-第23話-【その終わりに】
辺りは静寂だ。コツコツという靴の音だけが、響く。
「隊長、どこに向かってるんですか?」
「まあ、行ってからのお楽しみだ。てかよー、お前敬語やめてくれよ。俺同年齢だからー。」
そうだな…。たしかに同年齢だな。なんか大人びてたんだよな、この人は。
「分かりました。あ、いや、分かったよ。」
なんか歯痒い気もするが、まあいい。
「よーし!それで良い!」
俺は幼稚園児か…。その後、橘が呟いた。
「ここが目的地。」
「え、ここって…。」
そこは、【危険物取扱室】と書かれていた。部屋の前の扉には『このより先危険!立入禁止!KEEP OUT!』と、露骨に書かれていた。その扉を平然と開ける橘に驚きつつ、部屋に入る。部屋に入ると自動で電気がつき、パソコンやらなんやらがつき始めた。部屋の広さは約20畳。意外と広いんだな。
「たいちょ…、いや、橘。ここに何の用で?」
「ここが、さっき言った爆弾の起動室だ。」
隊長は、ごくごく平然と、そして、淡々と言い放った。
「なあ、お前に渡したあのスイッチ……。あれを、俺がいいって言ったら、押してくれないか?」
「何でですか?」
なんとなく予想はついていたが、信じたくなかった。
「橘、あんた死ぬ気じゃないよな?」
何故だか、答えは淡々としていた。
「いかにも、その通りだが?」
こんなにも、自分の死をスラリと言える人を、俺は初めて見たかもしれない。




