自分の脚
古藤 瑠美14歳。
彼女は自分の命と同じく大切であった脚を失った。
小学生から続けてきた陸上。
今まで数々の大会の記録を更新してきたことは彼女にとって誇りであり周囲からは期待されていた。
彼女自身これからも陸上の世界でもっともっと成長して行きたいと願っていた。努力していた。
あの病気と出会うまでは...。
「骨肉腫...?」
母は医師に少し疑問を交えながら医師の言葉を繰り返した。
少し前に右脚に違和感を感じ近くの病院に行ったのだが、「もっと大きい病院に行った方がいいかもしれない。」と言われ家から車で30分。母の運転で市民病院まで来たのだが、到着と同時に全身のMRI検査を受けた。その後呼び出されて診察室に入り今に至る。
医師は、「お子さんは骨肉腫という病気でしかもかなり進行しております。」
それに対する母の「骨肉腫...?」という言葉。
そしてそれから先の言葉で母も私も言葉を失った。
「骨肉腫という病気は骨に腫瘍ができており、このままだと肺などの生命に関わる器官に転移し死に至ることもあるのです。正直言います。この状態だと転移するのも時間の問題でしょう。一刻も早く右脚を切断することをおすすめします。」
え...え...?
脚を...切断...?
私にはまだ走らなくちゃならないの...!
秋に行われる新人総体、冬に行われる強化合宿、来年の夏の中学の部活引退のラストラン!
ダメ...ダメ...!
陸上をする私にとってはそれほど嫌だった。
脚を失いたくない。でもこのままじゃ死んじゃうかもしれない。
どうしたらいいの...!
私はとなりに座る母の方にゆっくりと首を向けた。
母は俯き手で顔を隠しながら「ひっくひっく」と声を出している。その顔を隠す手の隙間からはポタリポタリと滴る雫。泣いている...。
脚と命。陸上を捨てるか、全てを捨てるか。
「先生、私生きたい。脚を切ってください。走れなくたって、代わりになるものを探します。」
母は手を落ろし真っ赤にして涙が止まらない顔を私に向けた。
医師も大きく頷き「わかりました。」と私の目を真っ直ぐに見てくれた。
私はこれからも生きたい。まだまだやることがあるんだ。
診断から二週間後脚を切断する手術が行われて無事に終了。
一ヶ月の入院の後退院できて、私は再び中学校に戻ってきた。初めのうちは車椅子や松葉杖で行動していたが、手術の半年後からは義足を付けることになった。
初めのうちは慣れずに歩くのが難しかったが次第に慣れて中3のラストランするはずだった大会には自分の足で立ち歩き、仲間をサポートすることができた。
走ることは出来なくなってしまっても私は再び2本の足で立つことができた。嬉しかった。生きてる感じがした。
...と思っていたのに。




