆかりなさんのパパ

「ありがとっ、パパ!」

「おう、明日くらいで最終のテストをしてやるよ! それにしても、頑張ったな。そんなに好きなのか?」

「……ん、大好き。でも、彼は違うと思う。彼の好きってきっと――」

「男ってのはハッキリと答えを出せない生き物なんだよ。俺もそうだった。だからまぁ、別れたわけだが……でも、ゆかちゃんと会うことは許してくれてるし、そういう意味じゃいい女だよな」

「ママも同じだと思う。ねえ、わたしもイイ女になれるかな? 彼が本気になってくれる感じの」

「それは間違いないよ。ママの子だから、絶対イイ女になれる! 今でもその片鱗があるしな」

「あはっ、ありがと~」


 あわわわわ……何てことですか。

 家出した妹さんサーチも含めて、俺は再びゆかりなさんの日常記録を再開している。


 それなのに、まさかあの時一緒にいた見知らぬオッサンとにこやかに会話をしている……だと!? パパとかって、まさか。


「そこの……キミ」


 いや、待て待て。パパというのはお父さんのことに決まっているじゃないか。現にお母さんのことをママと呼んでいるし、親父のこともパパと……俺だったら呼べないぞ。


「ちょっと、キミ」

「うるさいな! 誰だよ?」

「また会ったね、キミ。今度も探偵ごっこ? それも同じ子だよね?」


 ぎゃあ!? 

 トントントンとうるせーなって思ってたが、女性警察官! ピンチなのでは? しかも誰も通りがからない時間帯だ。ど、どうすればいいんだ。


「ち、違うんですよ! 俺、あそこの女子を見ていたんじゃなくて、りょ、料理人っぽい人を見ていたんですよ。でも俺は人見知りなので、声もかけられなくて……どうにかして、女子の隣のダンディな方に料理を教わりたいって思ってて」


 く、苦しいか? というか、あのオッサンが料理人かどうかすら分からない。単なる当てずっぽうだ。


「へぇーすごいね! 見ただけで料理人か分かるんだ? 人見知りかー。じゃあ、協力してあげるよ。あの女の子が離れてから、私があの人を呼んできてあげるから。キミはもう紛らわしい行動は控えてね?」

「え、あの……まっ!?」


 待てぇい! それ違う! 女子! ゆかりなさんを見ていたんですってば! オッサンじゃねええええ。


「は、初めまして。ボ、ボクはあなたを一目見て、料理をやられてる方だと見抜きました。もしそうでしたら、ボクに料理を教えてください」

「おぉ! すごいな。俺が料理人って見ただけで分かったのか! 気に入った! 君は明日から毎日来なさい。俺の弟子としてきっちりみっちりと伝授しよう。キミ、名前は?」

「葛城……です」

「よし、葛城くん。明日からよろしくな! いやー嬉しいね。そんなに熱視線を送っていたとは!」


 えええ!? マジすか!? マジの料理人? ってことは、ゆかりなさんは修行してたのか? じゃあ、鉢合わせしてしまうのでは? でもパパって言ってたぞ。


 もしや何かのアニメの影響で料理をする人はパパって呼ぶ決まりがあるとでもいうのか。俺もパパと呼ぶべきか!?


「よ、よろしくお願いします。パパ」

「なに? 今何て?」

「ナンデモナイデス」


 違う奴だ。うん、気のせいだった。ゆかりなさんと明日鉢合わせ。怖い、怖すぎる。こんな展開は怖いぞ。余計な事をしてくれちゃったな、女性警官。


 パパと呼んで許されるゆかりなさんと許されない俺。

 どうなるんだ。マジで料理人に目覚めるのか? それともパパのお許しが得られないのか!?


 × ×


「あ、あの、高……葛城くんは?」

「へっ? は、花城さん!? 高久なら帰ったよ。何か急ぎの用があるとかって」

「そ、そうですか。ありがとう」


 午後の授業を終えた後、すぐにカバンを手にして教室を真っ先に出ていた。昨日、あろうことか警官逃れの為の苦し紛れで言い訳を使い、それが見事に的中してしまった。結果、自動的に弟子入りを志望していたことになってしまった。


「おっ、早いね。それじゃあ、厨房に入って。みんなに紹介するから」


 はっ? やばいぞ、これは本当の奴だ。ど、どうすればいいんだ。この期に及んで実は嘘なんです。なんて笑顔で言ったら、火あぶりに……落ち着け、俺。


「あの、ボクの他にも料理を習いに来ている人っていますか?」

「ん? あぁ、習いには来てたけど、葛城君の様にプロ志望じゃないな。彼女は料理を上手くなりたいってだけで来てたんだ。それも今日で最終日だね。初顔合わせだけど、今日で入れ替わりって感じにはなるのか」


 プロ志望なんて一言も言ってないんですよ?


「そ、そうなんですね」


 なるほど。家出してどこに行ってたかと思えば、人が食べられる味覚を習いに来ていたのか。俺も記憶を失くさずに済むのか。


「お疲れ様でーす! 今日で最後ですけど、よろしくお願いしま――え?」

「えっ?」


 思わず固まった兄と妹。まさしく石化した状態になった。このタイミングはいいのか悪いのか。


「どうした、二人とも。あぁ、紹介しとくよ。と言っても、ゆかちゃんは今日で終わって、葛城君は今日からだけど……おーい、どした?」


 どうしたって、そりゃあ……言葉になりませんよ? だって、ゆかりなさんですよ? そして俺ですよ?


「あ、あのさ、パパ。この人、何? 何で?」

「ああ、だから、葛城君。料理人志望の有望な若者だ。高校辞めてプロになりたいらしいぞ」


 ええっ!? 俺、そんなこと言ってないぞ。脚色しすぎだろ! 辞めたくないし、辞めるつもりないぞ。


「ち、ちちち、違いますよ!」

「だ、ダメーーーー!」

「ん? なに、何だって?」

「パパ、ちょっとわたしの隣に立って」

「あ、あぁ。何だ?」

「葛城高久くん。隣のパパは、わたしのパパです。ママと別れる前の父親なの」

「ホワット!? パ、パパ!? ファーザー?」

「ん? まぁ、うん。葛城くん。隣のゆかちゃんこと、花城ゆかりなが俺の娘だ。別れた後でも」

「は、はい。パパ」

「あ?」

「い、いえ、気にしないで下さい」


 そういう意味のパパか。本物だ! これは参るが、パパと呼ぶのはあながち間違っていないんじゃないのか? 


「それで葛城君は、ゆかちゃんとはどういう関係?」


 ……雰囲気が変わった。ほんまもんのパパの顔だ。なんて言えば解決するんだ。いや、正直に言えばいいだけのことだ。


「パパ、高久くんはわたしのお婿さんなの!」

「はい!?」

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