表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

極道の妻?

 夢の開始:私は一人の未亡人です。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 彼が死んで何日後、お義父(とう)さんとお義母(かあ)さんが私達の家に来ました。

 彼の残した遺物の配分に来たのでしょう。彼との間に子を残さなかった私に、多くはもらえないのでしょうね。「お金なんて欲しくはありません」と言うのは簡単ですが、私にも生活がある。彼がいなくなった後の日々を過ごすには、ある程度のお金も必要です。

 そんな事を考える自分に嫌気がさした。彼はもういないのに、どうして私はまだ生きようとするのです?

 せめて、思い出の品は独り占めにしたい。


 義父「お前にもお前の生活がある。それを分かっている。だから、どの物がどっちにとって最も大事なのか、それを決めるに来たんだ」

 私「はい・・・」

 義父「それを、一気に全部ここに置いて、俺達に選べって言うつもり?」

 私「・・・・・・」

 義父「これとか、俺は見たことがないぞ。そんなものを見せても、俺にどうしろと?」

 私「・・・・・・」


 お義父(とう)さんは私から彼を全部奪うつもりでしょう。私はお義父(とう)さんに逆らえません。彼が生きていた頃も、いなくなった今も・・・

 お義母(かあ)さんは何も喋らない。ずっと、私を厳しい目で見つめている。私を「息子の仇」のように思っているのでしょう。

 嫌だな・・・いつになったら終わるのでしょう?


 義父「見知ってるものもあるけど、これら全部、お前らの思い出だろう?違うか?」

 私「そうです。私達の・・・物、です」


 ささやかな抵抗をしました。「私と彼の物だ」と、お義父(とう)さんに言いました。


 義父「そんな大事な物なら、トンとここに置くな。これとか、汚れちゃったじゃん」

 私「・・・・・・」


 お義父(とう)さんには何の効き目もありません。知っていましたけど・・・


 義父「お前はまだ若いんだし、まだ他に、いい人と出会う。こんな一杯『思い出』を残したら、困るだろう?」

 私「・・・・・・」


 やはり、私に何も残さないつもりですね。私と彼との大切な記憶すら、全部奪っていくのですね。

 嫌い・・・嫌い、嫌い、嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い・・・

 どうしてお義父(とう)さんではなく、彼が先に逝ってしまったのですか?


 義父「だから、これらを全部燃やす」

 私「え?」


 貰っていくのではなく・・・


 私「・・・燃やす、んですか?」

 義父「そうだ。残してしまっては、お前はいつまで経ってもあいつに引き攣られたまま、前に進まんだろう。お前はまだ若い、あいつとの子供もいない事だし、別に幸せを見つけるべきだ」

 私「ひっ・・・」


 死んだ息子よりも、私の事を気にして・・・


 私「っ・・・」


 慌てて口を塞いだ。

 どうして、今になって涙が溢れ出たのでしょう?

 ずっと我慢して、我慢して・・・彼が逝った事を聞かされた時でも、ちゃんと堪えたのに・・・

 お義父(とう)さんの事は良く知りません。全部彼から聞かされて、そして勝手に「身勝手な人」だと思い込んでいました。でも、お義父(とう)さんはちゃんと私の事も考えてくれて、私を・・・彼の妻だと、自分の娘だと思ってくれていました。

 ごめんなさい、お義父(とう)さん。私は・・・


 私「ぅ?」


 お義母(かあ)さんはずっとお義父(とう)さんを見ています。お義父(とう)さんの言葉にお義母(かあ)さんもひどく驚かされてました。二人は相談をしていなかったのですか?

 お義母(かあ)さんの手が不自然に腰の方に添えて行き・・・まさか!?


 私「ダメ!」


 私はすぐにお義母(かあ)さんの手を押さえました。


 義母「っ!放せ!小娘か!」

 私「落ち着いてください、お義母(かあ)さん!」


 お義母(かあ)さんはナイフを隠し持っていました。それはいつもの事なので、別に驚きはしませんが、お義母(かあ)さんはそのナイフを使って、お義父(とう)さんを切るつもりでした!

 やはり、お義母(かあ)さんは私と同じ、まだ彼の死を引き摺っているのですね。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 急に、夢が終わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ