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復讐者の心?

 夢の開始:私は邪道に落ちたチンピラのようだ。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

{一日目}


 目が覚めたら、俺は病院にいた。


 俺の隣には気が強いが、心の優しい女性ナースさんがいた。きっと彼女がずっと俺の看病をしているのだろうと、俺は彼女に好意を持った。


{五日目}


 ようやく退院をした俺は早速「仕事」をする。「人攫い」というとても簡単な仕事。「とても簡単」なので、下っ端の俺も誘拐組に入れられた。


 一緒に組に入った友達二人も同じ組、とても楽な仕事だろうと思った。


{五日目・夜}


 誘拐する相手について詳しく聞いていない。わざわざ俺にまで教える必要もないから。俺も聞くことはしなかった、誘拐相手が誰であろうと俺には関係ないと、そう思った。


 だが、一緒にその相手を生きたまま袋に入れる時、俺はその顔を見てしまった。


 俺に優しくしてくれたナースさんだ。


{六日目}


 組長から褒美として、俺の大好きな猫を使った「料理」を頂きました。とても嫌な気分になった。でも、断れない。友達と一緒に「外」で食べることにした。


 所詮は動物、人に殺されて、料理されるもの。美味しく頂こう・・・


 友達と話し込んだ。話の内容は全部覚えていないが、昨日の「人攫い」の事の「噂話」を聞いた。どうやら、あの気の強いナースさんが組長に失礼な態度を取ったらしくて、「罰を下す」だそうだ。


 その罰自体は何なのかまでは分からなかった。でも、仕方ないんだ。組長を怒らせたから、罰を受けても仕方がないんだ。


 そう思って、俺は我慢する事にした。彼女はとても可哀想な人だ。


 それ以外、「猫を使った料理」の話もした。聞き流ししながらも、料理法の一部が耳に入って忘れられない。


 それは、「猫を生きたまま袋に詰めて、高温のお湯を掛けて料理する」というものだ。


 生きたまま袋に詰められる所はナースの彼女の今の状況に似ている。


 いや、考えすぎだ。


 そう思ったら、「外」で何かの「料理ショー」が始まった。人一人が入れる袋が目に入った。


 その袋は昨日の袋と同じ、ナースの彼女を詰めた袋だ。


 嫌な気持になった。


 考えないようにしようとした。組長を怒らせたのが駄目だったんだ。彼女の方が悪いんだ。


 だから、諦めようと、忘れようと、「猫」と同じ「仕方のない」事なんだ。


{六日目・夢}


 突然に、コレが夢だと思った。ここは夢の世界で、俺はただ夢を見ていただけなんだと思った。


 だから、自分に優しくしてくれただけの相手に好意を持ったんだ。好意を持った相手が殺されようとしている時に、自分は納得しようとしたんだ。


 好きな猫が料理として出された事もおかしい。自分が「組」に入っている事もおかしいんだ。自分がド下っ端であるのもおかしいんだ。人を堂々と殺す社会がおかしいんだ。


 コレが夢なんだ。だから好きになった相手が殺されそうになっても何もしようとしないんだ。コレが夢だから、何も考えずに「人攫い」を平気でしたんだ。コレが夢だから、俺に「逆らう勇気」がないんだ。


 きっと、夢から覚めれば、俺は普通のサラリーマンで、「組」に入っていないだろう。真っ当に生きてて、上司に褒められる毎日を過ごしているのだろう。好きな彼女もきっと出来ていて、幸せな毎日だろう。


 でも、きっと夢から覚めた時、俺は少しの間ムヤムヤな気持ちになるのだろう。きっと、長く続くだろう。ただの夢なのに、何もしなかった自分が嫌いで、欝な気分でいるのだろう。


 ・・・・・・

 それは、嫌だな。何で夢なんかに欝な気分にされなきゃいけないんだ?


 俺は勇気を出して、組長に懇願する事にした。


 しかし、この時の俺はすっかり忘れていた。俺はまだ「中」に入れないんだ。


 門番みたいな奴らに邪魔されて、俺は「中」に入る事ができなかった。無理矢理に入る事も考えたが、その場合は俺が殺されるだろう。


 俺が死んだ所で、ナースの彼女の助けにはならない。俺は下っ端だから、死を持って彼女を救う事なんてできない。


 そうだ。命を懸けた所で何の意味もない。彼女を救いたいなら、命を懸けてはいけない。


 なので、俺は大声で組長に懇願した。「お願いだから、彼女を許して」と何とも懇願した。


 でも、組長は「高すぎる」ので、俺の声なんてきっと届いていない。「門番」も俺を笑っている。


 いよいよ彼女が「料理」されようとしていた。


 俺は「料理ショー」の邪魔に入った。止めようとして、何かの努力をした。


 何の努力したのかは覚えていないが、多分何かをした。「自分が殺される事にならない位の邪魔」をした。


 そして、大声で組長に懇願を続けた。「彼女を許してくれ」と何度もした。組長が俺の懇願を受け入れるまで続けるつもりだった。


 しかし、気づいたら彼女はもう熱湯を掛けられて死んでいた。何の悲鳴も聞こえなかったが、俺の目の前で熱湯を掛けられて死んだ。


 何秒の間に茫然と彼女が入ってる袋を見つめた。茫然と見つめる自分がいる事に気づいた。すぐに怒りに任せて「コック」の襟を掴んで睨みつけたが、それが八つ当たりである事にもすぐに気づけた。


 後の事はよく覚えていないが、いつの間にか俺は友達のところに帰っていた。


 これで、間違いなく、目覚めの悪い朝を迎えてしまうのだろうと、夢の中ですでに欝な気分になっていた。


 ・・・・・・

 俺は、それが許せないんだ。


 彼女を殺した組長が許せない。彼女の誘拐に疑問を持たずに協力した自分が許せない。


 彼女を助けようとしたのに、命を懸けれなかった自分が許せない。


 組長を殺す事に決めた。


{十何日目}


 夢はいつか覚める。夢を見ている俺自身はその時期を決められない。


 しかし、組長に手が届くまでの距離が長い。一回の夢で、とても組長の首を取るまでに長く続かない。


 次の時に見る夢はきっと別の夢になる。どんなに望んでも、「夢の続き」は見れないから。


 俺は友達と相談した。「彼女は俺の命の恩人」と誇張して、友達の協力を求めた。


 きっと、友達は俺の協力をしてくれるのだろう。しかし、夢を見ている俺自身ははっきり友達が協力してくれたかどうかは分からない。


 夢を見ている俺は友達の言葉すら「聞こえない」んだから。


 それでも、俺は努力した。組長を殺せるように画策した。


 夢が目覚めるのを怯えながらも、精密で確実に組長の首を取れる計画をした。


{何年後のとある日}


 組長を殺した。


 夢が覚める前に組長を殺したのは奇跡だが、彼女の復讐が夢から目覚める前に出来て本当に良かった。


 どうやって組長を殺したのかは覚えていない。組長を殺した瞬間に、記憶がごっそりと抜かれたような気分だ。


 まるで省略されたかのようだ。流石夢、ご都合主義。


 彼女が殺された日の記憶がまるで昨日のようだ。昨日は・・・そう。もしかして、袋の中にいるのは彼女ではなく、別の人だったのかもしれないと、そう思った自分がいた。実際、彼女が焼かれて死んだ時、俺は何も聞こえなかったんだ。


 何も、周りの声も、何一つ聞こえなかったんだ。


 夢だからな。何年も経っている事は分かっているし、精密な計画を立てた事もよく覚えている。しかし、あんなに苦労して立てた計画は忘れたし、何年も経っているのに全く記憶に残っていなかった。


 流石夢、ご都合主義。


 なら、組長を殺した今ーー彼女の復讐ができた今、俺は「目覚める」べきなんじゃないのか。


 そうだ。きっと夢はここで終わりだ。


 協力してくれた友達、誰も俺の傍にいない。どこにいたのだろう?


 これは夢だから、ここで目覚めるのだから。友達は「死んだ」んじゃない、先に夢から覚めただけなんだ。


 でも、まだ一つ許せない事がある。


 彼女が組長に殺された時の「歳」、組長が俺に殺された時の「歳」、この二つの「歳」を考えると、俺はまだ許せない気持ちでいる。


 夢から覚めたら、きっと俺も「地獄」に行っているのだろう。組長もきっと先に地獄に行っている。


 組長を追って、まだ「地獄」で何年も生きていない子供である内に組長を殺さなきゃ、若くして死んだ彼女にとって不公平だ。


 俺は、夢から覚める。そして、地獄に落ちても、彼女の復讐の為に、組長を見つけて、殺す!

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 夢が終わった。

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