黄泉送り?
夢の開始:俺の父が亡くなっていて、俺は亡くなった父と旅をした。俺は何故かお父さんがもう死んでいることがわかっている。お父さんはそれを知らない。そして、この旅の最後、俺はお父さんと永遠の別れとなり、俺はそれを知っている。
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お父さんはいつものように俺に笑いながら話していた。
自分の死をまったく知らないでいた。
自分の仕事場に付き、そこにいる作業員を手伝おうとした。自分はすでに現場監督すら越えているにも関らず、現場を見るとよく部下の手伝いする人だった。
しかし、お父さんはどんなに力を入れても、機械は動いてくれない。俺は仕方なく、一緒に操作した。
いや、代わりに操作した。
お父さんはとても楽しそうに俺を見て笑った。俺も恥ずかしくなって目を逸らした。周りの作業員も何が言ってきたが、怒っているのか感謝しているのかすら気にならなかった。
不意に思い出した。
俺はまだ高校生だ。
父と母とおばあちゃんの四人で生活していた。
父も母も兄弟がいた、どの兄弟も両親の稼ぎほどを稼いでいない。
俺 「父さん。」
父さん 「うん?」
俺 「もし、例え話なんだけど。もし今、父さんが死んだら、家は今のままで大丈夫?」
父さん 「どうしてそんな事を聞く?」
俺 「いやだから。ただの例え話だって。」
父さん 「そうだな。お母さんだけの収入で家を保つのは難しいでしょう。」
俺 「なら、俺も仕事に入った方がいい?」
父さん 「いや、まだ大丈夫。俺一人減るので、この家だけなら何とかなる。」
――他の兄弟を気にしなければ――
俺 「なら、お母さんに他の兄弟との縁を切ってもらって、後おばあちゃんとだけどっかで秘かに暮せばいい。」
父さん 「そうね。その方がいい。」
俺 「ま、ただの例え話だけどね。」
今の会話で心が壊れそうだった。お父さんとお父さんがいなくなった後のことを相談するなんて、刃物に切り刻んだ感じがした。
何度も泣きたくなったが、それを耐えて、あくまでも普通の会話のように喋っていた。
両親の稼ぎはそれなりに潤沢だった。父の両親とも母の両親とも一緒に暮した事がある。今はもう母の母しかいないが、みんな幸せの最後を過ごしていたと思う。
その為、両親の兄弟達がお金を借りに来る可能性がある。その事はまったく両親から聞かされていないが、今はそれを知らなければいけないと思った。
俺は一人っ子で男だから、残されたお母さんとおばあちゃんの世話をしなければいけないと思った。それこそ高校中退しても、するべきことだと思った。
そしてお父さんの言葉に少し安心した。両親の他の兄弟との関りさえなければ、高校生で居られる。
従姉のことが好きだった、従弟と遊ぶのも好きだった、大きいほうの従妹とたまに口喧嘩をするがなんだかんだで仲がよかった、小さいほうの従妹に慕われていていいお兄ちゃんになれたと思った。
それらと全部関係を切るのは辛いと思うが、仕方がない。
少しずつ終点に近づいてきた。
そう思うたびに胸が痛くなる、涙が出そうになる。
お父さんを引き止めたいが、何故か引き止めない自分がいた。
そして終点前に、宴会が開かれた。
お父さんは楽しそうに宴会に参加した。
お酒に乗じて、何がを話し出したが、わからなかった。だが、その話がいきなり他の人に邪魔されて、その人の話が始まったのがとても許せなかった。
俺 「お父さんが話しているから、邪魔しないで!」
自分でも驚いた。
いつもなら我慢して、何も言わずにいたが、今回はどうしても耐えられなかった。
俺の言葉にびっくりして邪魔した人は黙り込んだが、すぐさまお父さんのフォローが入ったらしくて、お父さんの話に戻った。
いきなり隣の女子に話しかけられた。結構可愛いような気がしたが、よく覚えていない。
話も、何か「霊能試験」何とかに合格したのかどうかだったから、きっと普段の俺が妄想しすぎて夢の中に入れた何かの作り話だと思ったので、寝耳で聞いた。
ついに、お父さんがいなくなる時がきた。
お父さんがとある場所に座った、俺はその後ろに座った。
俺はお父さんの一番近くにいるが、それでもお父さんとの間に空洞があった。
他の人は俺達とかなりの距離が出来た。今なら何を言っても、彼らは聞こえないだろう。
だが結局、俺は何が言いたいのに、何も言えなくて、声を殺して泣いていた。
これが最後だ。
そう解っていても、俺はお父さんにかける言葉を見つからなかった。
お父さんも何も言わずに、ただ背中を向けているだけ。
何かを言いたい、けど何も言えない。
声を殺しているが、素直に泣けた事がよかったと思う。
でも、それじゃ足りない。もっと、何かをしたい。
そして、お父さんが消える最後の瞬間に思った。
せめで別れを告げる。
俺 「お父さんさよなら!」
かなり早口で言った、かっこ悪いと思った。それでもお父さんは俺が言い終わる前に消えて、最後まで聞こえかどうかもわからなかった。
せめて最後まで聞いて欲しかった。
俺はついに泣き崩した。自分が腰を屈めている事がわかる。
そして、俺は泣いて、泣いて、泣き続けた。
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夢が終わった。起きても、私は夢の出来ことに引きつかれていて、泣き続けた。
驚いたことに、私は全力で泣いているけれど、声はまったく出さなかった。きっと、隣に誰かいたら、私の泣き声に気づくでしょうが...
今は一人暮らしなので、声を押し殺す事はしなくていいと思うのに、それでも声を出せなかった。
けど、泣く事は止まらなかった。
最早さっきの事はただの夢だとわかっているのに、私は泣き止められなかった。
なんとも深呼吸して、心を落ち着かせたが、その度に悲しい気持ちに押されて、再び泣き出した。
そしてようやく落ち着いた頃に、夢の事を少しでも思い出したら、すぐ泣きたくなるので、暫く深呼吸を繰り返していた。
お父さんのことが気になる。けど今はまだ深夜、電話をしたら、両親の迷惑になる。
なら、後で電話をするか。
いや、私は今一人暮らしなので、無駄な心配を掛けたくない。
そう思って、私は明日になったら、いつも通りな自分で居る事にした。
私の事をわかって、基本電話してこないお父さんのことが気になるが、自分から電話はしない。
お母さんが電話をしてきても、いつものように「しつこいな」・「うるさいな」と言って、無愛想な子供で居る事に決めた。
今日はもう寝よう。
明日もいつもの一日をはじめよう。
そして、例え明日にいきなりお父さんの訃報が来ても、独りになるまで冷静で対処しよう。泣くのは、一人でいる時のみでいい。